プロローグ
初めまして。
稚拙ではありますが、どうぞよろしくお願い致します。
とある森の奥深く。人の気配がない、自然豊かなこの地では魔物と呼ばれる生物が跋扈している。自身の縄張りを増やすために日々生存競争を繰り返しているため、魔物の気性は荒く、常に戦闘態勢といっても過言ではない。また、魔物とは魔法と呼ばれる能力を駆使して上位の存在となった生物のことを指すため、戦うと非常に強力な存在と化す。
森にはどこからでも見ることができる〈世界樹〉と呼ばれる場所がある。世界樹は大きく、周囲の木々とは比べ物にならないほどに巨大である。その巨大さは世界樹の枝の一部が1つの大陸に見間違うほどの大きさである事から、世界樹そのものがどれほど雄大なものかを伝えている。世界樹から得られる恩恵は数知れず、その恩恵を求めるために森では日々縄張り争いが絶えない。
世界樹に最も近い人種族の国家〈ノルン〉。ここでは世界樹の恩恵がもたらす恵を求める人々が建造した街である。国家に繁栄をもたらす世界樹を神聖視している国家からは〈聖都ノルン〉とも呼ばれている。その風貌は王城を中心として半円状に広がっており、王城の背には世界樹の森と人間国家を隔てる巨大な山脈〈ソルド山脈〉が存在する。聖都ノルンは人間国家を森に住まう魔物たちから守るように造られた町でもあるため、その様相はさながら前哨基地と言える。
ノルンに集う人々はそのような建国背景から、魔物より人々を守る意識が強く、中でも王家に仕える騎士は屈強な戦士が多いことでも有名である。他の街の人々から「聖騎士」と呼ばれる精鋭は、武器1つで森に住まう魔物とも互角に渡り合えると言われている。この国の誉れであり、聖騎士を目標にする子供たちも多い。人類にとっては至高の護り手であり、魔物にとってはこの上ないほどの脅威であると言える。そんな聖騎士が唯一といっていいほど一対一を苦戦とする魔物がいる。それがドラゴンである。
ドラゴンとは、蜥蜴のような躯体に蝙蝠のような翼膜、硬い鱗に覆われた身体は剣の類を通さないほどに硬い。種によっては、竜の息吹と呼ばれる強力な遠距離攻撃を行うものも存在する。魔物の中でも危険な部類に入り、ある街では、ドラゴン一頭に壊滅させられたこともあると言われている。
一方で、人類の繁栄にはドラゴンの存在が必要不可欠なものとなっている。一口にドラゴンと言っても種類は様々。小型の竜は人間に仕えていることもある。
人類はスキルと呼ばれる特殊な技術を編み出した。その中には魔物を使役するスキルも存在する。スキルを使用して、魔物を使役する者が「テイマー」と呼ばれる中、ドラゴンを使役する者は「ドラゴンテイマー」とも呼ばれ、聖騎士と同じくらいに人気を博す職業と言える。
近頃は新たに世界樹に住み着いたドラゴンがいると言われており、ノルン全体が警戒態勢へと入っていた。
その元凶であるドラゴンといえば。
『あぁ……、日差しが心地いい。今日はこのまま寝て過ごそうか』
のんきに昼寝を始めるのであった。
竜はすやすやと寝息をたてはじめる。竜の物語は今、始まったばかり……のはずである。