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求職の救世主  作者: こしあん大福
彷徨う騎士と本当の敵
17/17

17話 彷徨騎士

ついに前進。そして新章。

それはとある日。ライツェルがいつものように閑古鳥な店のカウンターとなっている窓から外を眺めている時だった。何やらあちらの騎士たちの寮から歩いてくる人が見えた。といっても大体冷やかしか、精々ガルブ同様応援団かのどっちかだ。第一お給金もやりがいもある騎士団の騎士たちが止めることなど無いだろうと彼は思った。


あるいは自分の店の目の前にある門を潜って外へ出ていくか。そのどちらかであろうと考えたライツェルはいつものようにまた空を眺める生活に戻ろうとした。


しかし、段々その影はこちらに近づいているのが分かった。まさかなと思いつつも見ると、そこには二人の男の影が。そこから近寄ってきて徐々に見えてきたのは、脂の乗り出した年ごろの歴戦の戦士を想わせる騎士の男性と、まだ若くどこか落ち着かない雰囲気を纏ったなよっとした風貌の青年だった。


しかもよく見れば、その歳の上の方はここの騎士団の団長らしい。慌ててライツェルは立ち上がり、声を掛けた。


「いらっしゃいませ!」













今回の依頼人:「輝煌騎士団」団長・ディレル

依頼内容:この若手騎士「ヴァクダス」が辞めたいと言っている。彼の希望の職に就かせてやってほしい。

















店に入った騎士団長ディレル。彼は入って座らないまま依頼を伝えてきた。彼の性格故なのかあるいは単純に長居をしたくないのか、立ちつつ話すディレル。その隣では、何やら緊張している様な雰囲気のヴァクダスの姿が。


「単刀直入に言う。第3チームであり隣の部下・ヴァクダスがここを辞めたいらしい。去る者拒まずがココの姿勢だが、今回はそうもいかなくてな。コイツぁ少し気にかけててな。職の希望がなんでもいいという訳じゃないんで、そこでどうせならお手並み拝見ってことでアンタに頼みに来たんだ。そこら辺は直接ヴァクダスに聞いてくれ。俺も聞いてはいるが、直接本人から聞いた方が分かりやすいだろう。それでは、な。」


足早に立ち去ろうとするディレルに、ライツェルは問う。


「去る者拒まずとは言ってましたが、そんなあっさりと別れを告げていいんですか?もしこれで俺が見つけて、彼が納得したらもう会えないかもしれないんですよ?そもそも、この輝煌騎士団なんて入りたくても入れない場所。そんなところに入れる才能を持った人物をやすやすと退職させていいんですか?」


しかしディレルは言う。


「まあ、そうなったらそうなったで仕方あるまい。無理強いも良くないからな、もし本当にやりたいことが見つかったんなら俺はそれを後押ししてやりたい。確かに有能だが、かといって他の希望者が居ない訳でも無い。今は魔族は居らず、魔物もそこまで湧いちゃいない。勿論まだ出撃要請はあるし、野良の魔物は発生するからな。そこら辺はあるが、少なくともそこまで急ぐような事でもないからな。」


そう言うと、今度こそあっさりと歩いて行ってしまった。随分冷たいんだなと思いつつも、まあ騎士団なんてそんなものかと思うライツェル。仲間同士ならまだしも、個別のチームの部下とチーム総括の団長だったらこんなものだろうなという感想でしかなかった。


「まあ、いいか。...それじゃあ、改めてこんにちは。俺はライツェル。知っての通り元勇者で、今は此処を借りて就活手助けの職【求職の救世主】をやらせてもらってるよ。それで、今回の依頼は騎士団長だったけど、実質的には君って事でいいのかな?」


