招待状
あなたの名前を忘れてしまうくらいに愛していました。
最悪だった。ただでさえその日は見たくもない夢を見て目覚めが悪かった。それなのに一通の手紙が届いた。それなのに、というのは無論自分にとって都合が悪いというだけだ。大きくため息をついてそれを読む。
丁寧に並べられた彼女の字は酷く綺麗で、内容に関わらず見惚れてしまう程だった。
勿体ないように感じて一字一字、目と指で追いながら読んでいると、まるで回想シーンのように彼女との日々が思い出される。
肩に掛かるくらいの艶やかな髪も、触れば溶けて消えてしまいそうな程に白いあの肌も、赤らめく頬まで縁のある丸眼鏡も、少し薄く塗られた紅色の口紅も、思わず見入ってしまうくらいに真っ黒なあの瞳も、全てが全て思い出の中で僅かながらの寿命を生きている。
一度魅了されると全てが愛らしく感じられた。何もかも。彼女の名前も例外ではなかった。まるで彼女の為だけに存在する名前なのではないかと思う程に彼女に良く合っていた。
もう一度大きくため息をつく。
見慣れない苗字からの招待状をしまう。
おめでとう、と