異世界、バトルロワイアル (4)
ギュュ……!
〈理力の腕輪〉により強化されたマガトの握力は、金属性の板でさえねじ曲げる力を今持っている。
「グゥゥ…… 」
ものすごい握力で掴まれたヤスの腕は、マガトの指が食い込み、肉が裂け血がにじみ出し、簡単に振りほどく事が困難である事が分かる。
そしてヤスの苦痛に表情と供に不気味な音を立て始めた。
(は、早く折れろ! )
焦る気持ちを他所に〈理力の腕輪〉はマガトの残り少ない魔力を吸い続ける。
元々人並み以下であるマガトの魔力は、すでに限界が近い。
だがここでヤスを戦闘不能にしなければ、……無理をしなければ全員の命は無いと分かっていた。
ミシィ…… ミシィ……
(折れろぉぉ! )
ゴッ!
ヤスを睨み付け、更なる気合いをそそぐマガトだったが急な顔面への衝撃と供に視界が暗転。ヤスを掴んでいた手は離れ、後ろへ倒れ込んでしまった。
「やるね君。 ……お陰で片腕折れたッスよ……」
「ググ…… 」
頭突きを食らったマガトは、鼻血を出しながらも片目でヤスを睨む。密着状態だったせいか、今までマガトを守っていた障壁は発動しなかった。
しかし離れ間際、ギリギリでヤスの腕を一本でも折る事が出来たのは幸いだった。ヤスは苦痛に歪んだ顔で右腕をダランとさせている。
「フゥ…… 」
折れたのは利き腕か。
利き腕だとしてもまだ油断ならない状況だが……
「大丈夫…… 頑張って…… 」
また声が聞こえる。
その声に背中を押されるかのように、マガトは勝負に出た。
淡い光りを発しながら、マガトのブーツが地面を蹴る。 その光りの残照から逃げるようにヤスは懸命に回避ステップを踏み、壁を蹴り、ジグザグに距離を取ろうとするが、マガトはまたも正確に追い詰めて来る。
痛みを堪え、折れた腕を抱えながらでは逃げ切れない。 ヤスはステップを止め、両足を地面に踏ん張り、遂に片腕で構えを取った。
「見せてやるっスよ。 王者の力を! 」
『王者の連激』
左腕のガントレットから放たれる光り。 (王者)の能力によって、スコールのように降り注ぐ強力な拳の雨が、マガトの身体に全て降り注いだ。
……が、その攻撃全てを無視するかのように弾きながら、マガトの身体はヤスにぶつかる。
「な、なんで! 」
「オオオオ~! 」
マガトの体当たりと、後ろの壁に叩きつけられた衝撃によってヤスは倒れ込み遂に、沈黙した。
「や、やった…… そしてありがとう。妖精さん…… 」
マガトがポケットを開き、覗き込もうとすると中から可憐な妖精が飛び出し、姿を現す。
「私はニース。 あなたは、命の恩人…… こちらこそありがとう 」
「ニース……さん、僕はマガト。 よろしくね。
さてこれからどうするか…… 」
「早く逃げたほうがいい…… 」
「……そうだね 」
ニースの言う通りだ。 まだまだ気を休める事は出来ない。みんなを連れて船に戻らなければならないし、エリナさんも探さなくては……でも身体がもう限界だ……。
マガトは一歩踏み出したが、その歩みはおぼつかない。
「ん…… そういう事なら…… 」
『元気回復 』
暖かな光りがマガト達を包んだ。
「すごい…… 精霊魔法!? 」
魔法の効果により、マガト達全員の顔にゆっくりと生気が戻り始めた。
「がと…… マガト、そいつの装備を剥ぎ取れ。
目を覚ましたらやっかいだ 」
「分かった 」
僕は〈ヤス〉のガントレットを外し、レバさんは父さんを抱えた、その時だった。
オークション会場のステージで見たあの魔方陣が、僕達の目の前に……
……現れた。




