15話 少女花見
マル秘情報:アーリエの好物は、かつて自分が幼い頃教会で食べさせてもらった「ヤギのチーズと野菜のグラタン」。
ウィームと歩き、アーリエの住む教会へと着いたライツェルたち。とりあえず彼女に会おうと入ろうとすると、そこにたまたまボノボが居た。どうやら、彼女は洗濯物を取り込みに外へ出ていたらしい。教会前で話す二人を見て、近寄ってきた。
「あれ、ライツェルさんじゃない。どうしたの?」
「お久しぶりです。実は、折り入ってお話がありまして。今、アーリエはいらっしゃいますか?」
客室のような部屋で、2人で待つライツェルとウィーム。ボノボ曰く、アーリエは今ちょうど子供たちとお話をしていたらしく、もう少しすれば来れるらしい。そうこうしていると、扉を叩く音がする。
「失礼します。」
アーリエの声だった。そのまま彼女は部屋へと入り、そして二人の前の椅子へと着席する。彼女は微笑みを浮かべてはいたが、流石に急な訪問だった為か不思議そうな表情が含まれていた。
「お久しぶりですね。ライツェル様。...それで、そちらの方は?」
「ああ、久しぶりだな。...こっちは魔法使いのウィーム。最近知り合った友達だ。」
そう言ってウィームを指す。
「お初にお目にかかります。私はウィームと申します。あのアーリエ様にお会いできて光栄です。」
「畏まらず大丈夫ですよ。私はそんなに大それた存在でも無いので...。しかし、あれからここまで早くお会いすることになるとは、何とも言えないですが。何かあったのでしょうか?」
苦笑しつつもこちらに気を遣ってくれるアーリエに感謝しつつ、ライツェルが説明をしようとする。ウィームは常に興奮しているかと思われたが、意外と疲弊していた。
「いや、まさか私に話しかけてきたのがあの勇者様だとは。そして、その勇者様が案内してくださったのがまさか伝説の聖女様の住まう教会とは。驚きすぎて少し疲れました...。はは......。」
疲弊するのも分かる、といった具合の話であった。急に有名人に囲まれているウィームからしてみればいきなり何だこれ、という以外の何物でも無いだろう。
「いやいや、確かに有名人であることを否定はしないが、普通に俺は今や無職だし、アーリエは普通のシスターだぜ?」
「ええ、私たちも一般人に戻ってはいるのですよ。とはいえ、急にこんな事になって驚くのには同意します。一体急にどうしたのですか?」
そんなアーリエに対し、ウィームの魔法とライツェルが思ったベティに対しての説明をする。時に頷き、時に質問をしながらアーリエはその概要を受け入れていった。
「なるほど、つまりベティに対して生きる活力をつけて貰おうという訳ですね?確かに彼女はずっと辛そうですし、何より病気による副作用として他のあらゆる生きとし生けるものに触れられないことに悲しんでいます。...確かに、お話としては理解しました。ですが、腑に落ちない点がいくつかございます。」
「まあ、そうカンタンに理解してもらう方が怖いからいいさ。何だ?」
そうライツェルが告げると、アーリエは神妙な表情で言った。
「まず、第一に今回の病気は出来る限り世間には伏せています。ライツェル様だって、私からお聞きしたでしょう?本当ならば許可が無ければ話せないことなのです。それを破った自覚はおありですか?」
その言葉に思わず顔を背けるライツェル。思いっきり失念していたのだ。よく考えれば、ボノボから聞けなかった時点で察するべきだったのだ。勿論教会側としても何処かで漏れる事はあると思っているつもりではあるが、だからといってバンバン話していいという訳でも無い。ライツェルは善意で行動しただけだったが、結果的には情報漏洩となってしまっていた。思わず頭を下げる。
「...すまん、マジで考えてなかった。これ処罰とかあるのか?だとしたらその罰は俺だけにしてくれ。アーリエもウィームも悪くない、悪いのは俺一人だからな。」
