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第34話:堕天使と漢(オトコ)の喧嘩?


 おはようございまーす。

 あたしは今教室にいる。まあ講習があるわけで。休み中なのにさ。

 で、隣には……


「ルーたん、おっはー☆」

「おはよう黎香」

「今日もイケメンだね! ヒュー♪」

「えっ、と……」


 何故かルシフェルがいます。とりあえず謙遜しとけ。事実でもね。


 さて、どうして堕天使さんが学校に来ちゃったのかというと、ルシフェルが今朝「私も行く!」と言って憚らなかったからです。

 曰く「何か嫌な予感がする」とか……。超不安! 加えて、「見えないからいいだろう?」と言われたらもう、断れないじゃん。

 そして二人で登校して来たわけです。教室に入った途端に、黎香と奏太には絡まれたけどね。


「珍しいじゃない。ルシフェルさんが学校に来るなんて」

「ふむ。今日は災難の予感。出来る限り真子の傍にいたいからな」

「まあっ♪ 傍にいたいだなんて!」


 奏太はあたしよりも乙女だな。あたしとしては“災難”って方が引っ掛かるんだけど。


「すっごいねえルーたん。占いもできるんだ」


 黎香、それは飛躍し過ぎ。


「“売らない”? 何を?」

「えっ、だから真子ちんのことをだよぉ」

「真子を?! 売るわけがなかろう!」


 あぁぁ、噛み合ってねえよ……。


 《キーンコーンカーンコーン♪》


 あっ、ヤバ。チャイム鳴っちゃった。《彼女》が来る前に席に着かねば……


「でも真子ちんを占ったんでしょー?」

「そう、売らなかった」

「……うゆ? うらな――」


 《ガラッ》


「おはー……って三ノ宮ぁっ!」


 れ、黎香ーっ!!

 適当教師・スナイパー楢崎の必殺、《チョーク投げ》が炸裂。


「どひょぁっ!」


 と、黎香がすごい悲鳴をあげながら避けたので


 《ピシィッ》

「ぁうっ」


 堕天使様にヒットしただと?!

 しっかりしろよルシフェル……。


「? 今確かに当たった音がしたんだが……」


 楢崎先生は首を傾げていたが、


「ほら三ノ宮、早く席に着け」

「アハッ……はーい……プフフ!」


 黎香を促して教壇に立った。つーか黎香ってば笑い過ぎ!


「っつ~……」


 ……まあ確かに間抜けだ堕天使長。


「油断していた。全く、あの教師は何者だ?」


 言いながら額を擦るルシフェル。もしかして今日災難なのって、ルシフェルの方なんじゃない?



***



 あれほどルシフェルが言うから気を付けてたのに。


「真子ちゃん、何かあったー?」

「あ、奏太。ううん、何もなかったよ」


 ホントに何にも。平和過ぎるくらい平和なままで、とうとう放課後になってしまった。


「あら、じゃあルシフェルさんの勘が外れたってこと?」

「そうだね、多分」


 おまけにそのルシフェルは授業途中で「つまらぬ」と言ったきり、どこかへ行っちゃったし。お昼にも戻って来なかった。何しに学校へ来たんだか……。


「あははっ。ま、何もなくて良かったじゃない」

「まあねー」

「じゃ部活行くから。またね真子ちゃん!」

「あ、うん。頑張ってね」


 奏太は大きなエナメルバッグを担いで体育館へ向かった。部活、ねえ。懐かし。

 そいじゃあ(自称)帰宅部部長のあたしは帰りますかっ。


 ……と言いたいとこだけど。

 まったく、ルシフェルったらどこ行ったんだろ。あたし、探した方がいいかな。ううむ。困った。


 ……。

 もしかしたらもう家に帰ってるとか? 充分あり得るな。

 「あ、真子お帰り。退屈だから帰って来たよ」とか。言いそうだなー。

 

 色々考えながら階段を降りてたら。


 《バタバタバタ……》


 ん? 誰かが廊下を走ってくる。

 男子が二人。……って止まってよぉ!


