その素晴らしき、魔道兵器。
(クク。誰も不満を口にしない。良いペースだ)
組織の〈カシラ〉である司会の男は満足げに会場を見渡す。このオークションでは商品を売る事以外でも大切な目的があった。それこそアルティーナ国内に置ける〈アスコリ〉の立ち位置である。
他の国々では、裏の世界に置いて力を持つ事が順調に出来たのだが、アルティーナではそう簡単に事を運ぶ訳にはいかなかった。それはアルティーナが圧倒的な軍事力を持つが為で、一旦敵と見なされれば組織の壊滅もあり得るからだ。慎重に事を運ぶ必要がある。
だからこそ、特別な商品を用意したのだ。
アルティーナから集まった有力者達の前で〈アスコリ〉の力の象徴である商品を見せつけ、少しでも優位な立場を獲得しながら更なる利益に繋げる……。
その大一歩としてマガトの存在を利用した。
マガトの父親とは協力関係にあるが、マガト自身にカシラは興味は無い。
今回の見学も父親に恩を売るぐらいにしか考えてなかったのだが……上手くいった。
物事を優位に進めるにはいかに相手に肯定、恭順させるかだ。
ここで何のクレームも入らなかった事は、小さな事だが次の手に確実に繋がるだろう。
司会の男はおもむろに〈三八式銃魔〉を掴むとマガトの前に立ち、それを見せ始める。
「さあ……君も初めて見るのだろう。 どうかね? 感想を聞かせてくれたまえ 」
「八、ハイ! ……素材となる材質さえ分かりませんが、激しい実戦と幾多の年月を重ねている筈なのにキズ一つ無い。 間違い無く〈自動修復〉の能力を持ってます。 また一見洗煉されたデザインに見える飾り模様は……古代魔法語と精霊魔法陣を複雑に絡み合わせているようです! 初めて見た! なるほど……精霊が制御に関わっているのか……。 ならば生み出される魔力エネルギーはとんでもない事に。 ですがこれ程の魔力回路の解読は不可能に近いかも知れません。 いや待てよ…… ひょっとしたらーー 」
「ありがとう! 十分だよ 」
(……まさかこれ程とは……素晴らしいよ、マガト君。 おかげでモノの価値も分からないバカ共にも十分伝わっただろう。良い演出となった )
マガトの言葉を遮りながら、司会の男は高揚して客に訴える。
「では皆様に素晴らしいこの商品の魅力が伝わった所で、さっそく参りたいと思いますが…… もう一つ紹介したいモノがあります。 お宝、カマーンナ! 」
「「ざわっ! 」」
なぜかもう一つの商品商品を紹介する、予想外の展開に会場がざわつき始め、皆がそれぞれの想像を始めた頃、助手の男が小さな檻を持って来た。
木製で出来たその小さな檻は結界が張られており、僅かな光りの残照が見てとれるが……中に閉じ込められていたのは四枚の羽をと鮮やかなグリーンの髪を持つ少女の〈妖精〉だった。
「「ざわざわ 」」
口角をやや上げながら、司会者は会場のコントロールを始める。
「皆様、お静かにお願いします。」
「んん。 ……この中に居るのは〈妖精〉ですが、ただの〈妖精〉ではございません。 皆様は特別なスキルを持つと言われる〈転生者〉をご存知でしょうが、この者こそ妖精に転生した〈転生者〉なのです。」
……何て事だ。
〈転生者〉というのは異世界に住む人間が、何かしらの原因で死亡した後、この世界の人間、または獣人などへ転生した状態を指している。
それら転生者は必ずと言っていいほど珍しい〈力〉を発現するため、古来から転生者は悪しき神が遣わした邪神の使徒とされ、迫害の対象となって来た。
しかし過去には異世界人による国が建国され一時世界と共存した時期もあったらしいが、その国王が魔王化し戦争を始めた為、連合軍に国ごと滅ぼされる事となる。
その後、生き残った者達も危険分子として狩り続けられ、今日に至っている。
……その転生者がまさか、妖精になっているとは。
妖精はその数も少なく、また世界的に神聖視されているため、奴隷制度が盛んな国と言えど表だって扱う事は出来ず、捕獲や売買などもタブーとされている存在だ。
ただ、捕獲しようとも精霊魔法の使い手である妖精を捕まえるなど至難の技である。逆に生半可な冒険者など、すぐに殺されるのがオチなのだ。
稀に妖精に気に入られ共に暮らす人間もいるが、その妖精の意思が尊重されているだけである。
そんな〈力〉を持つ、転生者と妖精が合わさったのだ。 その力や価値は計りしれない……。
ーーーー
「レバの奴、遅いなあ……。 アイツ自分も見入ってんじゃねえか!? 」
ニラは面倒な事をレバに押し付けたつもりだったのだが、なかなか戻って来ないレバが、だんだん羨ましく思えて腹が立ってしょうがなかった。
「くそ。俺が行けば良かった……」
だがここを離れる訳にはいかず、悪態を突きながらも椅子に座り、水晶をぼんやり眺めてはため息をついていた。
……その時。
外に待機してた筈の仲間の光点が消えた……。
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