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1 私、追放されてしまった!?



 「今日で君はクビだ。マイカ」

 「え?」


 信じられない。その言葉を聞いた時自分は聞き間違いだと思った。

 話があると仲間に呼ばれて個室に来たら言い渡された追放宣言。


 「え、嘘でしょルイス? 私をクビにするって何で?」

 「それは……あなたが……弱いから」


 困惑する彼女に答えたのはルイスの隣にいる巫女のキノウチ。

 巫女である彼女はこのミラレス学園でAランクに所属している学生だ。入ってから一年足らずでこの快進撃。

 学園史上()()()の速さでAランクになっており、みんなから伝説扱いされている。


 「ああそうだ。キノウチの言う通りマイカは弱い。お前この一年ずっと(最低)ランクだし、俺たち『黒炎の翼』には相応しくないんだよ」


 そして私にクビの報告をした目の前のソファーに座っている男。

 学園史上()()()の速さでAランクになった期待のルーキー。


 ルイス・ハリスガン


 彼の冷たい目がこちらを射抜く。


 「くくくくっ………」

 「ふふふふふ………」


 ルイスとキノウチの後ろに立っている奴らがこちらを嘲笑う。

 腕を組みながら肩を揺らしている大男、戦士アイギス。

 腹を抱えながら堪えるように笑う際どい服を着た女性、盗賊メリーア。

 彼ら達もルイスほどではないが最近勢いがある学生だ。


 「そうだぜ、俺たちは最近絶好調のAランクパーティ! もうすぐでSランクになる俺らにはお前は要らないのさ」

 「私達ももう少しでAランク学生になるのにあなたはずっとEランク(底辺)、いい加減私達の足を引っ張ってるってわからないのかしら?」


 既に私の追放はパーティーの中で決定事項らしい。

 

 「みんなの言う通りだ。お前は魔法使いのくせに魔法の才能がほとんどない。四大属性も少ししか使えない奴が今までいられた事自体奇跡なんだよ」

 「だ、だけど私は頑張ったよ! パーティーの身の回りの整理は私が全て請け負ったし、遠征先の模擬戦とかは私があらかじめマッピングしてーーー」


 そうだ、私は本当に弱い。誰でも当たり前にできる低級魔法も私三回使えば息切れが起こる。

 だからメインではなくサポートに徹した。四人が戦いやすいようにモンスターの勉強をとことんして成績上位になったり色んなことをした。

 

 そう説明している私は口を閉ざした。

 ルイスの剣が私の頬をすり切ったからだ。


 「いい加減出てけよ……」


 尻餅をついた私に怒りの目を向ける彼は剣を投げていた。

 邪魔者だと言わんばかりにこちらを威圧してくる。

 

 「ルイス……」


 幼馴染だった彼だけは私を見捨てないと思った。

 昔一緒にS級になろうと誓ったあの時の風景が、音を立ててガラスのように崩れていく。

 才能が無くてもルイスとその仲間達の為に汗水垂らして頑張って来た。今はその意味も見失って何をすればいいのかわからなくなってる。


 「ッ………………!!」

 「あ……行っちゃった」


 もういい、絶交だ。


 私はすぐさま後ろに走り出し、扉をドンッ! と開けて外へ走っていった。

 後ろからアイギスとメリーアの笑い声が聞こえたがどうでもいい。


 「私は……私は…………!!」


 今まで要らないと思われていたことに気づけなかった自分の間抜けさと、弱さに今更後悔して涙が溢れてくる。

 



 辛い。



 

 私はどうすれば、




 どうすればーーーーー





 こうして私はS級パーティーから追放された。









 「はぁ…………私どうすればよかったのかな」



 私は木を背中にしておやま座りをしていた。

 走り続けた私はいつの間にか学園を抜けて近くの森まで来てしまっていたのだ。

 気づいたら周りは木だらけ。間抜けな事に私は迷子になってしまった。

 

 「ここで悩んでもしょうがないや、とにかくここから出なきゃ」


 しょんぼりして座っていた私は立つ。泣いてるだけでは何も変わらない。

 物事変えるには行動あるのみ!

 そう心の中で叫んで歩き始める。周りは霧に包まれていて視界が悪い。普通ならどこを通っているかさえも分からずいつ出られるかと嘆いてしまうだろう。


 (でも私にはこれがある。よかった〜自暴自棄になってもこれは離さないで)


 左手を見ると長い木の枝みたいな杖を持っていた。

 魔法使いなら誰でも持っている武器であり、昔からの私の相棒。


 「(とも)せよ輝き。ライト」


 その杖に念じながら私は下級魔法を唱える。

 すると杖の先端から白い光の玉が出てきて、周りを見えやすくする。

 私が使える数少ない魔法で、こういった迷子の時に役に立つサポートタイプの魔法だ。


 「それじゃあ出発しんこー!」


 そう元気よく叫び、パサッ、パサッと落ち葉を踏む音を鳴らしながら前に進んでいく。


 

 (でもここどこだろ〜……こんな霧が濃いところ聞いた事ないんだけど)


 

 歩いてから体感時間で30分。

 

 相変わらずゴールが見えない迷宮の森を目の前に、マイカは頭の中で現実逃避(別の事)を考えていた。


 少なくとも学園がある町の近くに自分はいるはずだ。自暴自棄になっていたとはいえそこまでの距離を走ってはいない。

 学園でも体力テストは下から数えた方が早いくらいだし……。


 (グフッ、自分で思ってて心にダメージが……)


 自分の情けなさを思い出して無駄に落ち込んでしまう。少し猫背になりながらとぼとぼと歩いていると。


 「おいテメェ……! 俺から逃げるな」

 「きゃっ! 気持ち悪いやめて!」

 (人!?)