「許してください!」

「あなたに恨みがあるわけじゃないんです!」


 じゃあ突っ込んでくんなーっ! 

 見知らぬ二人は勢いのまま、あたしの目の前で拳を振り上げた。


「こうしろって……」

「言われたんでさぁ!」


「え……えぇぇーっ?!」

 

 ちょ、理不尽! あたし殴られるわけ?!

 うわっ――!

 


 《ゴッ》


 鈍い音がしたよぅ……。

 ……

 あ、あれ? でも痛くない。


「な、……」

「何ぃ?!」


 男子達の驚く声。恐る恐る目を開けると……


「――ほら。私の勘はよく当たるんだ」

「ルシフェル!」


 いやはや唐突。彼は腰を落として、両腕でそれぞれの拳を受け止めていた。堕天使長様カッコ良過ぎ!


「い、言われた通りだな……」

「ああ……」


 突然現れた男を見て惚けたように呟いた二人。ルシフェルは怪訝そうに眉をひそめる。

 

「私の顔に何か?」

「あっ、いや!」

「えーと」


 ……多分、ルシフェルの顔に見惚れてたんじゃないかと思う。顔赤いぞー。


「って、ていうか!」

「どこから出てきたんだよ?!」

「ふん。真子に危険が及ぶとなれば、私はどこへでも駆けつけてみせる!」


 しーっ! その台詞、なかなか恥ずかしいから!


「お前達こそどういうつもりだ。理由を言え、理由を。10文字以内で!」


 無茶な要求キター! 10文字ってあっという間だよ?


「えーと……“あんたに用事があって”」


 1、2、3、……おぉっ、言いやがったよこの男子!

 だがルシフェルは首を振る。


「理由を聞かれたら文末は“から”だろ」


 どこの国語教師だお前はッ。


「んー……“あんたに用があるから”。どうだ!」


 こいつらすげー!


「ふっ、詰めが甘いな」


 ルシフェルは不敵に笑う。


「“。”も含めてだ! 授業で習わなかったのか」


 なんでそんなにこだわるんだよ。堕天使も国語の授業ってあるのか?

 ……はっ! 今日の一時限目は現代文だった! それかよ。



「まあ、ルシフェルも二人もそのくらいで。で、なんであたしは殴られなきゃいけなかったわけ? “言われた”って、誰に?」

「いや、それが……」

「本当に用事があるのは」


 言って二人はルシフェルを指差した。


「は? 私?」

 

 きょとんと首を傾げるルシフェル。堕天使長に用事って?


「実は、その……」

「“タイマン”を申し込みたいっていう人がいて」

「“怠慢”?」


 違ぇよ。

 タイマン勝負って、1対1で喧嘩ってことでしょ?


「で、連れて来いって言われて」

「誰に?」


 あたしが聞くと二人は顔を見合せた。


「それは――」



***



 男子二人に連れられて、体育館へ向かったあたし達を待っていた“彼”。

 見覚えのある明るい茶髪は、長めの襟足を残してたててある。あれはワックス使ってるな、うん。髪染めちゃダメなんだぞ“不良”君。

 背の高さは平均的。その身を包むのは……真っ白な胴着? 黒い帯?!


 ど、どうやらここは“空手部”の練習場所らしいです。畳じゃなくて普通の床なので、ちゃんとマットが敷いてある。でも部員の皆さんは見当たらない。んー?

 そんな中、茶髪少年は仁王立ちしつつ口を開いた。


「よぉ進藤さん。それから……」

「ルシフェルだ」

「あっ、ルシフェルとかいう奴!」


 そう。そこにいたのは“ケイ”君だった。ほら、あの夏祭りの屋台で会った、隣クラスの!

 つーか名前も知らないで呼び出したのかよ。


「お前らもサンキュな」

「うすっ」

「ケイ先輩の言う通りでしたよ。やっぱ進藤先輩を守る、って」


 ケイ君は後輩男子二人を労う。うーん、会話から察するにあたしは囮に使われたっぽい。くそぅ。


「……で、私はどうすればいいんだ?」


 あたしの隣でルシフェルが言う。意外にも堕天使様は普通について来た。喧嘩、って聞いたのにねー。

 ケイ君はそんなルシフェルにびしっと指を突き付けて。


「俺と勝負しろ!!」


 だからなんで?!


