甦れ
炎に飛び込んで死に、
炎の中から甦る。
不死鳥は古代から
語られてきたらしい。
その不死鳥になれるか。
死んだとまでは
言わなくても、
日本人は減ってきた。
バブルの頃があった。
赤色巨星のように、
周りの星を飲み込んだ。
アメリカを買えた。
違和感だらけの
不動産や株式だった。
そして泡は弾けて、
何に飛び込んだのか。
日本は周りが海で、
他国との国境がない。
恵まれた国だと言える。
分断もされなかった。
必ず、右肩上がりを
求められていた時代は、
もうしばらくは、
誰かの記憶にあるだろう。
もう一度羽ばたく。
羽ばたいたことの
ある者だけに、
描ける言葉が浮かんだ。
自分にも描けるのか。
もう一度羽ばたくと。
何にもしてこなかった。
そうとしか感じない。
ほんとうに何にも
してこなかったのか。
長く働いてきたし、
ずっと働いている。
それは何かをした
わけではないたろう。
振り返るときに
何も思い出せない。
暮らしてゆくのが
精一杯だったのだと、
色も形も見えない日々。
記憶の箱を逆さにする。
何かが落ちてくる
足元に転がったのは、
弦の切れた楽器と、
一冊のノートだった。
右肩上がりの日本で、
それらを持ち歩いた。
羽を生やしたかった。
背中はいつも丸かった。
日本が日本であるなら、
その良きところを
羽に変えるだろう。
世界の難儀を救うべく。
自分に何があるだろう。
良きところを見つけて、
たとえ見つからなくても、
何かの種ではありたい。
不死鳥のごとく、
これからも、何度でも、
甦り羽ばたくための
熱く濡れた意思を秘めて。