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青春日記  作者: あある
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プロローグ

私が言うのも何だが、私の兄は結構ハイスペックだと思う。

空気を読めるので、人に合わせて会話をするのが得意の為、クラスの中心グループのさらに中柱である。そんなところが人間的に凄いというか、まるで「友達100人出来るかな」という、あの無謀過ぎるフレーズさえ実現しているようだった。まぁ、つまり友達が多い。

そんなチート並のコミュニケーション能力、それはその話す時だけでなく、見た目からも滲み出ている。

整った顔立ちに平均的な丁度良い身長、食べても太らない細見な体には、それなりに筋肉がついているので引き締まっている。そして、黒髪に赤いピアス、着崩した制服。

え、どこがから滲み出ているのかって?。それは、この女子高生の母性本能を擽る可愛い顔を活かし、真面目な子の好感度も高める為に髪は消さないまま、世間からは「リア充」と呼ばれるケバい女子の好感度も上げる為に、ピアスや制服の着崩しでチャラさを滲み出しているからだ。この見た目の上に、このコミュニケーション力に、男女問わず兄はモテる。

ちなみに、いつもはクラスの中心グループに居るが、真面目な子の手伝いや話しかけ、オタクな子とはゲームの話など、全ての人種に気軽に接しているそうだ。

そんな見た目から中身まで、完璧に普通を演じるきる、ある意味「天才」な私の兄。

しかも、最近は右肩に良く分からない模様の刺青まで入れたようで、今度はどんな奴とつるんでいるのかと、少し心配もする。

どうして、兄の右肩に刺青があったことを知ってるかというと、兄がお風呂上りは大体上半身裸だからだ。

そして、私が服着ろというと、「じゃあ着せて」という反応が返ってきたので、「メイド服でも着せてやろうか?」と嫌味を言ってやった。

その結果、私達は言い争いになり、その姿を母親に見つかり、結局私が兄の服を着せるというか、兄の世話係になったしまった。なんか私だけ損してる。

そう思いながら、私はさっきの冗談の際、脳内に浮かんだ兄のメイド姿が自分より可愛いので「ッチ」と舌打ちした。

私は青春真っ盛り中の乙女として、兄に負けるとか少し世間体的に不味いのだが、私と兄は同じ母親似なので、たぶん私も可愛いはず…可愛いよね!?。

そんな可愛い兄は、兄ではなく、まるで大きな弟が出来たような感じだ。そして犬っぽい。ああ、別に私が老けてるというわけではないよ、私も同じ母親から生まれたんだから、それなりに似てるというか、超絶似ています。

でも、こんな地味な私とアイドルのような兄では、性格の違いでかなり喧嘩はするが、ま、喧嘩するほど仲がいいというか、私は兄の友好関係が心配になり、刺青のことを聞いた。

すると、「なぁに?、俺の体に興味あんの?」とニヤニヤしながら言われた。私はぐっと拳を握りしめ、我慢していたが、「キャー、エッチ」という兄の言葉に、握りしめていた拳を女子のように綺麗な兄の頬へとぶっ放した。その時に触れた兄の肌は、まるで女子の肌のようにツルツルだったことに、私の怒りはさらに急上昇する。

私は化粧水とか色んな物を使って、この肌を保っているというのに、何もせずにツルツルの肌しやがって、この野郎っ。しかも、起きた時に私はボサボサなのに、こいつはサラッサラなんですよ!。

そう思って、私は「死ねっ!」と啖呵を切った。すると、またいつもの言い争いが始まり、母親のパンチを食らうまで終わらなかった。

たぶん、チートの兄のことだから、私はまんまと話を交わされてしまったのだ。

まぁ、こんな喧嘩とか良くしてるけど、決して私は嫌いなわけじゃない。所謂…「嫌いじゃない」ということだ。

私が何気に好評化してる兄が、悪い女に捕まっていると考えると、なぜかイラっとする。ま、兄貴に限って、そんな間違いは起こさないだろうけど。

だから、「今度は聞かなくちゃ」と毎日思っては、今のような会話を繰り返す。やはり兄には敵わない。

こんなある意味天才な兄、「日向旭」。名前まで女っぽい。

この日向旭の妹である私「日向棗」。兄が女っぽいのに、私は男っぽい、本当名前つけ間違えたんじゃないの。

そんなおかしな兄妹のブログ。日々積み重ねてきたそのただの日記を読み上げよう。



その日記は結構昔から始まった。

私の母親も父親も仕事人間だった為、私は家に兄と二人で居ることが多かった。だけれど、昔の私達は全然会話を交わしていなかった。今では、喧嘩するものの仲良くはやっているが、昔はまともに会話を交わした覚えがない。