ライツェルの問いにずっと黙っていたヴァクダスが答えた。


「ああ......。そうだ、俺がヴァクダス。この騎士団の第3チームでこの前まで働いていたが、色々と理由があって辞めたくなったんだ。他の仕事はあるか?」


その色々な理由を聞きたいが、一応客の事情のうち余計な事は聞かないよう努めている。とりあえず話を進める事にした。


ヴァクダスは中肉中背で顔は少し目がきつく、どこか自信のありそうな顔をしていたが雰囲気はむしろ逆。自信など存在しえないとでもいったものを纏っていた。


「ああ、勿論...。と言いたいところだけどその前に。さっきディレルさんが話してくれた君の条件とは何だ?どんな条件を求めているんだ?」


するとヴァクダスは言いにくそうに顔を歪め、そして言った。


「あぁ、それなんだが...。言いにくいな...。実はな?」


一言発す度言いにくそうに息を吐く彼にそんな重いことなのかと若干身構えるライツェル。こんないい条件の騎士団をやめるなど相当な筈だ。一体何が起きたのだろうか?


「実は.........。俺は...............




















方 向 音 痴



















なんだ。」


その言葉を聞いたライツェルは、目が点になった。


「え?......方向、音痴?」


「ああ、そうなんだよ!!実はよ、俺は方向音痴なんだ。騎士団で颯爽と困っている人の元に立ち向かわなけりゃいけないのに、毎回俺だけ遅れるんだ。森の中の村とか最悪だな。いつの間にかみんなとはぐれていて、いざ村に着いたら全部終わってる。そんな毎日が続いてさ、もう嫌になっちまったんだわ。俺が役立たずだって認識させられるし、何より毎回俺だけ手柄が何も無いしな。流石にもうこれじゃいても居なくても変わらないって思ってさ。むしろ俺が活躍できないからもう転職した方がいいんじゃね?ってことで。」


そういう彼の雰囲気は先ほどまでと大きく違っていて、軽く流すようなテンションでげははと笑っていた。


「なんか、性格変わった?」


「そりゃ団長前にしておふざけ態度は出来ないだろ!それにさ、こっちの態度が堅苦しいとやりにくいだろ?」


「それはそうかもな。じゃ、そのまま続けよう。それで、何で遅れるんだ?いくら方向音痴といってもさ、他の仲間とはぐれるなんてそうそうないだろ?一緒に行動していれば、多少の遅れはあってもよほどのことが無い限りそんな事にならないと思うが...。」


ライツェルは思案げに顔を上へ向け考えたように聞くが、ヴァクダスはそれに困ったような顔で答える。


「そう言われてもな...。俺とて、着いていこうという気はあるんだ。ただ道中途中までは着いて行けるんだが休憩など挟んで次のタイミングで急に追いつけなくなるんだ。俺だけが何故か全然違う場所に足を運んでいるんだ。俺も分からんが、医師に診てもらっても別段異常はないらしいし、教会に行ってみて貰ったが呪いなんてモンも掛かっちゃいなかった。あるとするなら俺の方向音痴が酷いってことだろうぜ。」


それはライツェルにとっても困った話であった。原因が確定しているならともかく、未確定のもので進めるには中々厳しかったからだ。


ヴァクダスが悪いとは言わないが、少なくとも騎士団という組織の中での戦いでは最悪のステータスだ。何せ目的地にたどり着けないということは、戦いにおいて急に居なくなる可能性すらあるわけだ。しかもそれは呪いだとか病気だとかという自分のせいではないものと違い、彼の方向音痴から来ているという状態。仮に確定だとしても未確定だとしてもとても普通に戦いに参加できるものではなかった。


ライツェルは我ながら性格が悪いと考えつつも、頭の中で疑問が浮かんだ。


(さっきでも団長は彼を「有能」とはっきり言った。勿論騎士団とて戦いが全てじゃないが、だとしても戦闘部隊に居るのなら戦いが主な仕事の筈。それにおいて着いて行けないような奴が、果たして本当に「有能」か?...何か、隠されている気がするな。といっても、何を言いたくないのかなんて分からないが...。団長が厄介払いしたいならとっとと追い払えばよかった筈だし、何か目的でもあるのだろうか...?)


