表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
truth〜始〜  作者: 樋山 蓮
8/13

Ⅷ.独裁者の執念

あれから数日…宗太郎が車を運転してくれて、学校に通うことが普通になってきた日のことだった。


「1限、今日は違うのよね」

「学科が違うと少しだけ違いますからね」

「じゃ、また2限でね。ランチ何にしよーかなー」

「経済学部の棟にある食堂、美味しいらしいです。」

「じゃあそこにしようかな!」

「では、また2限の行政司法学で。」



同じ学部だけど、政治学科と法律学科とでは少し単位が変わってくる。

1年はほとんど同じ科目なんだけどね。



「凜さん、おはようございます」

「あ、西宮くんおはよー。」


法律学科の西宮くんは、同じ天体観測サークル。

教室のある階の階段の踊り場で待っていた。


「あの、教室の近くにうちの学科じゃない人が立っててみんな怖がってるんですよ…」

「え…どんな人?」

「結構背が高くて、顔も整っていて…」

「まさか…」

「多分、凜さんのお付き合いされてた方かと…」



踊り場から覗くと、怜だとすぐに分かった。



「西宮くん、このまま平然を装ってて。もし、わたしになにかあったらすぐに宗太郎に連絡して。お願い。」

「わ、わかりました。」



わたしが先に教室の方に向かった。携帯電話を見ながら、気づかないふりをして。


「凜。」

真剣な顔をした怜がわたしの前に立って、わたしを見つめた。

「怜、どうしたの?学校は?」

「凜に話したいことがあって。」

「話?すぐ終わる?もう授業始まるんだけど。」

「冷たいなー、凜ちゃん。」

「お昼まで待ってて。」

「昼まで?待てないよ。だって、凜とまた色んなことしたいんだもん。」

そう言って、わたしの腰に触れてきた。

「…やめて。」

「凜ちゃん、そんなこと言っていいのかな?」

「…わかった、ちょっと場所を変えようよ」

そういって、わたしは屋上のテラスに怜を連れ出した。


「凜、俺はお前がまだ好きなんだ。」

「怜、パパの事務所に圧力をかけてるのは知ってるわ。」

「よりを戻そう。幸せにしてあげるからさ。」

「怜、あなたは何が欲しいの?」

「凜。お前だけだよ。」

「あなたが欲しいのは、わたしの父親の名前。違う?」

「凜の容姿だよ。」

「何を言って…」

「将来は凜が僕の子供を産むだろ?可愛い男の子と女の子…僕は君とずっと一緒に居たいんだ」

「残念だけど、わたしには許婚がいるの。」

「そんな嘘ついたって、俺は騙されないよ」

そう言った怜は乱暴にわたしの体をテラスのテーブルに突き倒した。

「ほら、体は素直じゃないか。」

「や、やめて!」

「凜、僕と結婚しよう。子どももたくさん作ろうね。」

「や、やめて!」

乱暴にわたしの唇に唇を押し付けてくる。

「いや!やめて!」

「一緒になったのは一度や二度じゃないだろ?たくさん愛し合ったじゃないか。」

「あなたのこと一度も好きだなんて思ったことも無いわ!」

わたしが抵抗する腕を、怜は強い力で押さえつけた。

「凜…素直じゃないね、いい子になりなさい!」

わたしの顔をめがけて手を上げた瞬間だった


「やめろ!」

怜の後ろから声が聞こえた。


「宗太郎…!」

「はは、お前か。下っ端の分際で何様だ、お前は!」

「怜さん、あなたは今さっき犯罪者となりました。」

「警察でもないくせに大きな口叩くな!」

「残念ですが。警察の方も来てます。」


宗太郎の後ろには警察が来ていた。

「貴様…!」

「凜さんを苦しめるのはもうやめなさい。あなたが彼女に真正面から向き合ってこなかった罰を受け入れなさい。」


宗太郎がそう言うと、警察官が怜を取り押さえた。

「午前9時5分、暴行及び強制わいせつの現行犯で逮捕する」


「凜…ずっと、お前のこと愛してるからな。」

「………。」


「署まで来てもらう。さっさと歩け。」

怜は警察官に連れられに連れられて行った。




「凜さん…。」

「宗太郎…ごめん。」

「大丈夫…じゃないですよね…」

「宗太郎…怖かった…もう…殺されるのかと思った…」


気持ちの整理が追いついていかないわたしは、無意識に泣いていた。

そんなわたしを宗太郎は力強く抱きしめた。


「無事で…よかったです。」

「宗太郎…」

「これからは、僕が絶対に凜さんを守ります。」


昔のいじめられて泣いていた宗太郎とは全く違う。

わたしが今まで感じていなかった大人の宗太郎がわたしを抱きしめていた。




宗太郎がわたしの手を取り、腕をさすった。

「もう、こんな思いはさせません。僕と、付き合ってください。」

「宗太郎…」

「僕はまだまだ未熟かもしれない。でも、凜さん…あなたを守るために生きていきたいです。」


真剣な目をした宗太郎。


「…うん。」

「ほ、本当ですか?」

「うん。宗太郎のこと、信じてるから。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