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 その後正直どうやって帰宅したか覚えていない。ただし今自宅にいるので、どうやら学校にそのまま残ったわけではないようだ。

 相当変だったのか、ジョウから俺を心配する旨のメッセージが入っていた。大丈夫だ問題ないとだけ返しておいた。そしてそのままベッドへ投げた。

 制服からスウェットに着替えているとメッセージを受信する音が響いたが、また端末を操作するのが億劫でそのまま放っておいた。

「……クソ」

 悪態をつきながらベッドになだれ込み、記憶がある限りの部分を振り返る。時枝はジョウの心を手に入れるのは自分だと言っていた。今まで対してからんだこともないのに、大した自信だと逆に感心する。

 数時間まで楽しみにしていた明日の予定が、あの一言を皮切りに音を立てながら崩れていってしまった。

 いっそ行くのをやめてしまおうか。適当に理由をつければ行かないということもできる。これは別に学校行事でもなんでもないのだから。時枝に煽られたり嫉妬をするなどは疲れるだけだ。

 しかし、とまた俺は考える。本当にいいのか、それで俺は後悔しないのか?

 確かに目の前で何かされたら嫉妬はするかもしれないが、知らない間に距離を詰められるよりかはよっぽどマシだった。

 それにジョウのことだ。他意や下心があってスキンシップをしたり距離を詰めるような男ではない。それは俺が一番よく知っている。

 そこまで考えると幾らか思考がクリアになる。余計なことは考えないでおこう。

 さて、メシにでもするかと思いベッドから起き上がるとまたスマホから着信音が響く。この音はメッセージではなく電話だ。

 誰からだろうとディスプレイを見ると、意外な人物だった。

『……もしもし、イヅルくん?』

「もしもし、俺だけど。どうした一木」

『明日のことなのだけれど……』

「明日? ボウリングのことか?」

『うん、その……トウコから一つお願いをされてて、ちょっとそれで言いたいことがあって』

 小野木から一木にお願いとは珍しいこともあるもんだ。話しやすいせいか、小野木はどちらかというと頼るより頼られている方が多い。

「その相談ってのは何だよ」

 俺がそう聞くとしばらく一木は沈黙した。僅かながら呼吸音のようなものが聞こえたので、深呼吸でもしていたのだろう。

『……ちょっとイヅルくんには言いにくいんだけど、トウコが明日どうしてもジョウくんに言いたいことがあって、二人きりにする時間が欲しいって言ってて……』

「……マジか」

 どうしても言いたいことで、二人っきりって、もうそれはほぼ明日告白します! って宣言をしているようなものだ。

 席替えだってないのに、とんだ度胸だと思う。俺だったら後で気まずくなるのが嫌で絶対言えないだろう。

『うん。勝手にこれ言うのも良くないとは思ってたんだけど……。知ってた方がうまく半分に分かれて行動できるかなって』

「時枝はどうするんだ? 俺たちと一緒か?」

『時枝くんはちょっと前に連絡あって、これなくなっちゃったって。急な予定が入ったらしくて』

「……そうか」

 それはそれでちょっと安心だ。諦めたわけではないだろうから、今後も警戒は必要だろうが。

 しかしそれよりも気にしなくてはならないことがある。

「っつーか、小野木はジョウのこと……」

『結構前から好きだったみたい。チャンスがあればいくらでも二人きりの時間が欲しいってことも言ってて……』

「……それだけか?」

『え?』

「俺に言いにくいってのは、どうしてそう思ったんだ?」

『そ、れは……』

 電話の向こうで一木がモゴモゴしているように聞こえる。俺がジョウの親友だから言いにくいわけではないのだろう。

 おそらく一木も気付いている。

「俺がアイツの幼馴染で親友だから言いにくいって感じじゃねえよな?」

『……うん』

「気付いてたのか……?」

『……薄々だから、確証はなかった、けど。イヅルくん、ジョウくんを見る目だけはいつも他の人と違ってたし、その視線も親友を見るものではないと思ったの』

『私はイヅルくんもトウコも大事。どっちも応援したいけど、選ばれるのはどちらかだけ。それにジョウくんを巡って二人が仲悪くなるのは……嫌』

 はじめはクールだった美少女転校生も、いつの間にやら丸くなっていた。

 そして、とても優しく、美しい。

『だから、言いにくかった。要はトウコだけを有利な状況にしなきゃいけないし、イヅルくんが他の人好きなの分かってて私と二人っきりなのも、居心地悪く感じちゃうし』

「……そうか。正直に言ってくれてありがとな。でも良いんだよ、小野木なら許せるし、実際アイツと小野木が二人きりになんねえのは、俺がいるからだし。どちらが有利かといえば、圧倒的に俺なんだよ。それに……」

『それに?』

「俺は別に一木と二人きりで居心地悪いとは思わねえから」

『えっ……。そ、そっか』

「おう。だから明日のことは気にすんな」

『ありがとう、イヅルくん。じゃあ一旦切るね。また明日』

「また明日」

 俺がそう言い終えた三秒後くらいに、通話は終了した。

 一木との通話で、俺の周り顔も心もきれいなやつばっかりだな、と物思いにふけるのだった。

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