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滅びの街。

ズドオオオオ!



轟音と共に、部屋の中を舞う木片と砂埃。


高速で発射された魔剣〈フラガラッハ〉はエドガーの身体を突き抜け、さらに後ろにある壁をも破壊した



……かにパベルには見えた。


だがパベルの目の前には、方膝を着いた無傷のエドガーが此方を睨んだままでいる。


「……フフ、よく避けたな。 だが今度はヒント無しだ 」


先程の攻撃は魔剣が見えた位置からのスタートだった。故に魔剣が動く瞬間だけに集中する事で今のエドガーなら避けれる。


だが次は魔剣の姿が見えない。壁を突き抜けた魔剣が何処にあって、どこから狙って来るのか分からないのだ。


それはスキルを使い馴れていないエドガーにとって、大きなプレッシャーとなった。




生きてパベルに勝ち、カールを早く助けなければ。



生への執着。


恐怖と困惑。



そう切に思う気持ちがエドガーの心に少しだけ、さざ波を立てた。



恐怖が迷いを生み、


迷いが更なる恐怖を育てる。



「さぁ! 血を流せ! 悲鳴を上げろ! 」


ービク!ー



ドガアァァ!



ドガ!ドガ!ドガ!



ドカカカカカカカカカカァ!



再び部屋の壁を突き破り、魔剣がエドガーを襲う。

予想出来ない壁の向こう側から、木片を撒き散らしながら連続して高速飛来する魔剣は、もはやエドガーの不安定な〈全身身体 最強化〉(オールスペシャル)では、完全に避ける事か不可能になる。





……ポタッ



……ポタタッ



「う…… うう…… 」



彼女は降り注ぐ、〈赤い〉雨の中ででも、立ち止まっていたのか……



そう思わせる程に、エドガーは全身を切り刻まれて血に濡れていた。


身に付けていた革の鎧は切り取られ、いつも付けている無骨な仮面も既に無く、両目はその機能を完全に失ったのか、閉じられている。

盾を持っていた筈の左手は肘から下が無く、心臓の鼓動と共に血液が流れ落ちる。



「素晴らしい。 素晴らしいぞ! 考えを改めよう。 お嬢さん、君は間違いなく〈強者〉だ。 この伝説の魔剣〈フラガラッハ〉の攻めをここまで避け続けたのは君が初めてだ! 」




「………… 」


「ん? なんだって? 言ってみろ 」


力の無い、懇願するような声でエドガーは確かに言った。




「……お願い 」


何か言い掛けたエドガーに問い返したパベルであったが、今更意味の無い命乞いかと、可笑しくて思わず顔が歪む。



「ん? 」


だがその直後、その言葉は自分に向けられたもので無いと、悟った。



バコォォ!!


突然、屋敷の外壁を破壊しながら、外から突き抜けてくる大剣と大男。 〈フラガラッハ〉はすぐに反応し大男の腹に突き刺さるが、大剣は止まる事なくパベルの右肩近くで障壁に激突した。



「……見てたぜ、お前の空飛ぶ魔剣をな! 」



ケビンは、腹から込み上げてくる血を無理やりに飲み込み、大剣を捨て、自分の腹に刺さり血に濡れた〈フラガラッハ〉の柄を両手で握る。


「む!? 貴様ぁ! 」


パベルは魔剣を動かそうと念ずるが、大男に握られた魔剣はケビンの渾身の力によって、ブルブルと振るだけで動かない。



「伝説の……魔剣を握れ……るなんて、やっぱり俺は……ツイてるな 」



「……ありがとう……ケビン……さん 」


エドガーは、いや……


最早エミーとなった傷だらけの身体の中で、唯一庇った右目を見開き、残り少ない魔力を燃やし始める。



「神さま…… ボク……の、願いを! 」



再びスキル発動により、輝き出したエミー。

パベルは言い知れぬ〈恐怖〉を感じ、思わず後ずさりを始めた。



障壁を破壊し、奴の心臓に全てを叩き込む。


ただ一点だけの願い込め、エミーは剣を突き入れる。



ガキィィィィ!



やはり再び障壁に阻まれるミスリルソード。


しかし、諦めずに尚も全ての力を込めるエミーの左肩を、後ろから誰かが支える!



……そして剣を持つ右手に


〈優しくも力強い手〉が、添えられた。



エミーには振り返らなくても分かる。




それが〈カール〉だと!




ーーーーバリィィン!ーーーー




障壁を突き破ったミスリルソードは、驚愕の表情をしたままのパベルの心臓を突き刺し、そのまま反動で壁を破壊しながらパベルの身体を屋敷の外へ吹っ飛ばした。








……部屋の中はそれまでの激しい戦いが嘘のように、静寂を取り戻す。



時折、屋敷に燃え移った炎が、


……パチパチと音を立てるだけだ。



そのな部屋の中でエミーはカールの腕の中、満足した表情を浮かべていた。




……終わったぜ


やっとヒゲを倒しただけだけど……



……もう動けない



「ありがとう…… カール 」




エドガー……


いや……


「何言ってんだ、頑張ったな…… エミー 」



「……フフ」


フッ ……何笑ってんだコイツ……



「こんなの、なんだか……恥ずかしいね。 シャリーが怒っちゃうね 」


「別に…… 気にしなくていいよ 」



そうだ、シャリーは……



「ボクは、君達がずっと羨ましかった…… 」



「へっ…… お前だってお面してなきゃ、可愛いぜ。 すぐにモテモテじゃね? 男も選り取りみどりさ! 」



「フフ。 そうかな? ……できたらカールみたいな人がいいな…… 」



何言ってんだ……バカ野郎。 エミー……





「カール…… ボク、死んだらどうなるの……かな? 」



「……大丈夫だ。

今度は普通の女のコに生まれて、幸せに暮らせるさ。

それに楽しい事がいっぱい待ってる。 好きな人ができて、デートして、結婚なんかしたりして…… だから…… 」






「だから…… 」






……なんでだよ。






「くっ ……エミー 」





もうエミーは何も喋る事は無く……



安らかな表情のままに







まるで眠っているかの様だった。









ーーーー






「グオオ…… 」


屋敷前の広場で、剣が刺さったままのパベルはまだ生きていた。



(……不味い、魔核が損傷した。 魔力回路も切断されて……)



(飛空挺を呼ばねば……)



パベルは横たわったまま、振るえる手で通信魔道具である水晶を目の前に握る。

だが通信を始める前に水晶に歪曲されて映った向こう側の景色は、多くのワイバーンに取り付かれ此方に向かって下降する飛空挺だった。



「……バカ……な 」


思わず水晶を落とすも、既に目前まで迫って来る飛空挺は、所々から火と煙りを吐き、この場に間違いなく落ちると思えた。



「早く、に……逃げ…… ぎゃあ! 」


地べたを這いずりながら、もがくパベルの背中に槍が突き刺さる。


いつのまに現れたのか、数匹のゴブリン達はパベルを取り囲み、次々と槍を刺していく。



ザク!



ザクザク!



ザクザクザクザク!



「おぁ…… おまぇ…… やめーーーー 」



「「ギャギャ! 」」


やがてパベルの声は聞こえなくなり、ゴブリン達の笑い声がした後、



巨大な飛空挺はゴブリン達が居た屋敷前広場に墜落。





ドオオオオオオオオン!!






全てを飲み込み、大爆発を起こした。






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