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 一日中自習という珍しい日は、何かトラブルが起きることもなく無事に終わった。チャイムが鳴るとそれぞれ荷物をまとめて教室を後にしていく。

 しかも今日は金曜日で、明日は土曜。休みだ。何が予定があるわけでもないので家にこもってアニメでも観ていようか。そう考えながらカバンに必要なものを入れていく。

「なあイヅル、明日暇?」

 俺の頭上に向かいそう言ってきたのはもちろんジョウだ。

「暇だけど」

「だったら買い物とカラオケかボウリング付き合ってくんねえ?」

「お、いいぞ」

 何をしようかと思っていたがこれは僥倖だ。ジョウと二人で出かけることなど日常茶飯事だが、毎回俺はひそかにデートだと思って楽しんでいる。実際ジョウと出かける際はデートのようなコースが多い。ジョウは甘いものも好むためクレープやタピオカを食べ歩きすることもある。気持ち悪いのは理解しているが、初めてジョウの食べかけのクレープを食べた時の感動と、そのほか諸々の衝撃は忘れはしない。

 しかしそんなデートの様な外出のおかげか、髪型は勿論、眉の手入れや服装にまで気を遣うようになった。何なら女性側の心理にも立てる。まあ、女子とそういうことになることは後にも先にも一切ないだろうが。

「どこ行くんだ?」

「そうだなー、ケイブクロか?」

「おっけ」

 ヨッシャ! ケイブクロということは電車にも乗る。最寄りは一緒だから駅待ち合わせでそこからもう楽しい。最高か?

 しかもあそこなら某アニメショップの本店もあるし、見るところは沢山ある。

 何を着ようかとワクワクしていると「私もいい!?」と高い声が聞こえてくる。

「トウコもか? いいぜ!」

「久しぶりにボウリングしたいんだよね! アザミちゃんも予定なかったらどう?」

「私ボウリングやったことないのだけれど……」

「大丈夫大丈夫! やり方教えるから!」

「そうだぞー! じゃあ四人で買い物とボウリングだな! いいよな、イヅル!」

「おう、勿論だ」

 本音を言えば冗談じゃない。

 だが、楽しそうな雰囲気を壊してまでデートをする趣味はない。基本的にはジョウの幸せ第一な俺なのだ。俺が嫌だとしてもジョウが喜ぶならそれでいい。

 それに小野木や一木とて俺の気持ちは知らないのだ。ただ混ざりたいから混ざっただけの話だ。仲を引き裂こうとか、そういう狙いがあるわけじゃない。

 まあ小野木はもしかするとジョウに片思いしているかもしれないが、それでもなぜか小野木ならいいか、と思う。何となくだが、ジョウが初めて自分から好きになる相手を作るとしたら、小野木の様な気がするからだ。

「楽しそうだね、ぼくも混ぜてよ」

「いいぞ!」

 時枝も参戦ときた。しかも俺の顔をチラチラ見ながら言ってくるもんだから、コイツは絶対何か狙ってる。

「集合場所はどこなの?」

「学校最寄りのラウワ駅でいいんじゃない? あそこから一本で行けるし」

「おっそうだな! 時間は十時くらいにしとくか。それにしても楽しみだ~!」

「了解。ぼくも楽しみだ。ねえ、朽木くんもそう思うだろ?」

「お、おおそうだな……」

 そりゃあそうだよね、と時枝がまたニヤニヤしながら言ってくる。不快だし煽られている気がするが波風は立てたくないので、ここでは拳を握りぐっと我慢する。

 次何か言われたら意味もなく怒ってしまいそうだ……。

「場所も時間も決まったのだから、もう帰りましょうよ」

 そんな時に一木がそう言って、そうだねー帰るかと、一気に下校ムードへ変わった。ほっと息を吐くと、一木がこちらをじっと見てきた。

「な、なんだよ一木……」

「ううん、何でもない。でも後でラインするわ」

「そうかよ……」

 何でもあるんじゃねぇか、とも思ったがこの場で俺の怒りを逃がしてくれたのは他でもない一木なので、感謝する。

 ジョウと小野木が話をしながら先頭を切り教室を出た。その後ろに一木、最後尾に俺と時枝だ。

 そのうち一木も先頭二人の話に混ざるように並ぶ。転校初日の時は鉄仮面みたいだったのに、今では二人と話すときも微笑むようになった。

 時枝と話すかどうか迷って、俺から話しかけることはしなかったが、すぐに時枝の方から「さっきはなんか煽っちゃったみたいで、ごめんね」と謝罪された。

 謝ってくれたのならまあ良いだろう。俺は別にいいと言って、それよりも一つ気になっていたことを聞いた。

「お前、朝の何だったんだよ」

「朝の?」

「ほら、口パクパクさせてたやつ」

「ああ。あれか」

「朝は俺が嫌がるって言ってたけど、今なら三人離れてるし大丈夫だろ」

 俺がそこまで言うと、時枝の先程まで鈍っていたアイスブルーの目が輝きだした。

 輝いているのに、ちっとも良いと思わない。むしろ悪寒すら覚える。

 この目は、視線は、どこかで浴びている。だが思い出せない。

「ぼくさ、知ってるんだ。君が誰を好きなのか」

「……は?」

「好きだろ? 楠木くんのこと」

「……っ!」

 体温が一気に下がり、周りの音も聞こえない。

 どうしてそんなことここで言うんだ。本人に聞こえたらどうするんだ。

「聞こえたらどうするって思ったでしょ? 大丈夫、そんなことないから」

 時枝は続ける。

「ぼくはね、全部知ってる。知ってるうえで、あえて邪魔するんだ」

 無邪気に笑って、俺を地獄に突き落とす言葉を突き付けた。

「楠木くんの心を手に入れるのは、ぼくだよ」

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