真実の水晶は、甘くない。
いらっしゃいませ。
今日もありがとうございます。
じじいによる驚愕の表情を見て、クレアの眉がピクリと反応する。
(く……そろそろヒロインが出るパターンかと、期待してしまった……)
(だがそんな事は、もういい)
(……この【水晶】やはりポリグラフか、やっかいだな)
(問題は、オレが異世界から転移した事が、バレたらどうなるか……だ)
(他の転移、転生者がいるとしても、危険人物扱いされていたならマズイ)
(嘘も、絶対にダメだ。今日が、命日になるかもしれない)
(分からないなら誤魔化すしかない!)
極限状態に誘発されて、アクティブスキル【思考加速】が発動する!
……事は、なかった。
「……お……い」
「おい! ……おい、じじい! 返事をしろ!」
クレアの眼光が再び光る。
「は、はひっ! 耳が遠いもので……」
(……はっ!これだ! じじいの身体が持つパッシブスキル【聞こえざる者達】を利用して、この場を切り抜けてやる!)
もちろんそんなスキルは、ない……はずである。
自信を取り戻したじじいは、クレアの瞳をまっすぐ見据えた。
そしてクレアが、静かに尋問を開始する。
「じじい…… ワシの顔を見て、がっかりしただろう?」
「い、いや……そんな事は、……あ⁉ 」
『ぴか~!』
(パッシブスキル【聞こえざる者達】が、無効化された……だと⁉)
「……ピチピチの娘でなくて、悪かったの!」
「い、いや……その……あ⁉」
『ぴか~!』
水晶によって、真っ赤な光に照らされたババァの怒りの表情に、新たなる転移を今、じじいは、神に祈った……。
だが、何もおこらなかった。
「ロイ! こいつは、黒……じゃ! 今すぐ【無限牢獄】に……」
ロイは、素早く咳ばらいをはさむ。
「……フン! 冗談じゃ」
固唾を飲んで見守っていた【陽炎】のメンバーも、弛緩した空気にやっと、一息をついた。しかし次の瞬間、あっさりとクレアは、言葉をつなぐ。
「あのゴブリン達と、関係あるか?」
「え⁉ ないけど……」
それに釣られる形で、颯汰もあっさりと答える。
青く光る水晶は、地球で見た事もない様な美しい輝きを放っていた。