どういうことだと頭を捻りつつも、とりあえず事情をなんとなく理解したライツェルはこう聞いた。


「まあ、とりあえず事情は分かった。方向音痴で自分が役に立てないと思ったから、騎士団を辞めて別の職に就きたいってことか。とはいえ、方向音痴という部分を考慮するなら戦闘職以外になると思うぞ。あと探索とかも絶対無理だし、何か作るとか育てるとかそんなもんか?そういう筋金入りの方向音痴だとちょっと色々迷うな。」


するとヴァクダスは目を丸くして言った。


「え?!戦闘職はダメなのか!?」


「? そりゃそうだろう、騎士団以外だって基本的に戦いってのは場所や立地を理解してやるもんだ。それにおいて迷うような奴は戦いには参加できないぞ。」


不思議そうに答えたライツェル。するとヴァクダスは途端に更に顔が驚いたものになり、思わず座っていた椅子から膝を崩れさせる。そしてそこから顔が懇願の表情へと変わる。


「......それはダメだ。それだけは、ダメなんだ...。頼む、何とかならないか?俺は戦闘職が良いんだ。」


そのヴァクダスの台詞に今度はライツェルが驚いた。


「いや、なんで悲しげな表情になるんだ...。いやそりゃ出来る事なら希望の職にさせてやりたいが、そんな懇願されたって無理なモンは無理だ。大体自分で言ったこと分かってるのか?戦闘職が良いったって、お前迷うんだろ?さっきも言った通り戦闘職は場所の理解が必要だ。それが不可能ならすぐ死ぬ。いくらやりたいと言われても、戦地に立ってすぐ死ぬ可能性のある奴を紹介するわけには行かない。」


ライツェルは同情するような面持ちで言った。今まで騎士としてやってきた以上戦いの職で頑張りたいという気持ち自体は分かるのだが、その戦闘職で全然活躍できないであろう方向音痴。それを紹介したところでちゃんとしたチームなら門前払いだろうし、野良でやったらすぐ死ぬだろう。そんな者をわざわざ死に向かわせる必要なんてないと思ったからである。


「な、なあ、頼む。俺は今までずっと騎士でやってきたんだよ。そりゃ戦えたのはあまり無かったが、それでも必死でやってきたし戦闘はそこそこ鍛えてきた。そんな俺なら出来るモノだってあるだろ?!」


項垂れていたヴァクダスは膝立ちのままライツェルの顔を見上げ、必死の表情で裾を掴んで頼み込む。


「と言われてもなぁ......。さっきも言ったが俺だって出来る限りやりたいものについて欲しいんだ。でもさ、どう考えても合ってないよ。騎士団って別に戦うだけが全てじゃないだろ?パトロールとかもあるし、警備もある。でもさ、そこらにも空間把握能力とか必要だし、仮に他の戦闘職だとしても全部方向の理解は必須だ。だからさ、心機一転で頑張るしか無いと思うぞ。」


それを聞き、がっかりとした表情で下を向き今度こそ本格的に項垂れてしまうヴァクダス。そんな彼を見たライツェルはふと更なる疑問を口にする。


「大体さ、ずっとやってきたとは言ったけどだからといってそこまでの固執にならないだろ?どうしてそこまでして戦闘職にこだわる?何か理由があるのか?」


「......俺は迷った挙句着いた時には終わっていることも多かった。それでも魔王が居た時代にはそこそこ戦ってきたんだ。今でこそ数が少なくなり、依頼されて俺たちが討伐に向かう事が増えたからこんなことで迷っているが、昔は戦えたんだ。戦いで培ってきたものを、使えなくなるのは嫌なんだ。騎士の腕が活かせる場が一番なんだ。俺はその為に必死で努力してきた。確かにこの輝煌騎士団には見合わないかもしれないが、他の戦闘職でならひょっとしたら方向音痴でも活躍できるんじゃないかと思ってさ。だから、こうしてお願いしているんだ。」


ヴァクダスはそう話した。騎士としての腕。彼が騎士団で「有能」だと言われるのはそこなのかもしれない。それに、確かにずっとやってきたものを、一つのデメリットだけで辞めるなんてことはかなり苦渋の決断だったろう。そんな彼がここまで言っている。


