異世界バトル・ロワイアル (8)
召還された悪魔の身体に、同じくカシラから揺らぎ出た〈黒いモヤ〉が吸い込まれた。
〈悪魔〉の身体は不気味にブルブルと小刻みに振るえ出し、まるで苦しんでいるかのようにも見える。そしてその禍々しい体のサイズを少しずつ縮めながら、動きを止めた。
「クフフフ……この姿で実体化するのは、何百年ぶりか……素晴らしい気分だ! 」
カタカタカタ……
(おいおい、マジかよ……)
そのおぞましき変化の行程に、カズは寒気と鳥肌が止まらない。 カズの〈寒気〉は、敵意を持つ者に対する、いわゆるレーダーだ。数や大きさ、強さなどを大まかに感じ取っている。
だが、これまで経験した事の無い感覚が恐怖と不安を呼び、思わず老人に声を掛けてしまった。
「お、おい爺……」
「なんじゃ? 」
「なんじゃ……って、アレ何? 」
「おそらくじゃが、……90パーセント悪魔、じゃな! 」
「いや、だから! 今シリアスだから! ……今シリアスだよねっ! それに悪魔召還って言ってたじゃん。 ハァ、まあいいわ。
……そんでこんな奴見た事無いし、早い話し俺達に倒せんの? 」
「まったくシャレが分からん奴よのう…… 」
「くっ! 質問に答えろ、このジジイ…… 」
カズと老人がこそこそと、何時もの言い合いを始めた時、死体で埋め尽くされたハズの気配の無い会場中央辺りから、男の声が聞こえた。
「いや~、素晴らしいショーだ! 〈転生者〉VS〈悪魔〉とは! オリビア、酒とツマミが進んでとまらんな、おかわりを……」
「しぃ~…… あなた、声が大きいわよ 」
「あ、これは失礼…… 」
「「!?」」
ーーキュイン!
悪魔が会場を振り返り、その目が光ったと思うと、一瞬にして光線が声の主達を凪ぎ払う様に貫く。
だが光線は、声を発した者達の身体を通り抜け、遥か後方の壁を撃ち抜き、焼け焦げた穴だけを作った。
「……なんと、私の魔法が効かないとは。……どういう事か是非とも説明して頂きたいですね」
「ふん! 悪魔などに教える訳がーー」
「フェルナンド君、もう構わんよ。 我々もフェアで行こうじゃないか。 何故に悪魔の魔法を受けたにも関わらず、〈魂〉は抜かれず、攻撃も素通りするのか! オホン、説明しよう。 まず第一に、我々はここには居ない!! 」
「なんと!? しかし、実体化していない精神体とも思えませんが…… 」
「フフ…… 何百年と生きている悪魔といえど、知らなくても無理は無い。 それは私が造り上げた魔道具! 古代魔法と科学の力によって生み出された映像ホログラーー 」
「……それか! 」
チュイン!
「あら!?もう少し話しーー」
再び発射された光線は、謎の男達の周辺にあった〈箱〉を狙い澄まし、次々に破壊する。 すると今まで上機嫌で話しをしていた男とその仲間の姿は、一瞬にして消え去った。
「クフフフ。 あの話し様、まさか客に転生者が紛れ込んでいたとは……
だが問題ありません。 まずは、あなた方を殺した後でじっくり探すとしましょう 」
会場から興味を無くした上位悪魔は、転生者二人を睨む。
「ふぉっ!ふぉっ! まったく驚きの連続じゃのぉ。 ……カズよ、ワシが隙を作るから逃げよ」
「あ? なんで……って!? 」
チュイン!
「くっ! コイツ! 」
悪魔の目から放たれる光線は左右別々に狙いを定め、必死に回避する転生者達を徐々に追い詰める。
(だか、狙いが甘い……これなら)
カズは光線のタイミングを読み、悪魔の懐に入る為、高速ステップで加速する。
「む、止めよカズ! 」
ガシッ!
「うあ!」
老人の制止も空しく、急激に伸びた悪魔の手は、誘いに乗ったカズの身体を鷲掴みにし、そのまま壁へ叩きつけた。




