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特級採取人と暁の白龍  作者: 烏瓜
第1章 旅暮らしの採取人
1/3

『乱喰い歯』

長年、頭の中でチマチマと編んでいた、初の長編物語です。

途中に解説文が入ったり、パーティー名がちょっとアレだったりしてますが、荒ぶる設定&解説好き魂(不滅の厨二)のせいだと思って、生暖かい目で見てください。


【大ピンチ!!】予約掲載設定がど~~~しても変更できません!見切り発車どころか、明後日の方角にある洞窟に しまっちゃったのに、空から落ちてくる状態です(混乱)

緊急措置として、3話まで書きました!(羞恥心泣き)

2話・20時10分、3話・20時20分

スキル→魔法に変更しました(2024・8/18)


「よし、あの丘の上で休憩にしよう」


 鈍色にびいろに光る使い込まれた軽鎧を着た剣士の男が、後に続く仲間に声をかける。


「お~!こりゃあ眺めがいいな~!」

「ず~~~っと岩がゴロゴロ続くから疲れた~~!」

「『斥候泣かせ』は伊達だてじゃなかったッス……」

「この岩場で魔法が使えない・・・・ことを知らなかったら、酷い目にあってたわね」

「おれ、もうトカゲをバカにしない……」


 剣士のリーダーに続いて丘に登ってきた、槍士・弓士・斥候・魔法士・盾士のC級探索者パーティ『山脈の風』


「近くに魔物がいないのは確認したし、ついでに昼飯にするか?」

「「「飯ーーー!!!」」」

「「「お願いします!!!」」」

「了解」


 『山脈の風』に続いて登ってきたのは、彼らを此処まで案内してきた単独ソロの探索者。

 一見、人当たりの良い穏やかな雰囲気の青年だが、鋭く速い攻撃と魔力の高さ、幅広い知識の深さを知る者は少ない。


 『山脈の風』のリーダー・コールズも「貴重な採取物が得意なヤツ」程度の認識だったが、斥候より先に魔獣の接近を察知し、魔法士より早く正確に魔法を放ち、剣士である自分や槍士よりも軽い斬撃で魔獣を倒す。

 更に、荷馬車がそのまま入りそうな容量の《収納箱アイテムボックス》。


 彼の実力の一端も知らず、「探し屋」「拾い屋」と馬鹿にして酒場でくだを巻いてる低級止まりの探索者どもを殴り倒した後に、自分を殴りたくなったのは内緒だ。



  ▽・▽・▽・▽・▽



 アルダマン帝国の北には、分厚い石灰岩の地層から成るゼトニウラ台地が広がる。

 水源地になるような小川や池も無く、薄い土壌は石だらけで農地には適さず、背の高い木も育たない、家畜も足場と植生の悪さから小型の山羊ヤギしか飼えない。

 しかも、地面から生えたような大小の石灰岩が無秩序に散在し、特に巨岩が乱立する奥地、通称『乱喰い歯らんぐいば』は天然の迷路となっている。

 厄介なことに、石灰岩の台地全体が微量の銀晶石ミラリスカを含むため、例え初歩的な魔法でもうっかり放てば、何処に跳ね返ってくるか判ったものではない。

 魔力を広げるように使用する探索系魔法も乱反射するので、《地図マップ》や《索敵》などは、中級以下は役に立たない。

 魔法防御を施した防具や装身具には欠かせない特性を持つ貴重な銀晶石も、ここでは敵となる。

 探索者ギルドを含む全ギルドから指定された難易度は【B】

 『魔法士封じ』『斥候泣かせ』 と呼ばれる場所の一つである。



  ◆◇◇◇◇◇◇◇



 案内役の青年が手早く用意した鳥豆と干し肉のスープ、丸パンを平らげ、切り分けた赤玉果リンゴも食べ終わり、『乱喰い歯』の目の前まで移動した一行。

 巨岩の陰に入ると、「気分のいいものじゃないが、確実に理解できるから」と、青年が用意していた麻袋を取り出す。



 C級探索者としての矜持ではあったが、コールズは叫ばなかった自分と仲間たちを誉めたくなった。



  ◆◇◇◇◇◇◇◇



「……で、これが目印の旗だ。少しでも迷ったと感じたら、岩に上って素早く位置を確認してくれ。注意点を繰り返すが、岩の上を移動しない・岩トカゲに手を出さない・中心部の森は入らない。この3つを必ず守ってくれれば、全員無事に帰れる」

