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第一異世界人発見

その後残った部屋を確認すると、そちらは見習いなどの部屋らしく、二人部屋と四人部屋の寝室となっていたが、特にめぼしいものは無かった。


「さて、残るは突き当りのドアだけか」


念のためドアを鑑定する。

罠は無いようなので、開けてみる。


「ゴブゴブー」


パタン

居るよ、ゴブリン。

姿は確認できなかったけど、思わずドア閉めちゃった。


俺は礼拝堂まで戻って、今後の対応を考える。屋外に出なければ食料は無く、屋外に出ればゴブリンとの戦闘は避けられない。

腕組みして、うーんと唸りながら上を見ると、礼拝堂の上部にキャットウオークがあることに気が付いた。キャットウオークをたどっていけば、何やら上へと上がる階段が見える。


「…ああ、鐘撞堂かねつきどうがあるのか、ならそこから見れば、ゴブリンの所在もわかるかな」


礼拝堂の柱に据え付けてあった梯子を上って、キャットウオークを進み、狭い階段を上がって、跳ね上げ扉を開けると、一抱え程の鐘が吊られた場所へと出られた。


「さて、ゴブリンはどこに居るのかな」


鐘撞堂から周囲を見回していると、肉の焼ける様な匂いが漂ってきた。

腹がすいたと思いながら、そちらの方向を見回すと、居たよゴブリンが。

俺のいる教会から、50メートル強ぐらいか?思っていたより近い。

そしてゴブリン10匹以上が、焚火を囲んで焼肉パーティーを、しているようだ。


「んん? もしかして、焼かれているの俺?」


焼かれている物体は、ある程度の大きさに切られているため、詳細は分からないが、まだ焼かれていない残りの肉が、案山子のように突き立っているのだ。それは黒髪で、顔も俺っぽい。ただ、体はだいぶ軽量化している。


ゴブリンを観察していると、急に金切り声が聞こえてきた。

見れば、数匹のゴブリンが、一人の人間を引きずって、宴会場へと来たようだ。悲鳴を上げていた人物、たぶん女性だと思うけど、その人物は俺の死体を見て、一際大きな悲鳴を上げると、静かになった。

俺の死体は、少々刺激が強かったのかな。


「さて、思いがけず訪れた、第一異世界人との邂逅のチャンスだ、出来る事なら救出したいが、のんびりしていると、俺の抜け殻と同じか、エロ同人誌的未来しかない。どうしたものかな」


現状、俺の攻撃手段は、使ったことのない魔法が二つと、覚えたばかりの棒術だろう。

1対1なら、棒術でも倒せると思うけど、あの数じゃなあ。それに、俺の最初の死因は弓矢によるものだから、出来れば囲まれないか、奇襲でどうにかしたい。

そんな事を考えていた俺だったけど、残念ながら状況は俺の思案を許さず、気絶した女性の周囲にゴブリンが集まりだした。


「あ、やばい、くっそ、なるようになれ!」


言って俺は力いっぱい鐘を打ち鳴らした。


カラーン

カラーン

カラーン


大きな鐘の音がゴーストタウンに響く。

推定女性に群がっていたゴブリンたちが、音に驚きびくりと震えた。ゴブリンはすぐに周囲を見回し始めたが、鐘撞堂を知らないのか、その顔は鐘撞堂のはるか下に向けられている。


俺はGUIを操作し、バッグからカイトシールドとメイスを取り出すと、メイスを振りかぶり、狙いをつけて投げる。

目標は、ゴブリンとの中間にある廃屋。

50メートルも先に居るゴブリンに、俺の肩で届くわけがないから、このメイスはおとりようだ。


狙撃対策として、カイトシールドで身を隠しながら、メイスの行方を追う。

崩れた屋根から家の中へと消えたメイスは、廃屋の中で大きな音を立てた。


『スキル 投擲とうてきを取得しました』


む、スキル…って、今はそれどころじゃないよ。


流石に、廃屋の物音は、ゴブリンたちにもわかったようで、半数ほどが廃屋へと走る。

崩れた壁を越えて、ゴブリンが廃屋へと入ったところで、次の攻撃にうつる。


「マナよ、大地を焼き大気を焦がす、灼熱の炎となりて、的を撃て 火球!」


初めて使う魔法なので、威力がわからないけど、初級ポーションなどと同様に、NPCが入手できる程度の低級魔法だろと予想し、しっかり詠唱してから廃屋に向けて右手を突き出した。


俺が突き出した手のひらの前に炎が浮かび、見る間に大きくなる。

初めはライターの火程、そして野球のボールより一回り大きくなった炎は、上へ下へ右回転左回転と、不規則な動きでグルグル回転しながら、弾かれたように廃屋へと飛んで行った。


ブオオン


そんな音を立てて、廃屋が炎に包まれた。

物理的な爆発力を伴わない炎は、廃屋を破壊することなく一瞬にして飲み込み、その後に可燃物を燃やし始める。


ギイャアアアアアアアア


そんな悲鳴が炎上する廃屋から響き、残ったゴブリンが騒然となった。


「残ったゴブリンは、にーしーろー7匹か」


カツン


鐘撞堂の壁面で音がしたので、一度身を隠してから慎重に確認すると、そこには一本の矢が付き立っていた。


「こんな長いかんざしは要らないのだけど」


どうやら火球の動きから、俺がこの鐘撞堂に居る事がばれたらしい。

こっそり下を覗き見れば、混乱していた7匹のゴブリンが、こちらを見上げて叫んでいた。


「よし、俺2号、この場は任せたぞ」


俺はバッグから、毒で死んだ俺の死体を取り出して、カイトシールド共に、下から見える位置に立たせ、槍や剣をつっかえ棒にしてから、礼拝堂へと戻る。


消費した武器を補充して、裏口の扉からコッソリ外へ出て、慎重にゴブリンの様子を盗み見れば、鐘撞堂の2号に向かって矢や石を飛ばしていた。


『いいぞ2号、そのまま引き付けていてくれ』


足音を立てないように、コッソリ教会の敷地から裏路地へと出て、ゴブリンたちの背後へと向かう。


『スキル 忍び足を取得しました』


了解。

でも、驚くから時と場所を選んでプリーズ。


ゴブリンの後方に回り込んで、物陰でアイテムを取り出す。

先ずは、初級筋力増加ポーションを飲む。


『栄養ドリンクのような味だな、パターンとして、くっそまずいポーションという事もあるけれど、このポーションは割とうまい。…飲んでからで何だけど、これ飲用だよな?』


ポーションでドーピングしたら、盾を放してワンドと槍を持つ。

深呼吸をしてから、ゴブリンたちに向かって、全力で走る。

大丈夫、俺は死んでも死なない。

次回、バッグの回収がちょっとだけ大変になるだけだ。


一匹のゴブリンが俺に気が付き、驚きの声を上げる。

釣られて、他のゴブリンも俺の方へと向き直る。


『今だ!』


俺はワンドを頭上に掲げて、持ち手にあるスイッチを入れた。


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