ノイアーはツイている!
先日、一人で東京へ行ってきました。
都会は人で溢れてますね。人一人の存在価値がとても薄くなる様な気がして、虚しくなりました。
私の目的地は渋谷にある葬祭場でした。
親戚で唯一の幼馴染みである友人に、最後の別れをしに来たのです。
まだ幼い子供と奥さん、御両親を残し、この世界から若くして旅立ちました。
こんなに泣いた葬式は初めてでしたが、あわよくば彼が新しい世界に転生し、元気でいると思いたいです。
長々と失礼しました。
ドド! ドドッ!
ノイアーの操る馬が、草原を一心不乱に走っている。
すでにガヤの街はおろか、避難に使われていた馬車の車列も今はもう見える事はない。
あれからどれくらいが経っただろうか。
上等とは言えない貧粗な馬は、もはや疲労困憊の様子だった……
(もう少し、もう少しだ。 頑張ってくれ…… )
ノイアーはこの辺の地理にも詳しい。伊達に冒険者を長くやっている訳ではないのだ。街をつなぐ街道は、その距離を考慮して少々遠回りになっても、少なからずオアシスを経由するように出来ている。
ここまでは旅なれた者なら誰でも知っている事なのだが、熟練冒険者達はさらにいざという時に使える、街道から離れたオアシスをいくつか把握していた。
(見えた……)
暗闇の中にあってそれは、月の明りに照らされた異様な雰囲気を漂わす二本の巨木。周辺の魔素を吸って育ったその木の高さは100メートルを越えてなお、成長中である。
(あの角度からすると……少しこっちか )
ノイアーは二本並んだ巨木の位置を確認すると、馬の進行方向を少し修正する。
やがて馬は何かに引き寄せられる様にスピードを上げた。
疲弊した馬の鼻を擽るのは、オアシスの匂い。
体の限界まで来た渇きを潤す為に、速度を上げて走る馬は背に乗せた主人共々、周辺に対する警戒心などすでにどうでも良くなっていた。
やがて小さな流れのある小川にたどり着いた馬は、倒れ込ながらも川の中に顔を突っこみ、狂ったように水を飲んでいる。
ノイアーも川の水で喉を潤すと近くの木に身体を預け、休憩に入った。
ハァ…… ハァ……
もう大丈夫か?
いや……分かっている。 気を緩めちゃいけない。
だがもう少し……
あと少し……
「おや…… おまはん一人かえ? 」
……!!
ノイアーの背筋が凍り付く。
悲鳴を上げていた身体は何もかも忘れた様に瞬時に反応し、膝を付いた状態でありながら剣はすでに抜かれていた。
「何者か!? 」
ノイアーの慌ただしい動きと殺気を完全に無視する形で、裸の少女はゆっくりと近づいて来た。
……何だ? 子供?
「ここにたくさん来ると思っておったが……残念じゃな 」
人間に見えるが、身体が緑色……だと?
「まあええ。 ここまで逃げて来られる体力と知力、そして精神力があるのじゃ 」
小さい角まである…… 新……種か?
ノイアーは少女を警戒しつつ、周辺の様子を確認する。
馬は運良く逃げていない。遠巻きに此方の様子を伺っていた。この少女以外に魔物の気配は無い。
……いや、そんなハズは無い。 この少女は一人歩いてここまで来たと言うのか?
わからない。
「これこれ。 そんなに怯えずともよい。 これから気持ちいい事が始まるだけじゃ。 おまはんはツイておるぞ…… 」
緑色の肌をした少女の口角が上がる。
「おい。 この指を見るがよい 」
少女が人さし指を此方に向ける。
(何だ? いや、何かマズイ。 逃げねば! )
もはやノイアーに考える猶予は無かった。剣を前に構えつつ、左手で腰のポーチをまさぐる。中には確か閃光玉がいくつか入っており、それを握った時だった。
ズンッ!
ノイアーは頭に軽い衝撃を感じた。
「ガッ ……アアッ…… 」
見えるのは自分の額から真っ直ぐに繋がっている、少女の指。
恐ろしい。
何故ならノイアーには全く痛みを感じる事が出来ないのだ。
槍の様に伸びた少女の指が、ノイアーの頭を突き刺しているのに。
「さて、始めるとするか…… 」
接続!
「あハァァぅ ……ううぅ! 」
「ククッ。 来た来た! 色々と教えて貰うぞ、この世界の事をな! 」
頭を突き抜かれたノイアーは、ピクピクと痙攣を起こしながら、苦痛とも快楽とも取れぬ様な表情に染まっていた……
ボチボチ頑張ります。




