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「お待たせー!」

「お待たせ」

「ずいぶん長かったなー。大丈夫か? 本当は体調悪いとか?」

「平気平気! ちょっとアザミちゃんとはしゃいだだけだから!」

「おーそうか、良かった!」

 ジョウがいつもの笑顔を小野木に向ける横で、一木は少し悲しそうな顔をしていた。

 一木と小野木の二人が声を合わせてボウリング場のテーブルに戻ってきた。

 メイクを直してくる、と一木が少し声のトーンを下げつつ、二人分の荷物を持って俺とジョウのもとを離れて大体三十分といったところだろうか。

 ……メイク直しってすげー時間かかるんだな。世の女性は大変だ。

 などと思った俺だが、メイク直しが時間がかかったことには一つ心当たりがあった。

 おそらく、ジョウとの先程の会話を聞かれている。

 小野木が俺の恋敵なのは承知しているし、俺があの流れを聞いてしまった側ならどうにもやりきれず泣くだろう。

 しかも遊びに来て、あそこまで

 気合十分な服装までしているのだ。ダメージが大きい、で済まされることではきっとないだろう。

 ……一木がジョウに向かって悲しそうな、それからどこか悔しそうな表情を浮かべていたのも納得が行く。

 これから小野木はどうするんだろうか。本来なら二手に分かれて、と企てていたのだろうが、おそらく今はもう違う案があるのだろう。

 ということは一木にばくだん焼きを奢るのも無理だろうか。

 そうこうしているうちにまたボウリングが開始された。そこからまたしばらくすると、俺はジョウがトイレへ行き、小野木がボールを交換して投げるタイミングに合わせてこっそり聞いてみた。

「なあ一木」

「なに?」

「その……。小野木さ、ジョウとのことどうするんだ?」

「……どうしてそんなこと聞くの?」

「だって、その……。言い難いが、多分泣いてたから戻るの遅くなってたんだろ? 俺たちの会話も、聞こえたんだろ?」

「そうだけど、それが何? トウコのこともう少し考えたら? どうして聞いて泣いたのかは理解しているんでしょ?」

 一木の目が、転校初日のような冷たさを見せる。

 同じ色で変化なんてないはずなのに、その一木の目は柔らかい昼間の森の色から、夜の恐ろしく、暗い森の色に見えた。

「悪い、そんな小野木のこと根掘り葉掘り聞くつもりも、どうこういうもつもりもなかったんだが……。けど、やっぱりか」

「でも今日は、もうそのこと考えないみたいよ」

「え、それって……」

「ねぇイヅルくん」

「……何だ」

「恋って、つらいね」

「それは……」

 俺は続きを応えたが、小野木とその左右両隣の人たちもなんと見事同時にストライクをだした。

 ガラガラとピンが倒れ、大音量でストライク用のBGMが流れたため、俺の声はかき消された。

 でも、聞こえなくて良かったのかもしれない。

 もし聞こえていたら、一木にビンタのひとつももらっていただろうから。

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