異世界、バトルロワイヤル
膝はだいぶ良くなったんですけど……
50度くらいから曲がりません(笑)
後遺症かな……(泣)
アカリは自分達を警戒する全ての視線を完全に無視しながら客席など、その部屋のすべてをじっくり見渡し観察し始める。
会場にいる客は全員がその素性を隠すため様々な仮面を付けているが……
アカリにとってはすべて悪人に見える。
そもそもこの世界の人間に自分達はテロ行為を行っているとはいえ、ある程度の分別はつけているつもりだ。目的も持っている。
だがこんな非合法の闇オークションに集まり正体を隠す輩など、ろくでもない人間のハズだ。
そう思うだけで憎しみも増し、アカリの目にはいっそうの力が灯る。
アカリ達の観察行為は弱者を威圧し黙らせ、自分達のエゴを押し通す、強者のそれであったが、先ほどの2つの戦闘と〈見られるだけ〉の行為に誰もその1歩、思っている一言は出ないでいた。
この侵入者の探しているモノは魔王の武器か、はたまた囚われの妖精か。
頭によぎる侵入者の目的だが、マガトはそれについて深く考える事は無く、今は消え去ってしまった魔方陣の力に心を奪われたままだ。
それは……人間だけの完全な転移。
そしてまだ、未知なる魔法の領域。 いや、もしかしたら特別なスキルが関係してるのかもしれない。
今だ現在、各国の魔法研究機関において転移魔法は研究の真っ只中だ。小さな物質を転移したり、小さな空間ごと転移する事に成功した話は噂で聞いた事があるが、どれも噂の域を出ないモノばかりで当てにならない。
新しい国、新しい港に着く度に魔道具の開発のヒントを求め、情報を集めて来たマガトにとって、目の前の事象はまさに正解解答を見せつけられた様なものだ。
すでにその思考は正解から過程を導く為にフル稼働していた。
「そうか……。 と言う事は…… 」
ステージの前でブツブツと、独り言を繰り返すマガトをよそに、その父親はカシラに何かを伝えようと動き出す。
「カシラ。……カシラ、コイツらーー 」
レバの後ろで隠れながら侵入者を〈見ていた〉マガトの父親が、こっそりと声を掛けようとしたその時。
「ん~~? あ! アカリちゃんいたよ~。 こいつだ~ 」
「目が…… 青くひかってるよ 」
〈キュ~〉と呼ばれていた少女が指で指し示した男。 それは……
マガトの父親。
「ナイス、キュ~ちゃん。 アンタが〈鑑定士〉ね。 アハッ! 私達が何者か分かった顔してるわ。 ……ウケる~」
アカリは手にしている杖を〈鑑定士〉に向けながらその身体を淡い緑に発光させ、にこやかに魔法の発動キーのみを言葉にした。
『百四十氷矢・創造』
ビキィ!
ビキィビキィーー
杖を中心にして、またも現れた魔法陣の色は〈緑〉。
だがその数は小さいながらも軽く百を越え、ゆっくりと頭を出し始めた氷の刃は、まるで輝くダイヤモンドの様に美しい。
その影響から辺りが凍てつき始め、近くにいる者の鼓膜が悲鳴を上げ始めた時、それは高速連射で発射された。
ドドドドドドドドドドドドッ!!
血に染まり、凍てつきながら身体を破壊されていく司会者や鑑定士などを、客席に座る者達は想像していたが……
「くっ、オマエエ~ッ! 」
「フ、困りますね~。 他のお客様に迷惑です 」
アカリのスキル魔法は、何故か在らぬ空へ向けて打ち出され、天井と屋根を破壊し尽くす。
なおも魔法の連射を続けるアカリの目の前には〈カシラ〉が立っており、その右手はアカリの杖を掴んで強引に空へと向けられていた。
「カシラぁ、そいつら〈転生者〉だ! 」
「なるほど。 しかし全員ですか。 ……この姿のままでは不利かもですね…… 」
カシラは〈鑑定士〉に返事を返しながらも、背中にある空いた左手に魔力を込める。
狙いは目の前で狼狽える、少女の心臓。
さっさと殺して次に往かねば……!?
「ほっ! 」
ズバァァ!
カシラは不意に飛んできた斬激を後ろにステップしながら避ける。 ……が、右腕は間に合ず、血を撒き散らしながら回転し、床に落ちた。
「ふぉ! この爺もまぜてもらおうか? 」
少女の隣から白髪の老人が音も無く不気味に近付いて来る。
「爺、遅い! 」
「よく言うわい。 いつも前に出すぎじゃ 」
カシラにより、魔法を強引に防がれた事はアカリに一瞬恐怖という感情を与えたが、いつもここぞという時に便りになる爺の援護に、顔に余裕が戻った。
(……この老人! )
「レバ、行け! 」
「ハッ! 」
レバはカシラの命令に従い、鑑定士を小脇に抱えると次にマガトへ向かう。
レバに下した命令とはすなわち、〈鑑定士親子〉の保護。
これは〈鑑定〉の力を組織に協力させる時に結んだ約束であり契約だ。
カシラは十分に侵入者達の実力を垣間見、自分1人で全ての問題を解決する事は不可能と判断。
まずは一番の保護対象である親子の避難を優先する事にしたのだ。
「マガトォ! 」
レバがマガトに手を差しのべた様とした時、ゾッとする様な危険を感知する。
すぐさまその手を引っ込め、抱えた鑑定士を後ろに回し、来るであろう衝撃に備えた。
ドガァァ!
レバは砕けた腕の痛みを感じる暇もなく、轟音と供に鑑定士ごと倉庫の外へ吹っ飛ばされた。
「父さん、レバさん! 」
ハッと我に返るマガト。
さすがに目の前で父親と知り合いを酷い目に遭わされたのだ。
自身の生存本能は嫌が応にも思考を刺激、それによって幾つもの行動選択肢が頭に浮かび出したが……
「いやぁ、アイツ意外とタフッスね~。 〈ボディ〉で腹をぶち抜くつもりだったんですけど…… 」
目の前にいる〈緑〉のオーラに包まれた、ガントレットの少年に
〈父親救出〉の選択肢は消去された。
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