風狼
投稿予約、変更できなかった……(((O_O ;)))
3話まで纏めて投稿します!(血涙)
ふりがな抜けと改行ミスの訂正しました(2024・8/17)
「中央にある森は風狼の巣だ」
「「………………」」
「………ははは…………やっぱりな……」
青かった顔色が白くなり、プルプル震える魔法士と盾士に、乾いた笑い声のあとは溜め息しか出ない『山脈の風』リーダーのコールズ。
「リーダー?どうしたんっすか?」
「コールズ、ちょうどいいから教えておくぞ?」
「ああ……頼む」
キョトンとしている斥候の少女と、槍士と弓士を手招きし、案内人の青年は「叫ぶなよ」と前置きしてから、『乱喰い歯』中央の森に巣を構える風狼のことを話すと、三人は声も無くガクガクと震える。
▽風狼
風の魔力を宿した、精霊に近い狼型の魔獣。
魔獣と区別するため、精霊獣、精獣と呼ばれる。
魔獣の魔狼とは比べられないほどの魔力を持ち、人語を話すほど知能も高い。 群れを作る魔狼とは違い、普段は単独か番で放浪しているが、気に入った特定の場所に巣を構え子育てをする。
討伐難度:精霊獣1体に対し、S級探索者パーティーが3組、又は国家魔法士団の中隊2師団以上が必須。
例え草食の精霊獣が相手でも、子育て中の巣に近付くものは、生きたまま幼体たちの餌にされる。
◆◇◇◇◇◇◇◇
すっかり静かになった『山脈の風』パーティーだったが、ゴクリ、と唾を飲み込んだコールズは青年に問う。
「……俺たちでも、依頼の達成は可能なんだよな、ディーン」
「当たり前だろう。そうでなきゃ、昇級審査なんて面倒臭いことなんか引き受けないさ」
口の端を少し上げ、楽しそうに笑う案内人の青年・ディーンは、「このパーティーは皆、素直で堅実だからな」と言いながら、全員の背中をバンバン叩いて気持ちを切り替えさせると、『乱喰い歯』の迷路を再び先導する。
「ディーンさん、なんで採取専門なんですか、もっと凄い依頼をいくらでも受けれるんじゃないですか、もったいないですよ」
「そうですよ、ギルドで呑んだくれてる連中なんか、尻を的にして針ネズミにしてやりますから」
「二人ともいい加減にしろ」
後ろでグズグズと愚痴る槍士と弓士に、コールズが呆れつつ注意するが、ディーンは困ったように「そう言われてもなぁ」と苦笑する。
「昔の俺は、何に対しても興味が無くてね。強い魔物を倒したり、ダンジョンで凄い宝を見つけたりするのは、やりたい誰かがやればいいって考えてた。そんな俺に『まだ行ったことのない場所で、見たことのないものを探してみろ、楽しいぞ』って、奨めてくれた物好きがいてな。それから、のんびり飽きるまで採取人をやってるだけなんだ。でも、気遣ってくれてありがとな」
照れて頭の後ろを掻くディーンの姿に、何故か赤面する『山脈の風』パーティーであった。
巨岩の迷路から抜け出した一行の目の前に、白銀の毛並みを持つ風狼が音も無く舞い降り立ち塞がる。
『何用で来た、ニンゲン』
「世界を巡りし自由なる風の眷族殿に挨拶を。この地にてしか得られぬ緑の恵みを、僅かばかり我らに分け与えて頂きたく。私と仲間の命は《青銀》の名に誓います」
『…………よかろう』
「誓いの証に、実りの苗をお渡しする」
『承った』
ガチガチに緊張しながらも、ディーンから教わった古風な挨拶を交わした風狼が、赤玉果の苗木と共に森の方へ去ると、どっと噴き出した額の汗を拭ったコールズは、ドサリと座り込んでしまった。
「「リーダー!」」
「アビィ、エルマ、今はコールズを見る時じゃない」
「っ!わかってるっす!」
「す、すみませんっ!」
ディーンの声に、即座に自分たちの役目に戻る、斥候のアビィと弓士のエルマ。
パーティーの中でも特に目が良い二人は、飛び去った風狼が苗木のために穴を掘っている場所までの距離を目算する。
「100メルト……だね」
「うん、100メルトっすね」
「それだけあれば、依頼の薬草をしっかり探せるわね」
「あの苗木は、他の木と同じく風狼たちの所有になったから、槍で触れる距離まで行くなよ」
「「「「「了解」」」」」
「りょ、了解」
コールズの腕を引っ張り立たせたディーンは、『山脈の風』全員の顔を見て、小さく頷く。
「依頼の薬草4種類を規定量採取し、全員でギルドまで帰る。今からが本当の昇級審査だ。手抜かるなよ?」
「「「「「「了解!」」」」」」
メルト:地球の『メートル』と同じ長さ。
アビィとエルマ:ヒロインではない。
エ「ガーーーン!」
ア「ヒドイっすよ!」
いや、最初からヒロインちゃんは決まってるんやで~