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(その晩、俺は一木とメッセージのやりとりを何度かして就寝した。

 そしてまたあの夢を見た。連続なので割と最悪だ。)

「やぁ」

 ……またアンタかよ。折角今日は楽しかったのに。

「そういわないでよ。こっちだってこんな頻繁に出るのは嫌なんだ」

 じゃあ出てくんなよ。

「でもねぇ、役者が全て揃ってしまったからね。それは言わなくてはならないから」

 ……役者?

「うん、役者。ああでも、一人は役者じゃないね。偶発的にそこに存在してしまった、というか」

 誰のこと言ってんだよ。

「さぁね? 何はともあれ転校生ちゃんも含めてピースは揃った。あとは君たちがどう関わって、何をして、どういう関係性に変わっていくかだからね」

 ……そうかよ。いっつも似たようなフワフワしたこと言いやがって。

「まあまあ。君を嫌な気持ちにもさせてしまうし、やきもきもさせてしまうだろうから、ぼくは当分ここに出てくることはないよ。ある意味もっと嫌な方法で君と関わることになるけど」

 どっちみち嫌だな。

「君にはそうだろうけど、ぼくはそうでもない。むしろこれからのやり方の方がぼくとしては嬉しいかもね」

 ほんと気持ち悪ぃなアンタ。

「ぼくは結構この空間も君自身も好きなんだけどなあ」

 俺はアンタのせいでいっつも朝シャンしてシーツ交換までしてんだ。手間が省けて助かるぜ。

「そうなの? 朝シャンくらいは別に続けてもいいと思うけど。幼馴染の彼だってヘアセットキマってる君の方が好きなんじゃない?」

 ……今アイツは関係ないだろ。

「え? 関係ないは流石に噓でしょ。あんなに彼のこと見つめて、ノンケのふりまでして彼の親友でいようとしているくせに」

 んなの、それこそ俺の勝手だろ!!!

俺だって親友よりもっと良いものになりてぇよ!? でも無理なんだよ!!!

っつーか、何で知ってんだ!!!

「君がそう決めつけているだけの話であって、まだ本人が受け入れられないっていったわけじゃないんでしょ? 知ってるのはぼくは君の中から君を見てるからだよ〜」

中からってすっげぇ気持ち悪ぃな。

 ……そんな簡単に前向きになれてたら何の苦労もねぇわバカ。

 いくらジョウがあんなに優しくていい奴でも、ダメなものはダメだし、仮にジョウが受け入れたとしても周囲はそうじゃない。俺の両親は俺に関心ねぇから分かんねぇけど、ジョウの両親は少なくともそれを受け入れるのは大変だろうし、クラスメイトにホモっていじられるアイツを俺は見たくない。

 世間では同性愛に偏見がありませんって言い切る人も出てきたが、真の意味でそうとは限らねぇし。

 だからこのままでいい。このままでいいんだ、俺は。

「……ふぅん。まぁ君がそこまでいうなら。ああ、時間だ。今日は君がよく喋ってくれたから、いつもより時間が経つのが早かったね」

 あーそうかよ。

「当分夢には出てこないから、ここで君が今日沢山話してくれて嬉しかったよ」

 ……んなこと思ってねえだろ。

「そんなことないよ? まあ別の場所でまた再会するから、寂しさやなんかはあんまりないけどね。また会った時はよろしくね」

 は? よろしくしねぇよ。

「反応冷たっ!! ほんとひどいなあ~」

 そんな古代ローマ人みたいな浮いた恰好のやつとよろしくするわけねえだろ。

「えっ、外見クリアしたらよろしくしてくれるの? ちなみに現代日本人に成りすますから流石にこの恰好ではないよ」

 あっそ。

「もう、全然ぼくに興味なくて悲しいなぁ」

 興味あったってどうせアンタは本当のこと言わねえだろ。

「真実は君自身が突き止めるべきだし、まだ猶予があるからね。今いう必要がないんだよ」

 ほらな。てことは俺が今知りたくても今教えるってことは絶対ないんだろ。だったら興味持たねえ。

 猶予が何かもアンタは今教えちゃくれないんだろ?

「う~ん、猶予くらいならいいかな。猶予は君の青春時代さ。この期間が終わるまでは、ぼくは君を見守るとしよう。……まあ、もしかしてもしかすると、君自身あるいはその周囲が、何かに気付いて少しずつ壊れてしまうかもしれないけれどね」

 ……そうかよ。

「だからね、本当に今を楽しんでおくれよ。今の時期を別のことに費やしすぎて罰を受ける者もいる。こんな形ではあるけれど、ぼくは君を見続けている以上、同じように罰を受けてほしくはないからね」

 おう。

「じゃあね、イヅル」

(男だか女だか、そもそも人間なのか分からない奴は、煙の様に消えていった。)

 ピピピ。

 アラームが鳴る音で目が覚めた。汗はかいていない。夢を見たのに快眠なのは初めてだった。

 汗はかいていないが、朝シャンはした。ヘアセットはなんとなく続けようと思ったのだ。いや、マジでなんとなくなのであって、別に誰かの為とかじゃない。

 身支度をしている間にジョウからメッセージがあった。この時間からメッセージが来ることは滅多にない。寝坊した、くらいだろうか。ジョウも俺もあまり寝坊はしないが。

『時枝も一緒に行くことになった!』

 ……何だと?

 時枝アカツキ(トキエダ アカツキ)。そういえばジョウと同じくクラスが被ることが多い奴だ。中学時代から三年間クラスも一緒で、高校も同じだと思わなかったと入学式で話を少しした気がする。

 余談だが時枝もそこそこ女子にモテる。低すぎず高すぎない身長と、すらっとした手足に、アイスブルーの目が綺麗だと評判だ。つまりはイケメンである。更に本人はあまり口数も多くなく、ミステリアスクールともいわれている。

 ジョウが陽なら時枝は陰というか。女子の好みは大体この二人に分かれる。ジョウの方が俺はいいと思うが。

 クラスが同じでも俺もジョウもあんまり時枝とはどこか合わなくてそこまで絡んでいなかった。仲が悪いわけじゃないけどメチャクチャいいわけでもない、そんな感じだ。

 それが急にどうしたのだろう。別にジョウがいれば俺はそれでいいし、ジョウがそうしたいと思うのであれば構わない。

 俺はメッセージに対して文字を打つのも面倒だったので、プラナリアがOKの看板をもっているスタンプだけを一つ押して、済ませた朝食の片付けと戸締りのチェックをした。

 そしていつも通りに、そろそろジョウが寄る時間に近づいてきたので家を出る。

 時枝とどう話をしようかと思いながら、鍵を掛けた。

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