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マリーの好きな人



マリーの用意した夕食を食べ、グラディウスが側妃の部屋に来たところで、エーレはマリーの部屋に向かった。

待っていてくれたマリーはエーレの為に、石鹸や新しいブラシを用意してくれていたようだった。

エーレは感謝しながら、マリーと連れ立って塔の地下にある大浴場に向かった。


浴場の扉を開くと、花の香りと石鹸の香りがする湯気が押し寄せてくる。

離れの幽霊塔のような建物だが、何故か浴室だけは豪華で貴族風だ。

大理石と清潔感のある石像がピカピカと輝いている。


「ふあああ」


少しばかりの罪悪感を胸にしこりのように残しつつも、エーレはその癒しの雰囲気に思わずため息をついた。


「さあ、早く体を洗って、お湯を楽しみましょう」


微笑んだマリーに頷き返し、テキパキと体を洗って髪も洗う。

マリーが用意してくれた石鹸はとても清潔感のあるにおいがして、一瞬で気に入ってしまった。


モコモコの泡を洗い流して、すっきり綺麗になったところで2人はお湯に飛びこんだ。


「ふう~」

「ふう……」


顎まで温かいお湯につかって極楽の溜息をつく。

お湯は偉大だ。

そして寛大だ。

なんというか、疲れがお湯に溶けてなくなっていくようだ。


「旅の薬師の私は、お湯に浸かれることは本当に稀なんですよね」


「私だって、この大浴場を使おうと思ったことさえエーレさんが来るまではなかったんですから」


ふう~。

どちらともなく幸せの溜息をついた。


……ああ、旅もいいけど、お湯もいいよねえ。

ほんと、今までの疲れも全部忘れちゃうなあ。

このままお湯の中で寝たいなあ……。


「ねえエーレさん、折角ですから恋の話とかしましょうよ」


まどろみかけたエーレを現実に引き戻したのは、隣でチャプチャプしているマリーだ。

真面目だった第一印象からは想像できない程、生き生きとした女子顔になっている。

マリーは目をキラキラさせて、こういう話が好きなのだと語った。

仕事を離れれば、彼女も年頃の女の子だ。


「エーレさんって、どういう男性が好きなんですか?今までずっと旅してきたんですよね、その間に誰かといい感じになったとかなかったんですか?っていうか、恋人とかいたんですか?」


「え?マリーさん興奮しすぎで何言ってるか分からないです」


「こんなに可愛いんだから、愛の告白とかたくさんの男性にされたのではないですか?」


「えっ?ううん。そんなにされたことないし、恋人もいたことないです。まあ、私は根無し草ですから」


「あらあ……勿体ないですね」


「そういうマリーさんはどうなんですか?」


「ふふ。私、こう見えて常に恋をしていたい人なんです」


「へー。今は誰に恋してるんですか?………………あ、グラディウスさんとか?」


ふふふと顔を上気させて笑うマリーの顔を見て、エーレはふと先ほどのやり取りを思い出した。

エーレには乱暴なグラディウスがマリーには素直に謝ったり、風呂に入るように気遣ったり。

マリーは彼に対して優しい顔で笑ったり、疲れているだろうと気遣ったり。


……王子の身分差の恋って可能なのかどうかわからないけど、グラウディスさんの態度、マリーさんの前だとちょっと違うよね。

これって、グラディウスさんがマリーさんを気になってるってことなのかな。

じゃあマリーさんが別の人を好きだったらグラディウスさんの片思いで、マリーさんがグラディウスさんを好きだったら両思いってことか……。




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