異世界、バトルロワイアル(5)
まずい……。
「ニース、ポケットに 」
突如として現れたあの魔方陣は間違い無くあの時のモノだ。 僕はガントレットをマジックポーチに素早く回収すると、みんなの所へ走った。 だが聞き覚えのある声が背中越しの魔方陣から聞こえる。
「え!? ちょっと待って! きゅ~ちゃんどういう事?
何でヤスがやられてんのよ。 」
「……わからない 」
「……アイツらがやったっていうの!? ねえ、君…… 」
聞こえて来たのは〈アカリ〉と〈きゅ~〉呼ばれた少女の声だ。 ひどく動揺しているように感じる。 だが今はそれでいい。 今はこの隙に建物から出るなり、少しでも逃げねば。
「どういう事か…… 聞いてるの! 」
ギャリィィ!
急に足下で何かが衝突した音が聞こえた。 間違い無くアカリによる、僕の足を狙った魔法攻撃だろうが、背を向けた状態で分かるハズもない。 しかしまたニースが守ってくれたようだ。
「え!? どうなってんの? 」
またも混乱するアカリ、その隙にマガトはレバに向かって叫んだ。
「レバさん、ここは任せて下さい! 父さんを頼みます 」
「マガト…… 」
今だ完全回復とは言えないレバとマガトの父親。 さらにマガトの父は目も虚ろだ。 この親子を守るのが自分の使命だとレバは分かっている。だが…… 全員死んでは意味がない。
「ガァ! 」
バガァァ!
船も近い。 ここは、マガトに任せて〈鑑定士〉である父親を救う!
爪撃で、壁に出来た大穴に父親を背負い、急ぎながら牙を噛みしめ、レバはマガトに言葉を残した。
「すぐ助けに戻る! 」
「フゥ…… ここから二回戦か 」
マガトは父親の無事を確信し、何故か心が軽くなった気がした。 だが、その自分の心理に思わず笑みがこぼれる。 無理もない、目の前の相手にまるで勝算は無いのだ。
疲労はある程度回復したが、魔力はもう尽きる。 魔道具を使えなければ、僅かな勝利への可能性すら無いだろう。
ギャリィィ!
また、魔法攻撃を弾いた。
無詠唱での氷の矢か……。
ありがとう、ニース。
「あんた…… 何をしたの? なんで魔法が通らないの? 」
「………… 」
警戒してる。
無理もない。
……なら!
マガトは片方の〈理力の腕輪〉を外し、あらたにマジックポーチから出したモノを、右腕に嵌めた。
「!? ふざけた事してくれるわね…… 」
僕が次に装備したのは、ガントレット。 あのヤスから奪ったモノだ。 もちろん名前も能力も分からない。 もし魔力を流せば、きっと魔力切れを起こして意識を失ってしまうだろう。
だが、どうだ?
アカリは言葉とは裏腹に、少しずつ後ずさりを始めている。
不思議な気分だ。
ろくな攻撃手段が無いにもかかわらず、妙な自信だけが湧いてくる。
「フフ。 コレに怯えてるの? 」
僕はガントレットを突き上げ、あの二人に見せつける。
「!? まさか。 それの名前も知らないアンタが使える訳ないでしょ! 」
「名前…… 名前は…… 」
なんだ?
なに……か、うっすら見えて……
「ほら、答えられない。 アンタにそれは…… 」
間違い無い。
「これは、挑戦者…… 〈挑戦者〉だ! 」