ウィームの時も、本来役に立たないと言われていたものの役割を見つけ出すことが出来た。あのウィームのケースに比べればずっと楽かもしれない。戦いは出来るが場所移動が苦手。つまり、動かなければいいという事だ。


用心棒やガードマンなどは同じところを回ったり、依頼主の隣で構えていたりするだけで良い。ただし場合によっては追いかけないといけない場合がある。


門番ならば門の前で立つだけだ。ただし、人との連携が必要で場合によってはあまりの量の敵を相手にするかもしれない。それに、一番最初に命を落とす可能性のある場所でもある。


動かなくても戦えるもの自体は意外とあるなと思い出す。といっても、用心棒やガードマン、門番などは騎士団に比べるとやや格が落ち給与面での差があるだろう。それに、どこに勤めるのかだとか、どれくらい戦えるのかとかを決める必要はあるが。


「なあ、どうしてもってんなら少しだけど戦える職はあるぞ。」


その声に項垂れていたヴァクダスはゆっくりと顔を上げる。


「.........本当か?」


「ああ、用心棒とかガードマンならある程度しか動かないし基本依頼人や依頼場所から離れないだろう。門番ってのもある。」


「...なるほどな!確かに、それなら動くのが苦手な俺でも行ける可能性があるぜ!!!サンキュー、じゃあそれd「ただし!!!!!!!」e」


言い終わらない内に、ライツェルが声を大きくし話す。


「...条件がある。」


「? 何だ、条件って。」


疑問符を浮かべるように不思議そうにしながら立ち上がるヴァクダスにライツェルは言った。


「お前の仕事ぶりを見せて欲しい。俺に。」


「仕事ぶり、だと?」


「ああ、簡単に言おうか?俺も一緒に次の戦いに同行させて欲しいって事さ。」


ライツェルは思ったのだ。確かに色々と問題点はあるが、今一番確認すべきは彼の強さである。もし本当にこの騎士団として活躍している実力があるならば、門番を任せるのは意外と容易かもしれないし、どちらに転んだとしても強さは一回見ておく必要があると感じた。


それに彼の方向音痴についても気になるところがあった。


(近くに俺が居れば、いくら勇者じゃなくなってスキルが使えなくてもある程度経験で気づけるはずだ。初めて聞いたぞ、仲間と居てもはぐれてそのまま彷徨う方向音痴なんて。もし原因があるなら探ってもいいし、彼に何か起きているなら俺が一緒に居て見ても良い。むしろ一回監視で俺が見るべきかもな。......とはいえ、その程度の対策を騎士団がやってない訳無いだろうし、何かあるんだろうが。)


ライツェルはそう思った。それと、そもそもいくら森で迷ったとしてもそう遭遇しないもんかねとも思っていた。いくら魔王が死に、魔物が減ったとはいえ元からいる野良の魔物は居るのだ。森の中で迷ったら普通に出くわすと思うが彼の話的にそれも無さそうであった。


「ど、同行?」


その言葉は一瞬だけ焦りが含まれている様な声色だった。彼の目にも一瞬だけ焦りの色が灯ったが、すぐに搔き消えた。


「ああ、実際にアンタの強さや戦い方を見せて貰おうと思ってさ。それに仮に居なくなるってんならどう居なくなるのかも気になるしな。騎士団が試してない訳はないが、元勇者の俺なら何かわかるかもしれんからな。」


するとヴァクダスは慌てたかのように顔を強張らせ、そして言った。


「いや、やめとけよ!!俺は本当にすぐ消えちまうらしいんだ。俺を一回見張ってた奴らが居たんだが、ちょっと一瞬目を離した隙に居なくなってたらしいしな。だから俺を見張るのは無茶だ。それに、そんなことをしててもどうせ俺のその方向音痴が治る訳でも無いしな。だから、やめとこうぜ。」


急に制止を掛けてきたヴァクダス。そのあまりの動揺とやめとこうという話に一気に不信感を抱くライツェル。そもそも、自分で方向音痴に迷っていたという話をしていたのにも関わらず、それを他人に確認されることを拒んだのだ。確かに無駄なことと本人が思っている可能性も無いことは無いが、だからとしてもここまで止める理由も焦る理由も無い筈であった。


