異世界バトル・ロワイアル (10)
「……ほう、聖剣フラガラッハですか。 確かに過去の大戦で耳にした事はありますねぇ……。 しかし、〈聖〉に属する者か、選ばれし者でないと使えないハズです。 薄汚れた〈黒き魂〉のあなたが、使えるとは思えませんね」
「確かにの…… 」
老剣士は悪魔に目を向けず、影の中からゆっくりと剣を取り出す。悪魔も興味深そうに、ただ見ているだけだ。
影から取り出された聖剣らしきモノは、ガード、グリップともに聖剣に相応しき芸術的な装飾をされている。そしてその刀身は、通常サイズの剣よりやや大きく、輝きか聖なるオーラとも思える光りを鈍く放っていた。
「ワシは……確かにワシの魂は薄汚れておるし、選ばれし者でもないじゃろう…… 」
「ならばやはり、使う事は出来ないでしょう」
「……だが、ワシはコイツをほれ、握れる。 だとすれば、お主に振って当てるぐらいは出来るのではないか? ま、効き目は分からんがの。 だからこれは、賭けじゃ!」
老剣士はノーモーションから、一瞬で悪魔の間合いに入り、下段から切り上げた。
「なるほど…… 」
対する悪魔は全力で後退回避、その刃を避ける。
「ふぉっ! 何故に避けおる? お主、恐怖を感じておるのではないか? ……どうじゃ? 今ならお互い引く事も出来よう
」
「クフフフ、何をバカな。 あなたは、これから地獄の苦しみを味わいながら死に、その剣はワタシのレアコレクションになるのです。そんな手には乗りません」
「ふぉっふぉっ。 さもあらん! では参ろうか…… 」
ーーーーーー
「ニース! 」
「マガト! 」
巨大なマグマと炎が、まるで滝のように二人を狙って落ちて来る。
アカリの魔法によってできた、超高熱の炎に包まれたマグマは、質量だけでも莫大であり、まともに食らえばペシャンコに押し潰されてなお、消し炭にされる事は間違いない。生半可な防御魔法や、障壁など一瞬ももたないだろう。
ニースは自身の転生スキル、〈妖精空間〉の出力を最大に上げ、尚且つ上方向に集中させる。
しかし、ニースは自分を殺す為だけに、今までこれ程の大規模魔法を受けた事はない。防げても数十秒、いや……数秒くらいである事は容易に想像できた。
マガトはニースからの返事をまたずして、残された賭けである選択肢を、急ぎ右こぶしに託す。
もう……これは賭けだ。
『解除!』
ドゴォォォォーー!
それは地面に向けて放出された。
〈挑戦者〉から発したエネルギーは凄まじい。そして、同時にマガトの体力を急激に吸い込み始める。
……そうか、チャージとは自分で変換量を決定する事でもあるんだ。
そしてこのままあらかじめ設定されたチャージ分までその変換を続ける……のか。
「うぐぅぅぅぅぅ……」
こ、これはキツい、この脱力感……
マガトの放出系打撃は一瞬で床を砕き、土を爆散させながら、なお止まらない。
すでに地面には大穴が開き、マガトとニースの姿も地中へと沈み続ける。
振り返る事も出来ないが後ろからは、物凄い音と熱が伝わってくる。まるで熱湯の風呂にでも入っている様だ。だがニースが僕を信じて頑張ってくれている。何としても応えたい!
くっ! まだか!?
たのむ!
あってくれ……。
ガガガガガガ!
「岩盤!? 」
土は完全にめくれたが、さらに固い岩盤まで破壊するに、マガトは及ばなかった。
「もうダメか、これ以上は……」
「ごめんマガト……もう、もたない……」
「クソ! ま、まだだ! アアァァァァ! 」
マガトは意識を朦朧とさせながらも、理力の腕輪に魔力を通す。限界に近い体力の状態で、残り少ない魔力をを使う事はかなりの危険が伴うが、そんな事はもう関係ない。
ガン! ガン! ガン! ガン!
最後の力を振り絞り、両手を激しく交互に打ち付ける。
マガトの拳は、すでに血だらけで感覚もない。ニースの〈妖精空間〉もひび割れ、もう少しで力を失うその時だった。
ミシィ……
バキ……バキバキ!
岩盤の表面に幾多の亀裂が走り、水が噴水の様に湧き出始める。
「ニース! 」
僕は急いでニースを抱き締め、体をまるめると全身に気合いを入れる。予想した通り、高熱と水がすぐに合わさり……
僕は閃光と爆音に身体をゆだねた。
ああ……光りの中で誰かが……
笑顔で……
父さん…… 母さん……
エリナ……さん……
そしてマガトは意識を失った。