「よかろう!」


 ルシフェルもッ!

 仮にも元天使でしょーが。そういう不要な争いしていいわけ?


「売られた喧嘩は買うのが礼儀」


 変なジェントルマン精神! なんか違う気が……。


「そう来なくっちゃ」


 ニヤリと笑んだケイ君。……彼はまさか堕天使に喧嘩売っただなんて思わないだろうね。


「ねえルシフェル、一応聞くけど、剣は使わないよね?」

「ぅ……い、いやだな真子。そんなことはないぞ」


 うん、絶対使う気だったでしょ。流血沙汰になっちゃうから。


「で、どうやって勝負するんだ?」

「空手だよ空手」

「カラテ?」


 めっちゃアウェイゲーム! 明らかにケイ君、空手部の子だろ!


「ま、できないっつぅんなら、やめてもいいけどな」

「ふ、ふん! 何を言うか少年。当然できるに決まっていよう!」


 挑発に乗っちゃった! アホやん。カラテって言葉自体、今初めて聞いたでしょうが。


「そーかそーか。じゃあその格好じゃダメだな。おい、着替え!」

「はい!」


 後輩男子君が持ってきた胴着一揃え。押し付けられたルシフェルは、戸惑いながらあたしを見る。


「真子……」


 いや、あたしに助けを求められても。そりゃ着方はわかるけどさ。これでも一応は武道経験者だし。でもまさか、着せてあげるわけにはいかないよ。

 あたしが動かないのを見て、ルシフェルは悲しげにため息を吐いた。うっ、罪悪感……。

 

「こっちです、こっち」


 とうとう堕天使長は更衣室へ追い立てられていったのでした。自分で買った喧嘩なんだから、早く着替えてらっしゃいな。


 

 ……で、数分後。


「留めるところがないんだが!」


 飛び出してきたルシフェルを見て、


「ぶふぁ!」

「ぶぉっ!」


 後輩二人が鼻から出血。

 ……こう、なんで、さ。“前全開”で来るのかな。あんたはそんなに裸を見せたいんかー!


「ちょ、帯はどうしたんだよ?」


 ケイ君もテンパり気味に尋ねる。


「オビ?」


 天然堕天使長はしばし思案し、


「ああっ、あの包帯のような布端?」


 と嬉しそうに帯をヒラヒラ振ってみせた。素……だもんな。


「…………」



 ……さてさて、帯を締めてもらって、ようやく喧嘩の準備が整いました。いや、喧嘩の準備って。


「いいか、これから“ヴァイオレンス・空手”で勝負だ!」


 なんだそれ!


「ルールは簡単! “何でも有り”……以上!」


 ルールもへったくれもないよ。ただの喧嘩だよ。


「いいだろう。だが、ひとつ聞きたい。何故私に挑む?」


 あ、今更気になったの?

 ケイ君は腕や脚をストレッチしながら。


「あんたが強そうだからさ! 初めてあんたを見た時に感じたオーラ……只者じゃないと思ったね」


 大当たり! 大当たりだよケイ君!


「俺は最強になりたいんだよ。誰よりも強くなりたい! そのためには色んなヤツと闘わないとなっ」

「ふふ、面白い少年だ。シンプルな願いは好きだよ」

「余裕かましてっと、痛い目見るぜぇ!――」


 早速ケイ君がマットを蹴った。


「てやぁ!」

「な?!」


 繰り出された突きを、背を反らせて避けるルシフェル。油断してたな。

 もう止めるのは無理みたいなので、あたしは脇で見物だ。こういう殴り合いは、ベルゼブブさんの方が向いてるイメージだけど。

 

「うらァ!」

 

