ゼトニウラ台地
書き足りない部分を、ちょびっと増量。内容は変わってません。(2024・7/31)
「さて、行きの進行速度から、ギルド帰還の予想最短日数は5日か…………貴重な休みだな」
一人、『乱喰い歯』の迷路から出たディーンは、昇級審査の依頼を遂行中の身だが、審査中のC級探索者パーティー『山脈の風』がギルドに帰還する前に戻ればいいので、その間に別の依頼を受けることも可能だ。
さっさと街まで戻り、宿で休みたくても、街門で見張っている商人ギルド職員たちに捕まって、あれやこれやが今すぐ欲しい!大至急!と、貴族の見栄と我が儘が嫌味ったらしく長々と書かれた依頼書の束を押し付けられる。
とにかく早く!品質は最上の物で!などの特記事項を付けた依頼を出すなら、誰が受けるのかも、いつ納品されるのかも判らない通常依頼ではなく、特別依頼や指名依頼に見合うだけの依頼料をケチらず出すのが確実だ。
お貴族サマの懐具合いや、羽のように軽い頭から出た『金毛鹿の前で罠を作る』素晴らしい計画など、受注する側に選択の自由と権利がある探索者にすれば、知ったこっちゃあない。
「……しばらく隠れるか。でもなぁ……」
街の近くの森でこっそり野営し、戻ってきた『山脈の風』と一緒に、しれっとギルドまで行ってから逃げてしまうことも考えた。
ただ、ゼトニウラ台地に来るのは久しぶりなので、いつも通り、のんびりウロウロしたい気持ちのほうが大きい。
広大な台地なので、ディーンも隅々までは行ったことがないし、特に確認だけはされている西側の岩壁は、まだ簡易調査もされていない。
岩壁からの落石や魔物の襲撃の危険さえ注意すれば、何か珍しい鉱石や植物が見つかるかも知れない。
「よし行こう、自単で」
昔馴染みから教わった『自由に楽しむため、移動は速く簡単に』の略を呟いたディーンは、体に風魔法を纏うと、西へ向けて飛び上がった。
*『金毛鹿の前で罠を作る』:「捕らぬ狸の皮算用」と同じ意味。
続きは……書ける時にっ!たぶん、8月末には……(滝汗)