「いえ、私......僕も罰を受けます。」
そう言ったのはウィーム。それに対し、ライツェルは驚いた顔で言った。
「いや、ちょっと待て!俺が話したから悪いのであって、ウィームには特に問題があった訳じゃない!ウィームは罪の意識を感じる必要は無いんだ!」
「確かに罪はないけど、僕も乗り気だったからね。それに、僕を諭し、説得しようとしてくれた友人が痛い目を見るのを見ないふりは出来ないよ。」
彼もライツェルを再び友達だと言った。ウィームは確かに悪くなかったが、だからといって自分に一粒の希望をくれた青年の罰を見て見ぬふりなどできなかった。
「......ふふ、なーんて。別に罪なんてありませんし、ライツェル様が一切悪気が無かったのなんてわかっていますよ。いずれ出回る事でしょうし、だったらむしろ話した人が分かった方がこちらとしてもありがたいので大丈夫です。...とはいえ、気を付けてくださいね。私たちだからこれくらいで済みますが、関係ない人とのお仕事でこんな事やったら、最悪裁判になりますよ?」
アーリエはしばらく黙って聞いていたが、不意にそう言って種明かしのように笑った。その顔には一切の嘲りは含まれておらず、ただ純粋にライツェルたちを試しただけのようだった。
ライツェルは不貞腐れたかのように言いつつも、改めて頭を下げた。
「何だよ、驚かせて。...とはいえ、迂闊だった。それに関しては本当に申し訳ない。返す言葉もないよ。...こんな事をしでかしておいて何だが、聞きたかったのはこれなのか?」
「ええ、お二人がちゃんとこの件に関わろうとしているのか気になって聞いてみました。勿論元々聞こうとは思ったのですが、もし舐めていたり、覚悟が足りないようであれば厳しい言葉を投げようと思っていたのです。しかし、しっかりと準備はしていたようですね。これなら、ベティとの対談に向かっても大丈夫そうです。お二人とも互いに信頼し合えているみたいですし、何より罰のくだりで逃げようとする意志がありませんでしたから。」
安心したかのようにほっと息を吐くアーリエ。彼女は勇者パーティの1人である前に、一人のシスター。この教会の子供たちを我が子のように可愛がっている為、ベティに対しても愛情はひとしお。生半可な想いで行かれては困ると思ったのであった。
「じゃ、他にはあるか?」
「あとは二つですね。まず一つは病気の事。以前ライツェル様には説明しましたが、彼女の病気は周りのものを腐らせてしまう効果があります。これは私の防御魔法でしか突破できません。しかし、勿論この世の中において、絶対なんてことはあり得ません。感染してしまう事だって0ではないでしょう。その覚悟はお在りか?というものです。
もう一つは、私の魔力の都合上出来るのは本当にわずかな時間だけ。つまり、練習など出来ずぶっつけ本番という事になります。あまりこういう事を言うべきではないでしょうが、もし失敗してしまえば彼女はよりがっかりし、精神を更に悪化させてしまうかもしれません。そうなってしまう事への覚悟と、贖罪の意志はありますか?...勿論そうならない事が一番ですがそうなってしまった時の事も考えるべきです。」
アーリエは一気に二つ質問した。どちらも今回の件においては必要な事。
「あー、確かにな。俺としちゃ今更ではあるが一応答える。病気の雑菌は確かに問題あるだろうが、どんなに強い戦士だって一瞬の隙を突かれれば死んじまう。それと同じで、なる時はなるんだ。絶対が無いなんてことは俺でも分かる。感染するのは当然人間としちゃ嫌だが、人を今まで散々救ってきたものとして今更何も恐怖なんて無いぜ。
それと、身も蓋も無いが今回ベティに魔法を見せるのは俺じゃなくてウィームだ。俺としては彼が無事出来るよう出来る限りのサポートを行うってくらいか?失敗はとりあえず考えないようにして、出来ることを考える。仮に本当に考えるにしても、その時はその時だ。今はとにかく100%出来るんだってのを見せつけてやろうぜ!」
