その危険なオークション。(2)
「「おおおおおお~! 」」
マガトとエリナの気持ちとは別に、会場内に衝撃の波が走った。
「2000、2500!、3000ーー 」
司会者は会場に向かって指を指し、次々に客に付けられた値を叫ぶ。 マガト達は更に唖然とするばかりだ。
「5000! ーーフフ。 皆様、知らない方がいるかも知れないので、とある昔話を致しましょう。」
なんだ?
「昔あるところに貧民の若者がおりました。 彼は日々思います。何時になればこの空腹のお腹と貧しい気持ちは満たされるのかと……。 」
……ゴクリ。
「……そして彼はついに〈聖なる布〉を手に入れ、やがて一国の王へと成り上がりました! ……良き話です 」
「「おお~! 7000!、いや8000だ! 」」
いや、ちょっと待て……なんか色々大事な説明が抜けてたんだけど……もういいか。
「ーー10000!! ……他に誰かいらっしゃりませんか? ……では誰も居ない様なので、この〈聖なる布〉は金貨10000にて落札です! 」
「「おおおお~!! 」」
……信じられない。〈ぱんつ〉が金貨一万枚になるなんて……
アホか……。
僕とエリナさんは思わず顔を見合わせた。 エリナさんは苦笑いしてるけど、多分僕もそんな顔をしてるんだろう。
〈ぱんつ〉を落札した人はこの会場内で1番高貴なオーラを放っている、男女二人組だ。その後にはもちろん護衛が付いているが、5人も居た。
間違い無く大貴族だろうが、あんなモノいったい誰が何に使うのだろうか。 ……う、いやな事を想像してしまった。 ……おえぇぇ。
「では…… 続きましてぇぇ! エンッツリィィ~ナンバー2番! お宝カモーン……ナッ! 」
次の賞品が台座に乗って運ばれて来る。
ふぅ…… 良し、さっきの事は忘れよう。 さて、次の品物は……ん?
「「ざわざわ…… 」」
ステージに設置された台座の上にはガラスのショーケースに入れられた黒い筒状の物がある。長さは50センチほどか見ためは短い杖の様であり、太さは大人の腕くらい。そして先端近くに杖の取っ手のような出っ張りがある。
マガトはシンプルながらもその洗練された不思議なデザインに、言い知れぬ魅力を感じた。
「どうですか? 初めてご覧になるでしょう。 ……ですが皆様の中には耳にした事があるのではないですか? 」
会場は先程までの熱気を忘れたかの様に静まり返り、司会者の男の次の言葉を待った。
司会の男は会場を見回し、ジックリと客を焦らした後で静かに話し出した。
「かつて〈魔王〉と呼ばれ、〈勇者〉と激しい戦いを繰り広げた者がいました……。 その〈魔王〉の右手に握られていた魔道兵器。 雷鳴の様な轟音を轟かせ、あらゆる物を破壊したと言われる……それこそが、この〈三八式銃魔〉! ……なのです 」
先程とはうって代わり静まり返った会場の客達は息を飲むばかりだ。 それはそうだろう。 今や当時の伝承は殆んどが失われ、残る情報も各国が機密扱いしている。 そのまさに機密そのものがオークションに出品されるなどと誰が予想出来たのか……。
「我々が試した結果、使用する事は出来ませんでした。もちろん古い物です故、使用可能かどうかなどは分かりません。 また、壊れているのかもしれません。ただ、これ以上は我々が所有するより有効活用してくれる方がアルティーナには居るのではないかと……この〈モリザ〉で出品する事になりました。」
なんと、あの〈魔王〉の武器か……。
「では早速鑑定をお願いします! 」
先ほどと同じように父さんが…… いや、鑑定士が詠唱を始める。僕の胸のドキドキは心臓が破裂しそうなほど激しくなっていく。
マガトは父の影響もあり魔道具が好きだ。
子供の頃から色々な道具に触れ、知識を親から吸収し遂に魔道具にハマッた。 とにかく試してみたい衝動に駆られ、魔力も少ないのに無茶をし、気絶しては父を困らせるくらいだった。
最近ではそれも落ち着き、売れない魔道具と頼りない父に肩を落しながら暮らしてきたが……
疼く、……久しぶりの感覚。
「「おおおお~!! 」
「出ました! なんとレア度は、〈L〉!! 〈伝説級〉です!!」
すごい。 だが当然だろう。 魔王が異世界人であった事は誰もが知っている。 その魔王が異世界とこの世界の理を読み解き、融合させ、数々の素晴らしい魔道具を創造したはずだ。
見たい。
もっと近くで……
触りたい…… 伝説の魔道具を。
遂にマガトはその危険な1歩を……踏み出した。
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