アラサーが行く、異世界転移・砂漠とオアシスの旅
気がついたら異世界の砂漠だった!!アラサー男女の旅!!
@ 短編その25
1日1編書いてます。随時追加修正してます。
暑い。
光のレーザービームが私たちを射抜くぜ、イェイイェ〜イ・・・やけくそにもなる!
だって二人は砂漠のど真ん中、太陽は真上だ!!
「死ぬかも」
「オレもだ」
ここは砂漠!!熱砂で足から熱い!!
「このまま北京ダックになるかもね」
「そのあと水分ぬけて、ミイラになる運命だ」
「恨むわ・・・あんた」
「ごめんって。悪かったって」
「赦すかぁあ〜〜!!」
会社の飲み会で、二次会参加をやめて、駅に向かっていたのよ。
私は大塚、もうひとりは笹倉くん。同期のおっちゃん。二人ともアラサーですよ!!
「このまま結婚もしないで、異世界で死ぬのかな〜〜・・・うぇえ〜〜ん」
「だ、だから、な?俺が責任取って」
で。↑スルー
駅まで歩いていたら、車が一方通行を逆走してきてね!!
こっちが近道と笹倉くんが言うから、あの道通ったのに!!
ボウリングのピンみたいに二人飛ばされて、跳んで、翔んで・・・
あーれー・・・・
すごく真っ白な空間で、私達は目覚めた。そこには一人の女性。女神様だって。
「貴方達は不幸にも事故で跳ばされたのです。このまま異世界へ翔んでいただきます」
え?何言ってるの?あれ?笹倉くんも一緒なの?ウヒャ。
「転移か?でも異世界か!頼みます、神様。何かお得なスキルを!!ん?大塚?お前もかよ!」
何言ってるのかな?笹倉くん・・・ どこいくのよやだぁーーーー・・・・
目が覚めたら砂漠でした。灼熱です。
見渡す限り黄砂です。今は炎天下。
の、喉が渇いたよぅ・・・笹倉くんもきっと喉乾いてるよね。
「はっ!!忘れてた!!詠美、ステータス見ろ!!」
「え?はい、と言うか今しれっと名前呼んだでしょ」
「お!!良かったぁ・・生活魔法使える!!えーーと・・・お。ありがとう、タバコ!!」
笹倉くん・・いいわよ。私も名前呼びしてやる。
一期くん・・・イチゴくん。うふふ・・・
イチゴくんはタバコの包装フィルムをそっと箱から外し、何かぶつぶつ呟いた。
そしてコップ状にしたフィルムに、なんと!水を出したのだ!
「出た!!やった!!ほら、詠美、飲め」
「え!凄い!!でも先に飲んでよ。出したのはイチゴくんじゃん」
「イチゴちゃう。かずきだ。じゃ、半分こだ。次失敗するかもしれんからな」
そして先にイチゴくんが飲んで、残り半分を私に寄越した。
こ、これって・・・間接キス、ですかね!!
うふ。ありがたや・・・
イチゴくんは水をちょいちょい出してくれて、私達は死ぬのを回避したのだった。
イチゴくんは魔法が使えるんだって。
私は何が出来るのかなー、ステータス出ろーー!
「えーと。大塚詠美 3・・むにゃむにゃ歳・・レベル1、剣士・・剣士?・・剣聖・・」
「どうする。剣、無いぞ」
「うわーーん、役立たずでごめんなさいーー!!」
「とにかく、棒切れでいいから見つけないとな。多分何か出てくるぞ、ここ」
ゲームに出てくるモンスターで、砂漠といえばサソリ・・どうしよう!
私もう30歳超えてるのに!!もう素早く動けないわよ!!
なんで私も魔法使いにしてくれなかったのよぅ!!
この後もお水を飲みやっこしつつ前進。
私にスーツを被せ、日除けにしてくれてるイチゴくんは、自分はシャツを脱いで頭から羽織って日除けしている。何しろ暑い!足も焼ける。
と、その時!!陽炎が揺らめいて、ぼんやりと緑が見えた。そう!伝説のオアシス!
「ゆっくり近寄ればいい。反射で見える蜃気楼かもしれない。それだとショックが増す」
「そ、そうだね」
給水係のイチゴくん、何度も水出してくれていて、きっと疲れている。
休ませてあげたい。お願い、女神様!!オアシス消さないで!!
「日頃の行いかな」
蜃気楼にならなかった!オアシスのまんまだった!!
「あーー、暑い。俺、行水するわ」
服をババッと脱いで、パンイチになって、だーーっと駆けてジャンプ!
ドボーーーン!!
水飛沫が私のところまで飛んできたけど、気持ち良い!!
私もイチゴくんのスーツ上下とカッターシャツを折りたたんで、自分の服を畳んで、ブラとパンツだけでは心許無いのでスリップをつけた状態になって水にチャポンと浸かった。
き、気持ち良い・・・
私達が浸かっている水だけど、もう良いの。そのまま手で掬って飲む。
「はーーー!生き返った!!」
「うん・・冷たくて気持ち良い」
改めて見ると、このオアシス、広い。
椰子の木っぽい木がいっぱいで、日陰もある。
行水から上がると、二人は木陰で仰向けになって眠った。
目を覚ますと日がかなり傾いていて、イチゴくんが焚き火を起こしていて。
あれ?魚焼いてる?魚は指で捌いたそうです!
