レバ走る。
ハァ…… ハァ……!
「もう少しで船だ。 おい、死ぬなよ! 」
レバは激しく息を切らしながら、独り言のように背中に向けて繰り返す。五百メートルほど先には〈ヤグル〉の船体が見えており、沸いてきた希望が、疲れた心を持ち直させていた。
「レバさん!? 」
見張りに付いていた仲間数人が、レバを見つけ駆け寄っていく。
「何があったんです? 」
「カシラや他の連中は? 」
レバは険しい表情のまま、オークション会場が襲撃された事を簡単に説明した。
「転生者が!? 」
「そうだ。 だが先ずは、コイツを医者に診せたい。 呼んでくれ、頼む 」
ドゴォォ……
「なんだ!? ……空が赤い? 」
空気を震わす異様な音に振り返ると、オークションが行われた倉庫街の上空で、真っ赤な空と巨大な火柱が上がっているのが見えた。
「あれは魔法、なのか? カシラか転生者が起こしたモノだろうが…… 」
レバは赤く染まった空を眺めつつ、マガトの父親を背中から手早く降ろし部下に預けるが、引き取った部下は容体を少し確認すると、ばつが悪そうにレバに伝えた。
「レバさんコイツ、残念ですが…… 」
「なに!? 」
レバは信じられないようにマガトの父親を覗き込み身体に触れる……が、何も反応を見せない様子にやがて深いため息を吐いた後、下を向いて唸り出した。
「そんな、くそっ……ぐぅぅ! 」
なんと言う事だ。
カシラの命令を遂行できず、鑑定士を死なしてしまうとは、……なんたる失態。
……ならばせめてアイツだけは!
「……マガト! 」
「レバ……さん? 」
「いいか! カシラの事は心配いらん。 あの方が負けるなど、ありえんからな。 先ずは船長に船を出す準備をするように言え! アルティーナ兵が動くぞ。 オレはマガトを助けた後、カシラと合流する。魔道三輪車で行く。 サバーニとシャケーナを呼べ 」
「へい! 」
ズズズズ……ズン!
重厚な音を響かせながら、ヤグルの側面に備えられていたハッチがつり橋のように開き、地面に到達する。 そのハッチの奥は、船内の武器格納庫と繋がっており、船から地上まで一本の道をつくった。
ブオォォォォオン!
ハッチの奥から魔道発動機の爆音を響かせ、魔道三輪車がその姿を現わす。
大型馬車に匹敵する大きさの、その乗り物は赤と黒でカラーリングされており三つの大きなゴム製のようなタイヤを有している。
前方に座席が一つ、ショートの赤髪でサングラスを掛けた女性がハンドルを握って操作している。
そして後部座席には五人ほど乗れるスペースがあり、その一つに髪の長い細身の男が陣取っていた。
その男が軽く手を振り、レバに挨拶を始める。
「よう! レバの兄貴…… 」
「サバーニ! 細かい話しは無しだ。マガトを助けに行く。 相手は転生者だ。 シャケーナ、急げ! あの炎の中に突っ込むぞ! 」
「……え、兄貴もう行くの? 」
レバは男の挨拶を遮りながらドライラートに乗り込み、女に命令した。
「へっ、上等じゃん! 二人供しっかりつかまってな! 」
ギョパァアアア!
土煙を上げながら三人を乗せ、ドライラートが爆走を始める。 倉庫街の周辺には夜中にもかかわらず、騒ぎに気が付いた野次馬が集まり出していた。
……マガト、生きてろよ。




