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ノイアーの大脱出! (2)

(さぁ、考えろ! 次にゴブリン供はどうする!? )


ノイアーは、今まで得た冒険者の知識と経験を元に、頭脳をフル回転させる。



少しばかり強い奴が混ざった上に数が多いだけで、所詮はゴブリンだ。やれる事など決まっている筈。



奴らの狙いは何だ?



決まっている。


女と食糧となる人間。


ならば出来るだけ、殺さずに手に入れたい筈だ。




では、いつ襲って来る?



決まっている。


逃げられる前……?



ならばまずは、俺達の足を止める……か?



どうやって……?


……死体!?



「しまった! 」


馬車の車列は止まったまま(・・・・・・)だ。



先を急ぐ様に言ったにも関わらず……


だが特に先頭付近で騒ぎの様子は無い。



いや仮に、護衛が音もなくすでに殺されているとしたら……



ノイアーは急ぎ、最後列にいる仲間のもとへ馬を走らす。

そしてすれ違う馬車の列に、鞘付の剣を叩きつけながら叫んだ!


「ゴブリンだ! 馬車はダメだ、逃げろ! 」


疲れきって眠る者もいた馬車の中の女達は突然の知らせに、悲鳴を上げながら次から次へと馬車から飛び出し、宛てもなく逃げ出し始める。


これは一種の賭けだ。もし間違っていたなら、ノイアーは大切な時間と冒険者としての信用を全て失うだろう。




「ノイアー、どうした!? ゴブリンか? 」


「イギータ、レネ! 今の内に馬を手に入れろ、〈脱出〉だ! 」


「わ、分かった! 」


仲間の二人は手際よく、馬車から馬を引き離しに掛かる。皆には、いざとなれば住民を見捨てて逃げる事を確認し合っていた。

そしてその間、ノイアーは暗闇の中で逃げ惑う人々の様子を、落ち着いて観察していた。



どうしたゴブリン、出てこい……


いるんだろ!?



「「……キャアア! 」」




……ククッ


遠すぎて悲鳴しか聞こえないが、やはりいたか。



ノイアーは冷や汗を流しながらも予想が当たった事に安堵し、笑いか込み上げてくる感覚を押さえきれずにいた。


そしてまた、思考する。


馬車の周辺は先ほどの静けさと打って変わり、大勢の女子供があちこちで走っているが……


「追い立てられている……のか? おい……準備は出来たか? 行くぞ 」


「ノイアー、どこへ逃げる? 」


「……住民は東に追い立てられている。 行けば捕まるだろう。 逆の西側のゴブリンを突破する。 付いてこい! 」


これはゴブリンによる〈狩り〉だ。 まるで羊の群れを追い立てる牧場の犬の様に、ゴブリンは人間を追い立てる。


逆に何故そんなやり方をするのか……


きっとゴブリンに、数はいない。



数が揃っているならとっくに包囲して、姿を見せているはずだ。




ドカカ……ドカカ!


3頭の馬が一塊に西へ進む。



……居た。 思った通り数が少ない。



ゴブリンは横1列に並んでいる状態でゆっくりと此方へ歩いている。数が少ないため間隔も10メートルずつ程空き、スカスカだ。


良し、これなら……?



何だ? ゴブリン、何を持っている!?


直前で嫌な予感を感じたノイアーは馬のスピードを急激に緩め、ゴブリン達を凝視する。 だが、イギータとレネは目の前のゴブリンを突破する事に集中し、ノイアーの異変に気付く事は無かった。

馬上から剣を構え、ゴブリン達の間に差し込む様に馬を操る。



ノイアーは仲間に声を掛ける事はしなかった。 ハッキリと何かが見えた訳ではない。


確信も無いし、遅れた事で逆にノイアーだけがリスクも高くなった。


だが、確かめねばなるまい……



自分の勘と言う奴を。



イギータとレネにとって、それは簡単な事だった。

二人供馬を操るのは得意であったし、よく二人で依頼をこなし、仲も良かった。


お互いが邪魔にならないよう、合図も無しで侵入コースは完璧だ。ゴブリンの槍も、このスピードなら届かないだろう。

気になるのは飛び道具だが、弓を構えていそうなゴブリンは見当たらない。もし飛んできたとしても、剣で弾き返すつもりだった。


……そしてゴブリン達の間を抜けようとした時、二人の視界が急激に反転した。


ズシャアア!



(やはり! しかしロープを張って馬を転倒させるとは…… )


ノイアーはその光景を目の当たりにし、ゴブリンの知能に驚きながも自分にツキがある事を確信した。


あの二人は直前までゴブリン達が握っていたロープに気が付かずに、今頃重症を負っているだろう。


だが俺はどうだ。


今まさにゴブリンの頭上を飛び越え、ついに突破した。


やった……




おれは生き残ったんだ……







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