第八話
慧音さんに会わずに済んだと思ったら妹紅さんが来た。あまりにもタイミングが悪すぎる。
「おーい、今日はあんたも来るの?」
止める暇なく霊夢が近寄り声をかける。
「いや、今日は慧音と稗田家に資料を見させてもらいに行くだけだ。宴会はもう少し桜が咲いてからだな。まだ咲き出したところだろう」
「まあそうね。満開になるまで後数日はかかると思うわ」
「そうか、じゃあそろそろ慧音の授業が終わるころだから私はこれで」
「宴会の時はタケノコか何か持ってきなさいよ。じゃあまた」
幸い私たちには気付かずに行ってくれた。助かった。
「立地条件が悪いわね。これ妖怪がいなくても参拝客があまり来ないんじゃない?」
「そうらしかったみたいよ。私の前の巫女が管理しているころを知っている知り合いの言っている事でこの目で確かめたわけじゃないけど」
博例神社は里から離れた小山の上にあった。こんな場所では神社自体に用が無い限り人間は来ないだろう。
「そういえばここの神社ってどういう神様を祭っているの?」
「それがかなり昔から分からなくなっているのよ。一応妖怪退治がご利益という事になってはいるんだけどね。だから参拝客をいろんな神様を招いたりしているわ。例えばあそこの梅、かつての巫女が天神様を祭ろうとしたときの名残よ。最も幻想郷の住人に受験なんてないからすぐ廃れたみたいだけど」
天神様かあ。そういえば私も高校大学の受験前に合格祈願したっけ。
「で、結局参拝客を集めるには縁日の屋台の明かりが一番って結論になったわけよ」
「神社もよっぽどご利益がいいか、観光資源になるか、イベントでも開かないとダメなのね」
ここでふと疑問に思う。霊夢はどうやって生計を立てているのだろう?神社の主な収入はお賽銭やお守りやお御籤の販売などだ。ゆえによっぽど有名で無い限り近隣住人に寄付も募ってそれでも建物の補修費用を集めるので精一杯、アルバイト代などとてもと言う事が多かったらしい。そして博麗神社はそれよりもひどい。そうなると妖怪退治がよっぽど儲かるのだろうか?
「でも縁日なんてあまり頻繁に開けないでしょ。生活大丈夫なの?」
「大丈夫よ。生活に必要な食料とかはいつの間にか出現するから。あっ説明し忘れていたわね。何でここから外の世界に帰すか。それはこの神社が幻想郷と外の世界を分ける境界に位置しているからよ。だからここは幻想郷から出入りは自由だし、外に一番近い。例えば……」
「霊夢さん。またお酒がお供えしてましたよ」
さっきの妖精の一人が酒瓶を抱えてくる。
「こんな風に外の世界から物が現れたり逆に消えたりするの。あっそれも宴会用だから飲まないで置いときなさいよ。つまりここからなら安全かつ簡単に外の世界に帰れるのよ。まあ、ちゃんと払うものを払ってくれるならね」
「……言っておくけどお金は持っていないわよ」
「別に今は要らないわ。欲しいのは宴会の準備の手伝いよ。料理と掃除と荷物を倉庫に運んでおくのをお願い」
「料理はちょっと自信ないから掃除と荷物運びをやるわ。」
「じゃあ一旦お酒と肴を全部運んでおいて。そのあと掃除をお願い」
神社の倉庫はそれなりに立派だった。早速扉を開けようとすると中から声が聞こえた。
「今日は…会だ…らて…ぷらよ…の油は必…よね」
「タラの芽…かの山菜…置い…おき…しょう。あと…おやしょ…ゆと言った調…料がき…か…なので…充ですね」
泥棒ではないようだ。なので遠慮なく開ける。
「「!?」」
そこにいたのは二人の中華風の服装をした女性(片方は数本尻尾を生やした)だった。