 私以外の声が聞こえて歓喜したが、様子がおかしいと近くの木に隠れた。

 一人で迷子な私に脱出仲間が出来ることは精神的に余裕が出るが、男の荒ぶった声を聞いて駆け出したい心を止めて様子を見る。


 (って! 犯罪現場の直前じゃん!?)


 見えた風景には組み付いている男と組みつかれている女の子。だがそこにいちゃついている雰囲気はなく、どちらかと言えば女の子が嫌がっている。

 これは良くない。とても良くないわ!


 そう思った私は急いで木から出て、杖の先端を男に向ける。


 「やめなさい! 魔法で吹っ飛ばしますよこのドスケベケダモノ!!」

 「はぁ!? いいところで邪魔すんな!!」


 こちらに気づいた男が組みつけをやめて襲い掛かろうとする。

 だが当然私は何もしないわけがなく、


 「火の玉進め! ファイア!!」


 火属性の下級魔法を詠唱した。杖の先端に元々あった白い光がフェードアウトしていき、代わりに小さい炎の玉が何もないところから出現する。

 

 そしてそれを()()した。


 弾丸のように発射されたそれは男の横を一瞬で通り過ぎ、何もない地面に当たって煙が立つ。

 いきなり炎の玉に襲われた男は恐れてそのまま尻をつく。


 これが私の長所。

 使える魔法が下級しかない代わりに上手に発動することができる。

 他の人間より何倍も早く打つことができて、同じ魔力量で並の倍以上の威力を発揮することができる。

 ……ただ私の場合、魔力総量が雑魚すぎて、長期戦メインの遠征では全く活躍できなかったし、ルイスクラスになれば私より上手に魔法を扱える。

 このように優勢を保っているが彼女の心情は……。

 

 (きもいきもいきもいきもい、早くいけいけいけいけいけ消えろ消えろ消えろーーーーー)



 ものすごくテンパってた。


 元々争い事が嫌いな彼女はこういった悪者退治にはあまりなれていない。


 「ひっ……。良く見ればお、お前。ミラレス学園の生徒じゃないか……!」


 私が着ていた服を見て気づいたらしい。王国で名高いミラレス学園の生徒を敵に回したこと頭が一杯になって、ガクブル震えている足まで見る余裕はなかったようだ。

 良かったよかった。


 「ひ、ひぇーーーー!!!」


 マイカを恐れて情けない声を出しながら逃げていく男。その男が視界から消えるまで逃げ続けたことを確認して、女の子に手を差し伸べる。


 「だ、だいじょうぶでずが……?」


 ヤバイ、カッコイイシーンがガクブル震えてるせいで台無しになってる!?

 今日は嫌なこと続きだ! もうこれ以上の醜態は晒したくない!


 「はい大丈夫です。……その、そちらこそすごく震えてますけど大丈夫ですか?」


 いいなこの子! さっきまでやられそうだったのに私のことを心配してくれて。

 落ち着け私! こういう時は深呼吸だ。

 そう思って何回も深呼吸を繰り返す。


 「すぅ〜〜〜……ハァ〜〜〜……大丈夫だよ! それより怪我はない?」

 「は、はい。あなたのおかげで何とか逃れました」

 「それは良かった」


 三回ほど深呼吸を繰り返しようやく落ち着いた私は女の子に、怪我がないか確認する。どうやら大ごとには至ってないようだ。しかも心の方もこの様子だと大丈夫そうだ。ものすごくタフだな。羨ましい。


 「ふぅー……」

 『ギャ!?』


 そう安心したのも束の間、人の声にしてはならぬ悲鳴が聞こえる。そして聞こえた方向はさっきの男が逃げた所。

 

 (この声は、さっきの犯罪野郎!)


 すぐさま何事かと声で襲われた人を特定しながら、悲鳴の聞こえた方に杖を構えた。

 

 そしてそこには、恐ろしい()()がいた。


 「ヒッ!?」


 そのあまりもの、おぞましさに短い悲鳴をあげてしまう。だがこれを前にしたら誰だって同じ反応をしただろう。

 目の前に現れた化け物は黒くて不恰好に丸かった。

 だが不気味にさせているのは丸のあちこちから生えている複数の足や腕。それらが何の規則性もなく生えている。

 強いて言えば地面の方に付いている、丸から生えているやつよりは短い四つの腕(足)だけ規則性はあるだろうか?

 そして最後に黄色い目と口をした人の苦しそうな顔。それが遠くにいる私達を見つめていた。


 (あれまさかこの魔物って)


 学園のホームルームで聞いたことがある。

 街の近くにある森には近づくな。

 その『禁忌の森』の中にはおぞましい魔物がいて、強い冒険者でもすぐに食われてしまう化け物がいる。

 それは見るだけで吐き気を催すような姿をしていて、決して森に入ったやつを外には逃がさない。


 「準A級モンスター『マガイ』!」

 「ゔぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」


 声にならない声をあげて襲ってくるモンスター。

 マイカはすぐさま女の子を抱き上げて走り出した。

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