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(その日の夜、またあの夢を見た。真っ白な何もないところで、俺が一人ぽつんと立っている。

 目の前にはあの人だかなんだか分かんないやつだ。見た目は人で、俺と同じくらいか、少し上の年に見える。身長は多分同じだ。俺が175センチだから、目の前のコイツも結構背が高い。体型はダボっとした白いもの……古代ローマ人とかが着ていそうなものだ。

 そういえば、コイツいつも同じの着てるな)

「今夜は随分見つめてくれるじゃあないの。どうしたんだい?」

 別にどうってことはねぇよ。アンタ、いつも同じ服だよな。

「服なんてどうでもいいからねぇ。全裸でもいいけど、思春期の君には刺激が強いんじゃないかな?」

 ……俺は女の体で興奮しねぇけど。

「じゃあ男の、さらにもっと言えば大好きな人の体だったら? 忘れてるかもしれないけど、ここ君の夢だから、君が想像すれば顔だって変えられちゃうよ?」

 やめろ! アイツだけは穢さねぇって決めてんだよ!

「あ~そうなのごめんね? どうでもいいけど。……そういえば明日、ついに会えるみたいだね?」

 は? 明日?

「転校生ちゃんだよ~! どんな子だろうね? 彼女は君に一体何をもたらすのかな~?」

 どういう意味だそれ。

「教えな~い! でもねぇ、彼女は絶対に鍵になるよ。それにあの性格なら、自ずと……。おっと、喋りすぎちゃったな」

 なんだよ、また寸止めかよ!

「だってボクが余計に喋っちゃったらつまんないからねぇ!こういうのは君が解き明かすことに意味があるんだよ~」

 ほんと何なんだよアンタ……。

「もうすぐ朝だし、この辺までだねぇ。じゃあの!」

「おいアンタ!!」

 最後に声を出して、目が覚めた。

 また今日も、アラームが鳴るよりも早く起床した。不愉快なのに二度寝はできないし、そもそもアラームが鳴るより早くと言っても予定時刻の数分前程度なので、仮に寝たとしても遅刻確定になってしまうだろう。

 そうすれば起きるしかない。ああ今日もシーツ洗濯か、と思いながらいつものように体の確認をすると、案の定びっしょりだった。

 たまには夢を見た日でも汗をかかずに起きたいなと思いながら、シーツをはがして、洗濯済みの物と交換をした。


「おはよ!」

「はよ」

 いつものようにジョウと挨拶を交わし通学路を進む。昨日小野木から転校生が来るという情報を得たせいか、ジョウは早速転校生の話題を振ってきた。

「今日来るらしい転校生ってどんな子だろうな~! 超能力者だったりすんのかな!?」

「いや、案外見た目美少女の宇宙人かも」

「実は女装男子とか?」

「それはないだろ」

「女性声優みたいな声だったら分かんねぇだろ! 金髪青目で背が低いかもしれねえし、逆に背が高くてちょっと髪が長いとか!」

「お前絶対進○の巨人昨日見ただろ。大好きだもんな」

「よくわかったな!」

「いや分かりやすすぎだろ。アル○ンとハ○ジだろ?」

「流石イヅル!」

「これくらい余裕だぜ」

「ま~冗談はこれぐらいで、現実的に見た目ショートヘアかロングだったら?」

「ロングだったら最高だな。黒髪ロングヘアは目の保養だ」

「イヅルは本当にロングヘア好きだな!」

「ジョウは?」

「俺?」

「どっちが好みだ」

 昔からこいつは異性に対する好みをあまり言わない。聞いてもはぐらかされてしまうことが多い。

 しかし今回は割と真面目に答える気なのか、顎に手を当ててう~んと悩ましい声を上げている。

「俺は正直見た目じゃ選ばねぇけど、どっちも好きだな。まあでも、強いて言うなら短い方かな。跳ねる感じが可愛くねぇ?」

「そうか?」

「そうだ!」

 俺がもし女でジョウの幼馴染だったら、これを聞いたその日にはショートにしてただろうなと思う。何ならこの話題教室で振ったらクラスのほとんどの女子が次の日登校したらショートなんじゃないだろうか。

 それでも見た目じゃ選ばない、という言葉がグッとくる。中身を余すことなく愛してくれる男なのがよく分かる。付き合える女子はさぞ幸せだろう。残念ながら今のところ告白数が100を越えても未だにその中でジョウがOKを出す女子は存在しないが。

 ちなみに俺がロングヘア派なのは嘘ではない。もっと言うと黒髪ロングで黒いセーラー服が似合う大和撫子系は何時間見ていても飽きない。

 性的興奮を正直女性の体で感じることは出来ないが、普通に二次元の女の子は可愛いから好きだ。

 その後も学校に着くまでくだらない話をした。教室に入ってからもクラスメイトは転校生の話題で持ちきりだった。

 俺とジョウが自分の席に座ると、既に着席していた小野木がスマートフォンから目を離し挨拶をした。

「おはよ~幼馴染組!」

「はよ!」

「はよ。……って、何だよ幼馴染組って……」

「幼馴染だからコンビタグ的な?」

「お前まさか……pのつくあれとか笑顔な動画とか見てるのか……?」

「何のこと??」

 トウコよくわかんない~! と言いながら小野木はあからさまに目をそらした。ここへきて腐女子説の信憑性が増してきた。いくら俺の幼馴染の顔が良いからってそんな近い距離の人間で創作してんじゃねぇ……!

 けれどもしそうなるなら一つだけ言っておかねばならないことがある。俺は小野木の耳元に小声で伝えた。

「いいかよーーーーーく聞け、俺とジョウならジョウは俺左ジョウ右の左右も相手も固定だからな、これだけは忘れんな」

 意味が分からないければポカンとして終わりだろうと思い伝えたのが、小野木は目を丸くすると今度は嫌そうな表情を浮かべた。

「は……!? あたしにはあたしの好みがあるんだけど!?」

「俺は目つき悪くてちょっと生意気そうな奴は右なんだよ!」

「イヅル君の価値観をあたしに押し付けないでよ! ジョウ君は光属性なんだから左でしょうが!」

「なッ!? お前ジョウの良さ分かってなさすぎだろ!!!」

 ちなみにこの会話はあくまで小声で繰り広げているためジョウ本人にも周りにも聞かれていない。ジョウに至ってはこちらには見向きもせず、呑気にソシャゲの周回をしている。

「……この話は一生埒開かないからもうやめようよ。あたしたちはそれぞれの畑で似て非なるもの栽培してるんだからさ……」

「そうだな……。悪かった、急に変なこと言って」

「気にしないで」

 謝罪をして席に戻るとジョウは俺の方を向いて二人とも結構仲良しになったんだな! と笑顔を見せた。

「「仲良くないっ!!」」

 小野木と俺が声をそろえるのと同時にチャイムが鳴った。ジョウはまたそれでけらけらと笑っていた。

 クソっ、と内心悪態づいたが、その笑顔を見たらどうでもよくなった。

 どうでもよくなったら、今度は紹介されるであろう転校生に心躍らされるのであった。

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