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「前にああは言ったけどさぁ~……。いつまで続けるのだい?」

 ……アンタまたそのことか。何の話か分かんねぇし、アンタが誰かも未だに言わねぇし……。

「誰だろうね? そもそも、誰でもないのかも?」

 はぁ? 誰でもないって、人の姿してんじゃねえか。

「人の姿してるから人だって? バーチャルな仮の姿で犬だったら、元の姿や魂が人間だとしても、君は現実でも犬だって言うのかい?」

 そ、それは……。

「だろ? 現実世界ならともかくとして、こんな空間のもの、信じるべきじゃあないよ」

 なんかムカつくなアンタ……。

「まぁそう言うなって。それでさぁ、いつまで続けるの?」

 前からそういう質問するけどよ、何のことだよそれ。続けるって、何をだよ。

「アレ? まだ分かんないの?」

 分かんねぇから聞いてんだよ。茶化すな……。

「まぁいいや。その様子だとまだ彼女にも遭遇していないんだろう。時が来れば分かるよ」

 ……そうかよ。それで、結局アンタは何なの?

「それもいつかは分かるよ。今日もこの辺でバイバイかな~」

 あ、おい! まだ話は……!

「じゃあの~!」

 おい! 待てよ……!

「待てったら!!!」

 そう叫んだ瞬間、俺の視界に飛び込んだのは、いつも通りの私室だった。

カーテンの隙間から、朝日が差し込んでいる。

 枕元にあるスマホのアラームが朝を告げる前に、それは止めた。音が鳴らずとも、もうとっくに目は覚めていた。

「またか……」

 自分の体を見ると、また全身汗をかいていた。こうも頻繁に汗びっしょりだと、シーツも替えて洗濯しなくてはならないので面倒くさい。

 中学生になったあたりから、不思議な夢を見ている。真っ白なところに、人っぽいよく分からないナニカが俺に話しかける夢だ。

 そしてこの夢を見ると、寝起きは必ず大量の汗をかいている。はじめこそ驚いたものだが、今では慣れ切ってしまっている。

 ベッドから降りて替えのシーツを手際よく付け替え、部屋から洗面所へ持っていく。洗濯機に放り込んで乾燥タイマーまでセットしてしまえばもう終わりだ。

 その後はシャワーを浴びてから身支度を済ませて、前日に適当に買っておいたパンをトーストして牛乳を飲む。コーヒーとかであればかっこよかったかもしれないが、まだ飲めない。俺の舌がまだ追いついていないので。

 食後皿洗いをして、まだ少し濡れている髪の毛を乾かす。制服に着替えたらヘアセットをする。髪型を整えるのは早起きが出来たらやることにしている。ただ高校生になってからというもの、あの夢を見ることが多い。となると、必然的にセットをする機会が増えていた。

 あとは制服のジャケットを着て、カバンに必要な物だけ入れて準備完了。部屋の戸締りを確認して、鍵を閉めれば終わりだ。

「始業式か……」

 誰に聞かせるでもないけれど、自然と呟いていた。今日から俺―朽木イヅルは、高校二年になる。

 両親は健在だがほぼいないようなものだ。中学生くらいのころから二人とも仕事が忙しくなってしまって、それぞれが海外を飛び回っている。国籍は日本だが、日本に帰って一息つく間もないほど忙しいので、家自体はそのころから俺の一人暮らし状態となっている。

 家族三人で住むはずだった3LDKのマンションは、一人には少し寂しいが、今のところ幽霊が出たわけでもなければ、何なら私室の推しのフィギュアが傍にいてくれているので問題ない。

 そろそろ時間だから家を出なければ。アイツがそろそろここに寄るころだ。

「いってきます」

 誰もいない部屋にそれだけ残してドアを閉めた。

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