「捕まえたんだ。人慣れしてないから、すぐ獲れたよ」
「うわーー、すごいねぇ!一家にひとり、イチゴくんだぁ」
「かずきだって言ってるだろが・・ったく、詠美は」
「んーーー?呼び捨てだぞぉ?」
「そう呼びたかったんだ。ずっと」
「へ」
イチゴくんはすごくデキる人で、すぐに出世して、もう課長になっていて。
背が高くてハンサムだから、肉食系の子達に追い回されて、いつも私のブースに逃げてきて、
「すまん、匿って」
そう言って、私の机の下に大きな体を押し込んで隠れてた。
「おーい、行っちゃったよ、出てきて大丈夫だよー」
と呼ぶけどなかなか出てこない。どうしたのかなーと覗くと・・・
イチゴくん私のスカートの前に顔があって、丸見え・・イチゴくんの顔が真っ赤・・
「・・・・・・・・・・!!!!!!!」←声にならない
そしてファイルでバシンバシン叩いているうちに、みんなが戻って来て、また逃げていって。
それ以来、机の下は入れてやらなくなった。
「安全地帯がーー」
ふん。駄目です。絶対に駄目です。
でもアンジェリーナのモンブランで懐柔されてしまって、次からは膝掛けして防御。
「あー・・残念」
聞こえませんねえ、ええ。
なんて事があったなぁ・・・
「詠美」
「イチゴくん」
「・・・ったく。それで良いよ。ほれ、こっち来い」
夜は冷えるね。
二人で寄せ合っていないと風邪引いちゃうね。
オアシスを拠点にして、私達はレベル上げ。
イチゴくんが木を棒にして、私の武器完成。
で、私の身長くらいの大きなサソリ、この棒と、イチゴくんの魔法でやっつけた!
「うふふ。殺りました。二人の共同作業」
「もうそれは済ませただろう?」
「うぐっ(赤面)」
「照れてるのか?まだ」
「はい、慣れません・・」
オアシスに1ヶ月、修行の日々はようやく終了です。
キャラバンがやって来たので、街まで乗せて行ってもらうことにしたのだ。
キャラバンのお手伝いをしたりして、駄賃も貰った私達は、まず服を買いに行きました。
それと、私の武器です。剣聖スキルがあるので、安い剣でもええ感じです。
ギルドに似た『依頼場』という場所があって、いろいろな依頼票が掲示板に貼ってある。
それを酒場にある依頼受付で申し込み、依頼完了したら再び受付に行き、精算。こんな流れだ。
私とイチゴくんは夫婦・・・・きゃあ。夫婦として登録して、依頼をぼちぼち完了させていく。
1年後、私達は安いアパートに住んで、掲示板の依頼をこなす生活を続けている。
知り合いも増え、イチゴくんは持ち前のデキるスキルを発揮させ、ついにギルドを誘致してしまった。
半年後には新ギルドが完成する。
私も剣の才能を生かして若手を育てていたけど、今はお休み。産休です。
この地方は大きなダンジョンが大小14個あって、古代遺跡も大規模なものが放置状態。
魔物やモンスターが這い出し、住民に被害を及ぼしている。
あれから・・・ここに転移して、もうすぐ2年になる。
夕食をイチゴくんと一緒にとって、のんびりと寛いで・・・
「イチゴくん、ありがとう」
「なんだ?いきなり」
「イチゴくんがいなかったら、私は砂漠で野垂れ死んでたよ。北京ダックからミイラだったよ」
「詠美がいたから寂しくなかったよ。ひとりだったら、生きる気力も出なかったと思うよ。あの時は、なんとしても詠美を生かそうと思っていたから」
「あら。私、ちょっと役に立ってた?」
「うん」
「良かった。これからもよろしくね?イチゴくん。ううん、イチゴパパ」
「はい。こちらこそよろしく、詠美ママ」
えへへ、幸せだぁ・・・
そしてさらに数年後。
女神が何故私達をここに跳ばしたのか、今わかった。
この古代遺跡に、魔王の配下が封印されていて、それを再度封印するためだったんだ。
これで魔王は数百年は復活出来ない。
魔王は完全に滅ぼすことは出来ない存在なんだって。
今の技術では無理なんだって。
よし。イチゴくん。
私達の力を全て使って、封印しよう。私の力を使って。
大丈夫、子供はみんなに託したから。
泣かないで。
私はもう・・・体、動かないから。
生命力しかないから。
やるなら・・今しかないから。
泣いてちゃ駄目・・・
好き。
大好き。
前の世界から、ずっと好きだった。
あの近道、抜けるとすぐにイチゴくんのマンションだったね。
私、帰りたくないって、言うつもりだったんだ。
えへへ。
まあ、二人夫婦になって、この世界で頑張ったね・・・
ありがとう・・・
さあ・・・使って・・・
こら、男でしょ・・・
頑張れー、頑張れ・・・
愛して・・る・・・
二人の魂は一つになって、古代遺跡の最奥にある封印をさらに強固にした。
「ごめんなさいね。ご褒美は何が良い?」
微かに女の声がした。
2つの魂は声にならない声で告げた。
また出会いたいな
今度も一緒だ
どこかで誰かが産まれた。
出会うのはいつになるのかは、誰にも分からない。
ほぼ毎日短編を1つ書いてます。随時加筆修正もします。
どの短編も割と良い感じの話に仕上げてますので、短編、色々読んでみてちょ。
pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。
https://www.pixiv.net/users/476191