たくさん星降る夜に君と恋人になりたい
レジャーシートを敷いて、その上に仰向けに寝そべる。アスファルトから伝わる温もりを感じた。
太陽なんて出ていないのにね。どんだけ暑かったんだよ、今日。お月様に問いかける。
多分周りの観衆は子供連れ、友達と、カップルで。ざわざわとした話し声が聞こえるが、内容までは聞こえてこない。
聞き耳を立てることもない。どうでもいいから。
そもそもあたりは真っ暗でほぼ何も見えない。スマホの画面だって、光らせるには緊張感がある。
せっかく誘えたんだ。もっと顔が見えたら最高だったのになぁ。これは素直な感想。
写真だって一緒に撮りたかったけど、一人で試し撮りして、確認して、諦めた。
何も映ってない。いや、何も写せない。
確かに彼女の後ろ姿を収めたはずなのに、カメラロールには真っ黒な写真が一枚。
何が、1200万画素だよ。一番働いてほしい瞬間に1画素じゃ意味がない。
「見えた!?右上の方!!!」
今、流れたらしい。星が。
君が楽しそうに声をかけてくれた。
一時間前まで見つけられるかな?って不安そうにしてた君が嘘みたい。
バスを降りた時、こんなに綺麗に見えるんだ、、って呆気に取られてた表情が一瞬で焼き付いた。
普段、笑顔の君が目を見開いて驚いてた。
空を見上げるために、街灯は深夜になると点灯禁止らしい。お前達も仕事をサボるのか、羨ましいな。文明の利器なんてやっぱり役立たず。
車だってハイビーム禁止らしい。車持ってないけど。免許持ってないけど。そもそも免許取れる歳じゃないけど。高校1回目の夏だし。
夜空を観察するには月明かりが邪魔だ。眩しいから。星が流れる瞬間だけ、雲に隠れて欲しい。望みをかけて月明かり頼りで彼女の背中を一枚撮ったけど、やっぱり黒色1画素。やっぱ無理だった。惜しいなぁ。
雲が流れてくると、彼女は寝そべる。
観察には適してないらしい。
それなら、ずっと夜空を隠してくれてていい。
雲がどこかに行くと、起き上がって、体操座りで必死に探し出す。
そんなに見上げてたら首、痛いでしょって笑えてきたのを押し殺す。
わぁぁぁ!と周囲から歓声が上がる。
星がまた一つ流れたらしい。
星も仕事は不定休、不規則。ズルい。
「集中して探してよ!?」
彼女がこちらに振り返る。カメラなんかより、自分の目の方が性能がいい。この距離なら彼女の顔もギリギリ見える。とても楽しそう。
君と夜更かし。もしかして、夜更かしですらないかも。夜明けまで寝ないから。こんな硬い床で寝るなんてごめんだ。1秒でも意識を保て、自分。
いや、彼女の横で眠れるなら安眠できそうかも。彼女じゃないけど。
次は、彼女と来よう。そう決めた。
でも、どう伝えればいいんだろ?
次、流れたら言ってみようかな。
好きって。どさくさに紛れて。歓声に紛れて。
あちこちで、歓声が上がる。
まだ早いって。
心の準備が出来てない。
次の次の次くらいまで待って欲しい。
また君と来たい。
また彼女と、彼女になった彼女と。
流星群の時期なので、書きたかったです。
別作品を毎日連載してます!
良かったらそちらもどうぞ!!