 でもルシフェルの油断を抜きにしても、ケイ君はすごかった。何よりスピードがすごい。黎香の速さにパワーをプラスした感じ。


「しっかしキレイな人だよな~……」

「でもさっきの速さ、尋常じゃなくねぇ?」


 ぼそぼそと喋る声に隣を見れば。


「あ」

「お」

「ど、ども」


 男子二人と目があった。


「す、すんません先輩!」

「本気で殴るつもりは全然なかったんスよ。真似するだけで」

「いやー、いいよいいよ。今日は部活休みなの?」

「はい、この勝負のためにマットを敷きました」

 

 セッティングお疲れ様です。

 ちょっと話をしたら、やっぱりこの二人はケイ君の後輩で空手部員だとわかった。


「ケイさんは副部長なんスけど」

「部内で一番強くて、俺らの憧れなんです!」

「ふーん。喧嘩だけじゃなくて、空手も上手なんだ?」

 

 あたしが聞くと、逆に二人はびっくりした顔でこちらを見た。

 

「いや、上手っていうか……」

「こないだインターハイに出たの、ケイ先輩ですよ?」

 

 マジかー!!

 ……あっ、そういえば聞いたかも。空手部でインターハイ出た子がいるって話。そ、それがケイ君なの?! 大丈夫かルシフェル!


「行くぜ!」


 そうこうしてる間にも、一気に間合いを詰めてケイ君がパンチを放つ。


「っ!」


 対するルシフェルは一言で表すなら“柔”だ。しなやか且つ軽やか。長身を生かして受け流し、バック転も軽く見せてくれた。すっげぇ……。


「なかなかやるな少年。だが…」


 ルシフェルは繰り出された拳を受け止め、勢いを利用しながらケイ君を投げた。いつぞや引ったくり犯を投げた時の一本背負いだ。が、


「チィッ!」


 なんとケイ君は受け身を取りつつ着地。そこから振り返ってルシフェルに手刀を振るう。


「?!」


 間一髪で止めたルシフェルも驚きを隠せない様子。

 二人の力は拮抗したまま。


「お前、やるな――」


 しかし次の瞬間。ルシフェルの動きが僅かながら止まる。

 

「え――?」

 

 ケイ君は隙を見逃さない。


「もらったぁっ!」

「ルシフェル?!」


 ケイ君のパンチがルシフェルの腹にヒット。弾き飛ばされたルシフェルは、どうにか体勢を整えるとあたしの傍に着地した。


「大丈夫?!」

「バ……」


 ルシフェルは軽く腹を押さえながら、愕然としたようにあたしを見た。


「バレた……」

「えっ?」

「あいつ、私が人間などではないことを知っている……」


 えぇぇーっ?! ケイ君も“見える”人なの?

 いや、そんなことより、人じゃないって知りながら喧嘩売ったケイ君がすごい。


「前に屋上で見かけた時、羽が生えてたし浮いてたからな。人外に勝てたら、俺すげぇじゃん!」


 いや、ケイ君の思考回路がすごいよ。


「だってこの服、緩くて動きにくいし……」


 堕天使長は何やらぶつぶつ言っていた。ケイ君はすっかり勝った気でいる。


「ふふん、大したことなかったな」


 ……だが。


「……今、何と?」


 一気にルシフェルの声が冷める。ケイ君は地雷を踏んだね。


「大したことない? 笑わせるな。これが私の本気だと思うなよ」

「ハッ」


 ぱん、と帯を締め直し構えるルシフェル。ケイ君は鼻で笑い、気合い一閃、回し蹴りを放つ。


「……そんなら本気を見せてみろやぁ!!」

「上等!」


 ルシフェルはその場に屈む。びゅんっ、とケイ君の脚が空を切る。


「何っ?!」

「回し蹴りというのはなぁ……」


 バランスを崩したケイ君に向かって、堕天使長が体を捻る。


「こうするんだよ少年!!」

「ぐあっ!」


 勢い良く叩き込まれた片足。長い脚に遠心力の効果は抜群で、ケイ君は思いっきり吹っ飛ばされた。ちょ、やり過ぎじゃない?!


