異世界、バトルロワイヤル(3)
「……さっきはよくもやってくれたな 」
突然入口に現れたヤスと呼ばれるガントレットの少年に、レバは殺意を剥き出しにする。
「ゲラゲラ! いいッスねえ…… 会場にいた犬男はあっさり死んじゃったんで、頑張って下さいッスね! 」
「ぐっ、ガキが…… 調子に乗るなよ! 」
レバの身体に異変が起こり始めた。
身に付けていた黒服は身長と共に巨大化する筋肉によってほとんどが破れ去り、剥き出しになった肌はオレンジと黒のまだらな体毛が伸び始め、身体の全てを覆ってしまった。
マガトから見て、レバは背中を向けている為に顔立ちまで確認できないが、その姿はまさしく〈虎〉。
(まさかレバさんが獣人!? しかも虎男だなんて! )
獣人の中でも最強クラスに位置する虎男。
俊敏な動きに加えて、凄まじいパワーは他の獣人に比べて圧倒的能力だ。
「へぇー、今度は……ネコッスか 」
……ピク!
「首輪が無いッスね。 ……野良ネコ! ゲラゲラ!! 」
ピクピク!
「死ねぇガキィイ!! 」
高速ダッシュと同時に打ち降ろされたレバの爪撃は地面の岩盤ごと目標を打ち抜く。
破壊の衝撃は最早爆発で、飛び散る破片と共に砂煙が舞い上がった。
「わわっ! 」
レバさん! すごい一撃で……
「……すご~ぃッスね、ゲラッ!」
砂煙の向こうで〈ヤス〉が笑っている。
そんな……。
……全然何も見えなかった。
この攻防事態、僕とはレベルが違い過ぎる。
「坊主、……いやマガト」
レバはヤスを見据えたまま、マガトに言葉を発した。
「今すぐに親父を連れて逃げろ……」
「レバ……さん…… 」
それは死を覚悟した男の言葉。
虎男というAクラスの冒険者にも匹敵する力がありながら、目の前の転生者はその力を異に返さない。
レバの判断は、正しいと言えるだろう。
「父さん、掴まって! 」
「う、ぐぅうう! 」
……ダメだ。
思ったより父さんの具合は悪い。
これじゃあ……
逃げ切れない。
……!?
……誰?
「…………せて……」
え? ……ほんとに!?
「ゴアァァ!! 」
レバの爪撃が連続して宙を舞う。
あとほんの少しで届きそうなレバの攻撃は一見実力が拮抗している様にも見えるが、ヤスに全て紙一重で見切られており、互いの表情も死に物狂いのレバと余裕の笑みを崩さないヤスで対称的だ。
そして結果はもっと圧倒的だった。
「ぐぼおぉぉ! 」
ヤスのカウンターがレバの腹に突き入れられ、身体がくの字に曲がった。
たった一発のボディーブローに沈む虎男。
転生者ヤスは前世においてボクシングの経験者である。
勉強が嫌いで、将来の生活が見えなかったヤスは早々とプロの世界に身を投じた少年だ。
魔法のガントレットの〈挑戦者〉と〈王者〉を打ちならしながら、ヤスがとどめを刺そうとした時、膝を着いたレバの背後に立つ新たな挑戦者を見つけた。
「へぇ~、……やる気ッスか 」
「やめるんだマガト…… 」
「その勇気は拍手もんスけど……」
「バカでしょ? 」
だがマガトは進む。
その足取りは堂々としており、弱者のモノでは無い。
(さっきの戦いを見てたクセに……何かあるんスかね?)
「今度は逃げなくてい~んスか? 」
タンッタンッ……
ボッ!
高速のステップと踏み込みからヤスは、左ジャブを繰り出す。
目標まではまだ距離があるが、拳によって衝撃波を飛ばす事など造作もない。
だが何故か……
大した相手では無いハズだが、本能的に距離を取って攻撃してしまった。
それでもマトモに喰らえば只では済まないだろう。
……終わりだ。
!?
「あれ? 何で…… 」
ボッ!
ボッ、ボッ!
更に二度三度、衝撃波を飛ばすがマガトの前で全て弾かれる。
だが魔法障壁の痕跡は無い。
「いったい何が…… 」
動揺するヤスを見て、マガトはブーツに魔力を流し一気に距離を縮めにかかる。
ヤスは困惑しながらも直接ジャブを打ち込み、右ストレートを放つがまたも〈何か〉に弾かれた為、高速ステップで距離を取る。
高ランクの冒険者でさえ一瞬見失ってしまうその自慢のステップに、マガトは完全に反応。
無防備であるヤスの両肘を、
ついに正面から掴んだ。
「ぐ、お前どうやって!? 」
「正直に答えるほどバカじゃない……」
「離せこの……!? 痛ッス!! 」
ヤスに照準を合わせた魔道具メガネ〈運命の赤い糸〉を軽く光らせながら、
マガトは〈理力の腕輪〉に魔力と……
怒りを込めた。
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