3
クラス替えは今年もジョウと同じクラスだった。
ジョウはまた一緒だな! と大喜びしていて、俺もついつい頬が緩む。
しかし問題はここからだ。
二人で新しい教室へ向かい開きっぱなしのドアを通ると既にいたクラスメイトはわぁっと声を上げ、女子に囲まれる。
(そりゃそうか。S商の王子とか言われてるような男だしな、コイツ……)
分かってはいるが気分は良いものではない。大事な幼馴染が困るのは勿論、こういう時大抵俺は初見で「えっ? 陰キャと超陽キャとかどういうこと?」みたいな反応を八割くらいの確率でされる。別に男女でもなくて同性同士なのに、何がいけないのだろうか。
それにジョウは自分が好奇の目にさらされることをあまり良いことだと思っていないらしく、こういう時は必ず俺の方を見て苦笑いをする。そこから俺は目だけで黒板を見た。
するとジョウは内容が分かったのか、ジョウは小さく頷くと元気よく周りに挨拶を交わすと、うまく囲いを抜けて黒板へ向かう。俺もそれにしれっと続く。
二人で黒板を見て座席を確認する。こ、これは……! 俺の席は……!!
「ヨッシャ……!」
思わずガッツポーズをするとジョウは何思いっきりガッツポーズしてんだ? と尋ねる。
「バッカお前、窓際で一番後ろの席と言えばラノベの王道だろうが! やべぇテンション上がる!」
「それもそうだな! ……って、イヅル俺の席の後ろじゃん! やった!」
「やったぜ!」
思わずハイタッチをする。基本的に運の悪い俺だが、なぜだか教室の座席やバスの席などは個人的にいい席が当たることが多い。
今回もきっとそうだろう。俺の隣は空席だがジョウの横は小野木と書いてある。クラスが一緒になったことはないので知らないが、おそらくは良い奴だ。
黒板前ではしゃぐだけはしゃいで席へ向かう。ジョウの隣は既に座っている様子だった。そこで俺は身構えてしまった。
(小野木って女子だったのか……)
今までジョウが女子の隣の席になることは俺の知る限りあまり多くはない。けれど、その多くないうちの回数で隣になった女子は一度はジョウに告白するという謎ジンクスが生まれているので、ここは警戒しなくてはならない。俺がまた告白現場を見てしまったら、ジョウの体調が悪くなってしまうかもしれないし、それは俺としても好ましくない。
そんな俺の思案をよそに、ジョウは小野木に挨拶をする。待て、せめて俺が席に座ってからにしてくれ。
「お前が小野木? よろしくな、俺は楠木ジョウ!」
「……えっ?」
小野木が元々猫の様に大きく丸い目を更に丸くさせる。琥珀色の目は揺れていたし、栗色のボブヘアもぶわりと広がったように見えた。
ジョウもあまりされたことのない反応に少し戸惑っているようだ。
「うん?」
「あ、ああ! うん、よろしくね。あたしは小野木トウコ」
「おう!」
……何だ今の。えっ、何? マジで何?
挨拶だけで落ちたっていうのか!? そんなバカな! ジョウぐらいのイケメンならそりゃあるかもしれないがやばいだろそれは! チョロすぎないか!?
思わず地団太を踏みそうになるが、ここはひとまず我慢だ。冷静に、冷静になるんだ俺。多分あれは惚れたんじゃない、驚いたんだ。そうに違いない。目を丸くしていたし。
しかしそれにしたって、なぜ小野木は驚いたんだろうか? ジョウは校内の結構な有名人だし、クラスが離れていても知っていると思うのだが。
今一つモヤモヤが晴れないが、もう小野木は俺もできるだけ話しかけて観察するしかない。なんだか気になってきたし。
「俺は朽木イヅル。よろしく」
「うん、よろしく!」
さっきから後ろにずっと立っていたのでそのまま流れで挨拶できた。そして着席する。
俺に対しては驚きも緊張もないらしく、元気に挨拶を返してくれた。
……やっぱり一目惚れ、なのか?