「先輩!」

「大丈夫スか?!」


 ケイ君に駆け寄る後輩二人。そこでようやくルシフェルは我にかえった様子。急に人が変わったようにおろおろし出した。


「ど、どうしよう! 人間相手に本気になってしまった!」


 今更言うなよー。でもお互い結構ガチだったからね。


「う~……」


 ほら、ケイ君は無事みたいだよ。


「だぁー! 悔しいけど俺の負けだーっ!」


 マットに座ったケイ君のもとへと寄るルシフェル。


「大丈夫か?」


 慌てて膝を着き、あの美声で申し訳なさそうに。


「すまない。私としたことが、ついムキになってしまった。……痛むか?」


 手を差し出したルシフェル。ケイ君達は惚けたようにその顔を見上げる。

 一瞬、時間が止まる。


「……兄貴……」

「兄貴だ……」


「へ?」

 

 あ、兄貴?

 と、いきなり彼らは居住まいを正し、堕天使長の目の前に正座する。


「どうか弟子にしてください兄貴!!」

「ぅえぇ?!」


 超展開! 弟子だって?


「私、そんな……」

「いやいや、俺、貴方にホレました! どうか兄貴と呼ばせてください!」

「えっ、告白か?!」


 違うって。

 ちょっと考えていたルシフェルだったが、そこは元々魔王様、やがてひとつうなずいたのだった。


「ま、まあ……よかろう」

「あざーっす!」


 ルシフェルが押しに弱いのは実証済みだが。《先生》の次は《兄貴》か。なんだか色んな人に慕われるね。


「それにしても、この私に勝負を挑もうという意気は気に入ったぞ。見上げた者よ、少年、名は何と言う?」


「あっ、池田圭いけだ けいです」


 ふむふむ、池田君ね。


「私はルシフェル。堕天使だ」

「あたしは進藤真子。改めてよろしくねー」


 ……てなわけで、新しいお友達ができたのです。めでたしめでたし♪



***



 空手部の彼らは、凄まじい低姿勢であたし達に挨拶して送り出してくれた。なんか姐さんになった気分だわ。っていうか何故あたしまで?


「兄貴にとって大事な人は、俺らにとっても大事な人だから」


 らしい。ふーん。

 ……ちょっと嬉しいなコノヤロー。



「ところでルシフェル、ずっと屋上にいたの?」


 家に帰る道すがら、あたしは隣を歩くルシフェルに聞いた。


「ん、んー、まぁ……」


 彼は何やらばつが悪そうに頬をかいた。紅い目がキョロキョロと彷徨う。


「……るね」


 え?


「昼寝、してたんだよ。外の空気に当たろうと思って屋上へ出たら、その、気持ち良くてな」


 マジかよ。それで昼もいなかったのね。


「ま、いいんじゃない。ルシフェル、ちゃーんと駆けつけてくれたし」

「あ……うん」


 あたしが言うとルシフェルは嬉しそうにはにかんだ。だってあの登場の仕方は反則っしょ。


「……あ」


 そんな会話をしていたら、マンションの前でルシフェルがいきなり声をあげた。


「あ……」

「進藤さんに、兄貴?!」


 なんとそこには学校で別れたはずの池田君が。


「進藤さんちって、ここ?」

「うん。ここの五階」

「おおっ。俺んち、二階なんだよ」


 なんとなんと同じマンションに住んでることが判明! 登校時間が違うから会わなかったのかな。

 

「俺は部活のためだけに学校行ってるからな」

 

 ダメだよ!


「……あっ! じゃ、じゃあゴミ捨て場のカラスを退治したのって、まさか兄貴スか?!」

「ああ、まあな」


 そんなこともあったね。


「お袋から聞いたんスよ。いくらなんでもそれはねぇだろうと思ってたけど……兄貴なら納得ッス!」


 エレベーターから降りる時に池田君は軽く頭を下げて。


「じゃあまた、進藤さん。兄貴、毎朝お迎えに行きますよー。空手部のメンツ引き連れて!」


 それは是非やめて!!


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