「その見張ってた奴らってどんな奴らなんだ?それに目を離した隙って一瞬だろ?そんなんで普通消えるか?呪病の一種かもしれんし、まだ特定されていない呪いかもしれない。尚更見た方がいいと思ったから、やっぱ同行するよ。それにひょっとしたら治るかもしれないぞ?」


「そうは言ってもスキルとか使えないんだろ?だったら特定とかも難しいんじゃないか?それに、俺はれっきとした輝煌騎士団のメンバーだ。いくら方向音痴のカスみたいな存在だとしても、そこらの騎士より腕が立つ自信はあるぜ?」


そう言って腕にこぶを作るが、ライツェルは余計に顔をしかめこう言った。


「あのな、あまりそういうのは感心しないな。輝煌騎士団だから何だ?言っちゃ悪いが、今のアンタの情報から見るととても優秀には思えない。俺はアンタの戦いを知らないからな。それに、方向音痴のせいで戦いに合流できないってことは、戦いの経験値も低いって事だ。そこらの並大抵の騎士すら経験している戦いがお前には不足しているって事だぞ?俺が勧めた用心棒だとか門番だって生ぬるい職じゃない、むしろきっつい戦いがあるんだ。今のお前にとてもそれをこなすことが出来るとは思えないな。」


「な、何を!!!」


はっきりと自分の実力を見据えられ、思わず顔を赤くして憤るヴァクダス。思わず彼は続ける。


「よ、よくもそんな言葉を!!!アンタだって今や勇者のジョブを失ってんだから優秀じゃないだろ!!そんな奴に俺の方向音痴の原因が分かる訳ねえだろ!!!馬鹿にすんなよ!!それにさっき団長の言葉を聞いただろ!?俺は有能だってはっきりとあの人は言ってたぞ!!俺の言葉は信じられなくても、団長の言葉ならどうだ!!!」


人の褒め言葉をそうも持ち出せるとはと苦笑しつつライツェルは反撃した。


「確かに俺はもう勇者じゃない、でもな。ジョブってのは別に全てじゃないんだ。大事なのは学んできたもの、培ったもの、そして想いだ。それは全てに勝るものだ。俺はその経験をたくさんしてきた。だから、類似ケースから紐解ける可能性もある。でもアンタは違うだろ?今の職でそもそも思った結果が残せなくて転職しようとしているんだろ?それにアンタだって治ったら嬉しいし、治んなくても原因とかが知れたら助かるだろ。何も止める必要が無い。どうしてそんな俺が行くことを止めようとするんだ?何かあるのか?」


その反撃をモロに喰らってしまったヴァクダス。言い換えそうにも全てライツェルに返されるという想いが浮かび上がり、口を開いてすぐ閉じるという行動を繰り返していた。その後、ようやく口を開いて彼が話したのは、意外な一言だった。


「...............あ、危ないだろうが。元勇者でも現無職。スキル頼りな部分が多かったんだろ?辞めとけよ。それより、とっとと俺を転職させた方がお前もタスクを完了させられてお互い嬉しいじゃねえか。」


「そんなことか。だったら、大丈夫だ。いくらスキルが使えなくても、ここの騎士団との共同作業で死ぬことは無い。絶対にな。確かに俺は一カ月間のノルマを達成させて許可を得たいところではあるが、だからといって適当な仕事をしたい訳じゃない。やるんなら徹底的にだ。だから、気持ちは嬉しいがいいぞ。」


しかしヴァクダスは納得いかない様子でこちらを睨みつけてくる。どうしてそこまで、と少し考えたライツェルだったが、まずはお手並み拝見が先だなと思いこう言った。


「分かったよ、なら許可をとればいいか?次の仕事、お前を含む騎士団に同行させて貰えないか団長に話をしてみるよ。それでいいだろ?」


そう言われ、流石にそうなると否定も出来ずヴァクダスは息を呑むのだった。

今回の就職希望者はヴァクダス。

彼は25歳、灰色の髪の毛を短髪でカットした飄々とした雰囲気の青年です。

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