その、侵入者。
ブクマありがとうございます(^-^)
「なんだ? 」
ニラは光点が消えた事に気づき、水晶を眺める。
「ん~? 」
コンコン!
水晶を軽く叩き、反応を見るも変化は無い。
「故障……じゃねえよな…… 」
外に居る仲間の数は8名。〈客〉の送迎用大型馬車が4台、身内のが2台、そのすべてが隣の倉庫で見張りを兼ねて静かに待機していた。
数は少なくとも、いずれも信頼の置ける部下なのだが、8名全員の反応が一瞬にして消えたのだ。
「…… 」
「お客さん。 今日の受付はもう済んだんですが…… 客じゃねえよな? 」
水晶を睨んだままのニラが独り言の様に呟く。
だが足音も無く、その5人はニラの前に立っていた。
「ふぉ! なかなか鼻の利く犬っころじゃな! 」
「バレちまったじゃねえか!? おいアカリ!
ちゃんと魔法掛けたのか!? 」
「掛けたわよ! ……早く切れただけ。もう、うっさいわねカズ! 」
「まぁまぁ…… そういう事もあるっしょ! ね! キュ~ちゃん 」
「うう…… カズとアカリちゃん、ケンカしないで…… 」
なんだコイツら?
ただ者じゃ無い事は分かるが……フザケてんのか!?
いつの間にかニラの前に立つ5人。
それは老人1人、少年2人、少女2人。
老人は白髪を後ろに束ね、剣を腰に差して笑っている。
少年の1人は目つきが悪く短い赤髪を逆立てている。名前は〈カズ〉か。
その隣で怒っている少女が〈アカリ〉だな。魔法使いか。
……胸が無い。
軽口を叩く少年は手にガントレットを嵌めている。体術使いだろう。
〈キュ~〉とか呼ばれた少女は見事な胸と目が隠れるほどの前髪以外、特長は無い。
「おい。 一応聞くが…… 仲間を殺ったのはお前らか? 」
ニラが目の前にいる5人を睨み、ドスの効いた声を出すも……
「アカリ! その態度は何だ? ケンカ売ってんのか!? 」
「うっさいって言ってんじゃん! やるっての? 」
(コイツら……)
「フザケやがって! 」
ドクン!!
ニラの全身の筋肉が、怒りと共にみるみる膨らんでいく。身長も50センチ程伸び、白い仮面も割れ、あらわになった顔は獣人の特長である耳と鋭い牙が伸び、まるで狼の様だ。
狼男と呼ばれる種族。その腕力と敏捷性などは鍛え抜かれた人間の3倍以上あると言われーー
「やれやれ…… ケンカするほどなんとやらじゃの……
」
ブゥンッ!
そう呟きながら老人が剣に手をやる……ように見えた。
……それが最後にニラの見たモノだった。
ーーーー
司会の男はほくそ笑む、その顔を仮面に隠し。
〈妖精〉の存在が客達に与えたインパクトは大きい。魔王の魔道兵器もそうだが、タブーとされているモノをあえて商品として扱えるかが闇のオークションの真髄と言えよう。
そしてこのオークションに参加し目の前の取引を容認した客達も同罪だ。絶対に秘密を厳守すると参加者との間には誓約魔法書まで作成しているが、顧客情報はこちらにある。法に厳しいアルティーナではこの〈情報〉が人質となる。
アルティーナの有力者は特別な商品欲しさにオークションに参加し、参加すれば我々と一蓮托生の運命を辿る。ならば我々と更なる取引を続ける他ないだろう。先ずはバカな貴族、金持ちから篭絡するのだ。
!?
……侵入者か。
司会の男が辺りを見渡し機嫌良く話しだしたと思いきや、その動きが一瞬止まった。
……このタイミング。
アルティーナ政府の者ならこのオークションは我々の負けだが、私の手下を捕縛せずに殺したとなれば盗賊の類い、もしくは同業者だな。
クク!
ならば、更なるショーにして利用してやる!
「皆様…… 〈呼ばれざる客〉がいらっしゃったようです。 ですがご安心下さい、この私が命に変えまして皆様をお守りしてみせます。 先ずは失礼! 」
動きを止めたと思えば、急に驚きの発言を繰り返す司会の男。
その男の手のひらは会場に向けられ、魔力の高まりを意味する青い光りを放ち出した。
「「ざわっ! 」」
それに対し警戒する会場の護衛達は雇い主、又は主人の前に立ち塞がるなどし、辺りが騒然となる。
「狼狽える必要はありません…… 」
『大障壁』
司会の男から魔法の言葉が発せられると、まるでカーテンの様に青い光りが客席を包み込んだ。
ーーーー
「やれやれ、こんなモノどこで拾ったのか。 飼い主に注意せねばのお~ 」
老人の眼下に見えるは首と胴体に別れたニラの死体。 だが、獣人変化した筈の体はもとの人間サイズに戻っていた。
「てっきり獣人かと思いきや、呪われた魔道具なんぞ使いよって 」
老人の鋭い視線の先にあるのは壊れた〈首輪〉型の魔道具。
その血に濡れた魔道具は、破損した箇所から呪われた道具の証しであるわずかな黒い〈モヤ〉を発していた。
「え!? もう殺っちゃったの? ちょっ、俺の番じゃなかった!? 」
「ハッ! カズマヌケ~。先越されてやんの~
」
「てめぇ、アカリ! お前のせいだろが! 」
(まったく、この2人は…… )
呆れる老人の前を通り、ガントレットの少年が片手で重厚な扉を簡単に開き始める。
魔法によるロックが掛かっているのか、扉はバチバチと音を立てながら青い電流の様なモノを放っているが少年は意に返さない。
「早くしないと逃げられるっスよ、お二人さん
」
「あ、ヤス! 俺が一番乗りだ! 」
赤髪の少年が慌てて〈ヤス〉と呼ばれた少年に叫びながら扉を駆け抜ける。
「皆殺し~! ……って、何だこりゃ! 」
だが、扉を抜けたカズの前に広がる景色。
それは薄暗く、かといって夜でもなく。
無機質な広い部屋のような空間だった。
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