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テイマー世界のドラゴン転生  作者: ruki
序章 竜とテイマー少女
3/10

第二話 vs黒竜

「見つかった……!」


 相棒の1体である妖精の魔物-ルナ-の視線を通じて、カレンにドラゴンの鋭い眼光が突き刺さる。その実力は先ほどの聖騎士4名が倒されたことからも、半端な実力ではないことは確かである。潜伏性、俊敏性に自信のあるカレンであったが、ドラゴンを上回れるとは考えていなかった。そのため、ここでとる手段は迎撃一択である。近くに潜ませていた狼の魔物-ルフ-を呼び出し、わずかな可能性にかけて戦闘態勢をとる。

 

「私だって、テイマーなんだ。ドラゴンだって魔物の一種。【従属】が発動さえすれば……」


 カレンのかけた可能性とは、 ドラゴンを従属させること。スキルの【従属】は成功すれば対象の魔物を強制的に自分の仲間に引き入れることが可能であり、テイマーご用達のスキルである。ただし、強力な魔物になるほど成功率は減少する。カレンがドラゴンを従属させることができる可能性はほぼ0といっても過言ではない。それでも生きるためにカレンは、【従属】を実行に移すしかない。


『お前がこの妖精の主か』


 戦闘準備を終える間にドラゴンがカレンの元へと到達した。その前足にはルナが握られており、苦しそうにしている。


「ルナを離して!」

『ふむ、純粋なテイマーか。ただし、この世界樹に来るにはいささか早すぎたのではないか。』

 

 ドラゴンはカレンのことなど気にもせず、【念話】で話しかけてくる。明らかにカレンを格下ととらえているためか特に気にもせずカレンへと近づいてくる。そして、その距離が一定以上縮まったその瞬間。


「【送還-ルナ-】!!」

『む?消えた……。テイマーのスキルか』


 【送還】は自身が従えている魔物にのみ使用可能なスキルであり、その効果は「拠点への強制転移」である。一定以上の範囲内にいないと発動しないため、カレンはルナが有効範囲内に入るのを待っていたのだ。そして次にカレンが動く、より早くドラゴンが動く。


「ガァァ!!」

「っっっ!!!」

『む。強くやりすぎたか』


 今までの【念話】とは異なり、ドラゴンの口からぐぐもった鳴き声が発せられる。ただの声というわりには声量が大きく、カレンは思わず耳を塞ぐ。次の瞬間、カレンが吹っ飛ばされ、背後の木に激突する。激突の衝撃はルフが、カレンと木の間に入ってくれたおかげで致命傷は避けられた。ただそれでも、カレンは自分がどのような攻撃を受けたか、すぐには理解ができなかった。ただ、このまま這いつくばったままでは、やられることは確かだ。


「起きないと……。ルフ!無事?」

「ガァウ!」

『見事な主従関係だな。弱小とはいえ竜の息吹(ブレス)で気絶しないとは』


 拍手と言わんばかりに、ドラゴンが牙をカチカチならしながら近づいてくる。その様子は随分楽しげだ。反してカレンにとっては恐怖以外の感情は持ちえない。


「追い打ちをしないだなんて、随分余裕がありますね」

『お前に興味があるのでな。話をするのも楽しいぞ?』

「わたしたちはまだ戦えますよ。終わった気になるのは早いです」

『ん?まだ何かあるのか』

「ええ、テイマーだからこそ、ね。【従属】!!」

「グゥ⁉」

 

 カレンがドラゴンに向けて両の掌を向ける。そうするとドラゴンの周囲にいくつもの魔法陣が現れ、四肢を徐々に拘束していく。手足とさらに首元に出現した魔法陣で地面へと拘束。加えて頭上にも魔法陣が出現して、一段と輝き始める。ただし、ドラゴンも黙ってやられているわけではない。生来の強力な生物としての本能で、【従属】に抗っている。地に伏せ、この一時は動けない。にもかかわらず、カレンは【従属】に使用する精神力の急激な減少を感じ取っていた。それほどまでにドラゴンとは強大で恐ろしい存在なのだ。


「くぅ……っ!やっぱ強力……!精神力が、もたない」


 精神力とは、スキルを使用するために必要なエネルギーである。RPGゲームでいうところのMPやSPに該当する。スキルを継続的に使えばどうなるか。継続する分の精神力が削られ、最終的には気絶してしまう。そのためスキルを使用する者は自身の限界を見定める必要がある。世界樹の森という危険地帯の任務を行うカレンは、もちろん自身の限界値を把握している。今のままだとあと数十秒も持たずに【従属】が解除されてしまう。とはいえ、自分にこれ以上のスキルが何かあるわけではない。気合で気絶を絶えることができても、ほんの一瞬である。

 

 カレンが必死に集中しているとき、ドラゴンは静かにカレンを見つめていた。その瞳孔は猫目のように、縦長に伸縮していた。カレンをじっと見つめるその瞳は、身体が魔法陣で縛られているにも関わらず、何かを見定めるようにしっかりとカレンを捉えていた。そして、一定の時間が経過していたところで。


『ん?それは……。なるほどな』


 カレンの精神力がつきそうになったその刹那、ドラゴンが何かを呟いた。カレンは集中していたため聞き取れなかったが、何かを呟いたことだけは分かった。そして、それを境にドラゴンの抵抗が一切感じられなくなり、【従属】が成功したのであった。今まで精神力を込め続けてるために集中していたカレンだがドラゴンからの抵抗が無くなったことで、込め続けていた精神力が一気に放出されてしまい、カレンの精神力の限界値を一瞬で上回った。

 

『ふぅ、今日からよろしく頼むぞ。ご主人サマよ』

「……ふぇ?」


 薄れゆく意識の中、カレンの視界にはにこやかな表情を浮かべるドラゴンがいた。そこに先ほどまでの剣呑な雰囲気はなく、どこか楽し気でもあった。そしてカレンが地面へと倒れ伏す。ルフと竜は時間が停止したかのように、お互いを見つめあっていた。自身の主の意識が回復するまで……。

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