「ああ、了解した」

「それで【B】指定なのかよ~、移動が楽になったと思ったのに~」

「いきなり空から襲われるとか、恐すぎッスよ!あんなの誰にも見えないッス!」

「おれ、トカゲは凄いって見直した……」


 青年から聞かされたこの『乱喰い歯』の特異性に、最初は半信半疑だった『山脈の風』も、実際に目の前で見てしまえば納得するしかなかった。



  - 四半刻前 -



 麻袋から、ここまでの道中の森で狩った小型の魔獣を巨岩の上に投げ乗せ、岩影で待つこと10秒ほど……


「来るぞ」


 魔獣の死体ではなく、その周りを窺っていた青年が言い終わると同時、瞬きのうちに魔物の死体が姿を消す。

 そっと青年が指差す先の空には、黒い小さな点。


「骨喰い鳥だ」

「あれが……!」


▼骨喰い鳥:山岳地帯に生息。ハヤブサより速く急降下・急上昇し、獲物を狩る。上空から獲物を岩に投げ落とし、砕いた骨から好んで喰う。討伐難易度:B


「骨喰い鳥は『乱喰い歯』周辺で狩りをしないんだが、獲物を砕く場所として常に数羽で縄張りにしてるんだ。岩トカゲの子どもは小さすぎて狙わないが、親トカゲくらいの獲物が岩の上にいれば、排除するために必ず狩りにくる」


  ゴギャッ!!

「「ひいっ!」」


 骨喰い鳥が岩に投げ落とした魔獣が砕ける音に、弓士と斥候が小さく悲鳴を上げる。

 獲物を食べに舞い降りてきた骨喰い鳥は、ハゲタカに似た姿だが、体は牛系の魔獣ほどもある。


「あのデカさで、あの速さかよ……見たか?角ウサギをイッキ飲みなんだぞ…」

「あたい、ウサギじゃなくて良かったッス……」

「あたしでも丸飲みされそうだよ……」


「……よし、旗の固定完了。さ、今のうちに進め進め」


 再び上空へと骨喰い鳥が飛び去った後、背丈ほどの細長い岩に旗竿を縛り付けた青年は、呆然とした槍士と、パーティ内でも小柄な斥候と弓士を促して、巨岩の隙間から『乱喰い歯』の迷路を先導し始めた。

 時折、小さな岩に足をかけて跳び上がり、目印の旗と岩トカゲたちを確認しながら、目指す中心部へ進んでいく。


「さっきから旗の位置を確認してるだけかと思ってたが、岩トカゲを骨喰い鳥の見張り役にするんだな」

「ああ。『乱喰い歯』から無事に帰還する為の注意事項その1と2だ」

「あの……注意その3って、もしかして、中心部の森だけ、依頼ランクが【S】の理由……」

「ここの奥に出るヤツって……」

 コールズと話す青年に、恐る恐る小声で訊ねる魔法士と盾士。

 青年は二人の青くなった顔色を見ると、真剣な眼差しで指を1本立てて口に当てると、僅かに頷く。

 そして盾士の後ろで、げっそりしながら歩く他の3人に聞こえないよう、静かな声で質問に答えた。

「中央にある森は風狼フウロウの巣だ」

時間の表現:一刻いっこく→2時間、半刻→1時間、四半刻→30分。1日は十二刻→24時間。秒は地球と同じです。


斥候:あたいッス娘。パーティーで1番小柄で大食い。

盾士:パーティーで1番デカいけど最年少。切れた尻尾が動くトカゲが嫌いだった。

岩トカゲ:成体の全長は約1メートル、全身が灰色~茶色、オスは頭が苔色。敵に襲われると警戒の鳴き声を上げ、数時間は隠れてしまう。串焼きにすると美味いが数が捕れないので、隠れた珍味。

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