そうライツェルが答えると、ウィームが続く。
「確かに、正直言えばいきなりこんな事になって驚いてはいるよ。...でも、僕だって散々上手く行かなくて色々やってきたんだ。今更この状況で逃げるような軟な考えはしていないよ。
あと絶対失敗できないって言うのはプレッシャーがすごくかかって正直滅茶苦茶緊張するけど、でも絶対やり遂げて見せるよ。生きる希望を僕の手で作って見せる。決して、もう二度と使えない魔法使いだなんて呼ばれないように。......失敗したらなんてのはライツェルの言う通り考えず、僕は僕のまま頑張ってみるよ!」
その答えを満足げに聞いたアーリエは一たび頷くと、朗らかな表情で椅子から立ち上がった。どうやら、彼女も行かせる準備が出来た様だ。
「皆さんの気持ちと覚悟はよく分かりました。では、向かいましょうか。」
その言葉を最後に、ライツェルたちは部屋を後にした。
前回同様深呼吸で行く前の準備を整え、アーリエは防御魔法をやる構えをとり、ライツェルは今回特にする事は無いが一応何があってもいいように魔力回復剤は持っている。ウィームは汗を垂らし、非常に緊張した面持ちでいたが、ライツェルに励まされなんとか保っているようだ。そんな3人はいよいよだとお互い顔を見合わせ、頷き合う。
「では、行きましょうか!<強固なる大城壁>!」
その言葉で3人に金色の膜が張る。今回は前回より一人多い為、更に必要となる魔力は増え、時間は減っている。居る事の出来る時間は大きく見積もっても10分程度。自己紹介も含めるならば、本当に時間は無いだろう。魔王討伐時はとある国で手に入れた「無限魔力の指輪」を使っていた為気にする事は無かったが、魔王との激戦で壊れてしまい今では使えない。まさかここまで苦労するとはとアーリエも思った。
扉を開け梯子を下り、そしてとある石造りの部屋へと辿り着く。そこには、前回と一切変わらず、不健康を身に纏ったかのような色白さを持つ白髪の赤目少女、ベティが居たのだった。
「あっ、アーリエ先生今日もおはようございます!今日はなんだか早いですね!......って勇者様!!またお話が聞けるのっ!?...あと、そこの方はどなたですか?」
一気にまくしたてる所などはやはり子供らしくかわいい一面だが、とにかく興奮しているベティに落ち着かせるようライツェルが言う。
「よっ、ベティ。久しぶりだな。今日は3人で来たからあまりアーリエの魔法の時間が無い。手短に言うが、彼は俺の友達のウィーム。今日は彼からベティに見せたいものがあるって話だ。」
「うん、えっ?友達なんだ、よろしくね!!...それで、見せたいものって?」
きょとんとしつつもすぐに理解し、ウィームに屈託のない笑顔を浮かべるベティ。それに少しだけ緊張をほぐすウィーム。
「それはお楽しみだ。じゃ、後はウィームに任せる。俺たちのことは気にせず、彼女にとびっきりの物を見せてやれ!」
「ああ、分かったよ。それじゃぁ、えっと、ベティちゃん?でいいのかな。僕はウィーム。冴えない魔法使いだ。今日は君に特別な魔法を見せに来た。きっと喜んでくれると信じているよ。それじゃあ、早速やるね。」
ライツェルの口上と共に前へ出たウィームはベティに説明する。これだけで既に1分以上経過している。果たしてうまく行くのか。
「へぇーっ、特別な魔法?...見たい、見たい!」
興奮しつつもそれを抑えるように顔を整え、でもしかしやはり顔が興奮状態になってしまうベティを見ながら、ウィームは詠唱する。
「必然たる自然の神よ、我らの声を聞き届け虚空に彩を与えたまえ! <百華繚乱>!」
彼は別に凄腕という訳でも無く、詠唱が必要であった。元々無詠唱とは凄い技術なのだ。全ての職のスキルが使えたライツェルのような勇者はさておき、基本的には無詠唱と詠唱の違いは理解できるかどうかにある。それを理解し実行できるよう努力した者こそが天才である。アーリエやラズリーベはそれを会得している。