話せば「ああ」や「そう」と素っ気ない一言だけ。

じゃあ、どうやって一日を過ごしていたかというと、兄は携帯、私は読書に明け暮れたいたのだ。

まぁ、どうみてもニートみたいな趣味だが、これには訳がある。なぜかというと、私の母親も父親も、パソコンを毎日扱うような仕事だったので、その仕事を見てる内に、私達は小学一年生の頃には携帯とパソコンを一台ずつ買って貰った。

そのせいで、私は今、外ではコンタクトだが、家では完璧黒縁眼鏡状態。でも、同じような趣味をしてた兄は、未だに両目2,0あるのだ。アフリカ人かよ。

でもまぁ、そう考えると兄と私の違うところというか、兄と日向家の違うところはたくさんある。

だからか、1年に数回だけ、家族全員が集まる時があるのだが、その時の兄は若干浮いてる。私と母親の中身は似ていて、冷めてるし、父親はめんどくさがりやで、あの兄が話しだすと顔面を掴む。

なので、兄は読書してる私に抱き着き、母親は珍しく家事をし、父親はソファで寝ると、家族らしいことは全くしない。

ま、私は一人で何かをしてるほうがいいので、こうゆう家族が好きだ。でも、こんな日じゃなくても、兄は私に「構って構って」と言ってるので、はっきりいってウザいし、なんか、やっぱり私だけ損してる。

こんな冷めてる家族の中に、なぜこんな兄が生まれたのだろうがと、誰しも思う疑問。だって、私も思うもん。

だけど、兄がこんなに明るくなったのは、昔起こった、あの事件からではないだろうか。

元々、外では小学1年生の頃から、あのチート能力を生かしてクラスの中心に居たが、家では静かだったのだ。でも、あの事件以来、家でもうるさくなるようになった。

でもまぁ、その事件のおかげで、私達兄妹は仲良くなったのだから、感謝はしてる。

仲良くなったというか、その後すぐは私は完璧お兄ちゃんっ子になった。つまり「ブラコン」だ。ブラコンとシスコンが集まった、ラブラブ兄妹。今思い出すと気持ち悪くて、寒気さえする。

だが、その後の兄の一言に、私は急に冷めた性格に戻ってしまった。それが今の状況である。ま、今の関係に不満はないけどね。

とにかく、そんな私達兄弟にとっての2つの大時代。それはシリアスだったり、どうでもいい話もあるので、今は飛ばそう。

そして、今は午後21時だということから、私は手軽な話し内容のページを開き、ずらりと並ぶ字を目で追う。

良く見ると、小学2年生辺りからそれなりにパソコンが上達し、そこから始めたこの日記。小学2年生の時に書いた第一回目の日記を見ると、私も随分文才になったものだ。

ちなみに、日記の内容は大体兄の話。別に友達が居ないわけじゃないの、うん、トモダチチョーイルヨ。

ま、家族とも話さないのも理由の1つだ。唯一母親とはパソコンの話や、毎日の過ごし方、兄の報告はしているのだが、それは会話というか、常務報告みたいなものなので、母親と話していると、まるで先生に怒られているような気分になる。別に怒られてないのだが、母親は口調がきついのだ。私と同じくらい。

後、家で寝てる以外してない父親とも話さない。というか、私は兄みたいな無謀なことはしない主義だし、まぁ兄みたいに顔面掴まれることはないだろうが、疲れてるんだから、私も娘として休ませてやりたい。

そういった意味で私は四分の一が学校のこと、四分の一が家事のこと、四分の二が兄の世話ということから、私は一日の半分を兄の世話をしている。

という理由で、私は兄のことをブログ日記へと刻む。

最初は兄への苛立ちなど、愚痴が多かったのだが、段々と私も心と体を成長して立派な女というか、もう母親のように成長した。あ、別に老けてるわけじゃない。

そんな私の日記は、以外と人気が高く、結構多くの人が見てくれている。

その人気数値を見て、少しにやりと微笑みながら、私は何となく選んで開かれたページの最初の文字を読み、

「ああ、これか…」

と女だというのに、ベットと机の上にパソコン、本棚にはずらりと本を並べられた殺風景な部屋の中、一人で呟いた。

これは、私達兄妹の物語である。



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