が、ウィームは普通の魔法使い、しかも何ならやれる魔法は落ちこぼれ扱いである。当然そんな優れた芸当など出来るはずも無かった。そんな彼が放ったスキルは、彼の持つ一般的な魔法杖から光となって飛んでいきベティの周りを回る。
そして、数回回ると突如。
ふわっと、花びらが舞った。
その光が回れば回るほど、花びらは舞い花は踊る。花はどんどんと彼女の周りを埋め尽くす。色々な種類の花が、彼女の周りを花畑へと変えていく。赤色、黄色、橙色に白色。桃色もあれば、紫色だってある。そんな色とりどりの世界になりながら、背景はどんどんと鮮明になっていく。著しく変わっていく景色。ベティはというと、呆然といった感じで固まっていた。一切身動きせず、ただただ固まっていた。
それを見たウィームは自己嫌悪しそうになった。やはり、自分の魔法なんかではダメだったんじゃないかと。そして、ここへ連れて来たライツェルに対しても少しばかり怒りが湧き出そうになる。しかし、その次の瞬間にそんな気持ちは引っ込んだ。黙って花を見つめていたベティが涙を流したのだ。思わぬベティの表情に今度はウィームが固まる。一体どうしたのだと。
しかし見る人が見れば気づくだろう。ベティは確かに泣いてはいるが、その瞳が悲しみに触れてはいない事。そして、彼女の口角が僅かに上がっている事を。事実、彼女は次の瞬間、ぽろりと呟いた。
「......綺麗。...すごく、すごく綺麗。久しぶりに、ひ、久しぶりにぃ...いざじぶりでぃ.........」
感極まって涙を抑えきれず泣き出す彼女に、ウィームは拍子抜けした。自分の魔法に呆れられたのかと恐れたが、実際にはむしろ逆。思わぬ光景に感動されていたのだった。そんな彼女に驚くも、ぽかんと空いていたウィームの胸の中の穴が少しだけ小さくなっていた。
黙って見守っているアーリエは感極まっているベティに慈愛の顔を向け、ライツェルはもらい泣きしそうになり慌ててそっぽを向いた。しかし次の瞬間、あれだけ綺麗だった花たちに異変が起きる。急速に枯れ始め、数える間もなく萎れてしまった。その時間は3秒にも満たなかっただろう。
泣いていたベティは心を落ち着かせるように啜りながら、涙でぐしょぐしょになった顔で前を向く。しかし、その先に有ったのはまさしく地獄絵図。何せあれだけ感動した花が綺麗さっぱり枯れ果てているのだから。
「えっ............。そんな、そんなぁっ!......どうして、ど、どうしてなの?!......やっぱり、私もこのお花さんたちと一緒で死ぬサダメなんだ...。そう遠くない内に死ぬんだ...。どう頑張ったって、治せっこないんだっ。...嫌。......嫌だっ。生きたい、生ぎだいっ!!うあああああああああああっ!!!!!!!!」
思わぬ光景を見てしまった彼女はがっかりと肩を落とし、そして叫んだ。叫びと同時に彼女はベッドの上で暴れた。駄々を捏ねるように必死で腕や脚を動かし、まるで聞き分けの無い子供のように泣きじゃくった。言葉の端々からも取れる通り、彼女は絶望しきってしまった。
確かに花は綺麗だったが、結局どんなに美しくてもあのウイルスの効果で枯れてしまう。そしてその花たちを、現在進行形で苦しんでいるベティ自身が自分の身を投影していた。しかし、どう足掻いても最後には枯れてしまうという無惨な最期を見せつけられ、感動から一変。生きたいという欲望と絶対に無理という想いが交差し、壊れてしまいそうだった。
ライツェルとアーリエは事情を知っているが、それでもここまで進行しているのかと驚愕した。そして驚愕しているのは彼らだけではない。今まで散々罵られてきた男・ウィームもその一人である。そんな自分のどうしようもなく使えないと思っていたスキル。それが今や少し誇らしい。そう感じていたのに、彼女は今自分の前で号泣している。その彼女こそが自分のスキルに誇りをくれたのだ。誰もが見て見ぬふりをし、嘲ってきた彼の魔法に喜んでくれたのだ。
家族以外で唯一喜んでくれた彼女。ベティというまだ年端も行かない少女に彼は助けられたのだ。彼はこのたったの数分でもう彼女のことを嬉しく思っていた。だからこそ、この子を死なす訳にはいかないと思った。
だが、それはそれとしても自分は医者でも無ければ薬屋でも無い。ただの魔法使いだ。治療できる魔法という訳でも無い。彼女を今、病気の恐怖から完全に救う事は出来ないのだ。それでも彼は諦めるわけには行かなかった。自分の魔法を素直に綺麗だと喜んでくれた少女を、生かせなければ何の意味もない。そう考えた彼は、急いで次の魔法を行使する。
「必然たる自然の神よ、我らの声を聞き届け彩を再び灯したまえ! <百華絢爛>!」
その魔法が唱えられると、杖からは優し気な緑色のエネルギーが飛び出す。そして、失意に暮れた彼女の前にある花に移っていく。すると、どうだろう。完全に枯れた筈の花が、まるで逆再生のようにみずみずしさを取り戻し始めた。そして、ものの十数秒で花は先ほどの一番美しかった姿へと戻った。その緑のエネルギーは、少しずつ小さくなっていったがどんどん他の花たちも回復させていく。どんな花も、必ずその光が通った後は綺麗に咲き誇った。
悲観していたベティ。その彼女をウィームが呼ぶ。
「...ベティ、さぁこっちを向いてごらん。」
言葉に耳を貸さない選択肢もあっただろうが、彼女の善意がそれを押しとどめ、ギリギリでこちらを向く。すると、彼女の視線の先に見えるのは先ほどまで自分の出すウイルスの効果によって枯れ果ててしまった花たち......ではなく、その前の綺麗な姿と何一つ変わらない花であった。先ほどまでの光景が嘘だったと言わんばかりの光景に目を疑うベティ。
「えっ...?さ、さっきここにあった枯れた花は?どこ行ったの?今の間に捨てれる訳無いよね...?えっ、えっと...?」
困惑を押し固めたような顔でウィームを見るベティ。するとウィームはこう言った。
「最初に言っておくと、僕には花を治す事しか出来ない。...君を治す事は申し訳ないが僕じゃ出来ないんだ。僕は、言い換えれば花のお医者さんといった所だ。そして、あれだけ枯れてしまった花たちも僕にかかればこんなものさ。
...だからね、きっと君も大丈夫だ。君も必ず、自分を治してくれる医者と巡り合う日が来る。今は辛いかもしれない。でも、いつか君はこの花のようになれる。あんな状態からこの花は治ったんだ。君だって、絶対に治る筈さ。証拠も何も無いけど、治せる力を持った僕だからこそ言えることだってある。」
その言葉を聞いたベティは、噛みしめるように頷いた。いつかは救われる、その言葉を信じる気には到底なれなかったが、少なくともこのお兄さんは私を勇気づけようとしてくれている。そして希望を無くさないよう説得してくれているのだと気づいた。彼女はライツェルたちからも認められるくらい人の心が分かる。ウィームがどんな感情でその言葉を吐いたのか、それを見つめてゆっくりと吟味した。
一方ウィームはやり切ったと思わず溜めた息を吐き出す。緊張で汗は止まらないが、とりあえず彼女の絶望的な表情は拭いされた。正直、ギリギリだった。もう魔力が底を尽きそうだった。恥ずかしい話だと彼も思うが、どうせ使えないのだからとやさぐれて本来一番鍛えるべき期間に軽くしか鍛えなかったのがここで出てしまった。ギリギリ保ったからいいものの、あと少しでも間に合わなかったらまた彼女を絶望させることになっただろう。そして、今度こそ彼女は再起不能になってしまうだろう。それだけは避けたかった。
なんとかなったと笑おうとするウィーム。そんな彼に、最大の試練が襲い掛かる。それは、ベティの一言だった。
「ねぇ、えっと......。うぃーむさん?でしたっけ?この花、触ってもいいですか?」
さあ、どうやって対処するウィームくん。




