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ノイアーの大脱出! (1)

お待たせしました。



ーー 時は少し逆のぼり、北門前周辺 ーー



街からの脱出を試み、集められた馬車などは既に30台を越え、その中には女子供ばかりがすし詰めになって乗っている。

多くの避難する人々が集まり、騒然とした門の前でベテラン冒険者ノイアー(55)はケビンが来るのを待っていた。


「まだか…… 」


既に脱出の準備は順次整い、先頭の馬車に乗る兵士は合図を待ちきれずに、こちらの方ばかりを気に掛けている。

その視線を無視し、しばらく街の中心方向を眺めていたが、これ以上は避難事態に支障が出るだろう。


「偵察に出た者からの合図は? 」


ノイアーの問いに、隣にいた兵士が答える。


「未だにありません。 ゴブリンはまだ周辺にいない様です 」


少し前に、偵察隊を組んだ数人の兵士達はミズリへと続く街道周辺を調べに出た。そこでもし、ゴブリンなどの脅威となる魔物を発見した場合、火矢を使ってこちらに合図を送るか、即時退却する様に指示してある。


つまり、今は安全であると言う事だ。


「仕方ない。今のうち出発する 」


ノイアーはケビンを置いて行く事に然したる罪悪感は無かった。


アイツがリーダーと言っても人の良さに漬け込んで無理矢理にさせているだけだし、何回も一緒に依頼はこなしたが、そんな事はこんな仕事をしていれば、珍しくも無い。



……だが、ケビンは〈ツキ〉を持っていた。



討伐依頼に失敗し魔物に囲まれた時も、


ダンジョンで道に迷い、毒に苦しんだ時も、


いつか傭兵として戦争に参加した時も、


何故か助かった。 ……いや、ケビンと供に行動していたからこそ生き残れたと思っている。


この世界は強かろうが弱かろうがまずは生き残る事が一番重要であり、だからこそ大切なのは〈ツキ〉を呼び込む事ができるケビンが必要だとノイアーは考える様になっていたのだが……


(さすがにケビンにはもう、ツキが無いって事か……)


ケビンは来ない。

いや、来れないのか……


「どちらにせよ、サヨナラだ。 アイツにまだツキが残っているなら、追いついて来るだろう…… 」



かくして、脱出を試みる馬車の集団は出発した。


その台数は50台に登り、誰も通る事のない夜の街道を2列になって突き進む。更にその後ろを馬車に乗り切れなかった大勢の住民が、必死に付いて来ている。


この集団の護衛に対してベテラン冒険者達は先頭と殿に分かれ、列の中ほどの馬車に数名の兵士達が同乗していた。

後は残酷な様だが〈街〉事態が、囮と時間稼ぎになってくれる筈だ。




……ドオオォォンン



遥か後ろに見える様になったガヤの街から、地鳴りを伴った異様な音が聞こえる。


「何だ? ……爆発? 」


街の上空は、いたる所で起きているであろう火事によって、その空を赤く染めていた。


……どちらにせよ、ガヤはもう終わりだ。


遠くから見える絶望的な景色に、ノイアーは冷めた表情を崩すことはない。

ノイアーにとって街の壊滅は、驚くべき事ではあるが愛着があった訳では無く、無事に街を脱出できた事に安堵しか、していなかった。


確かにこの先、ミズリの街まで400人近い住民の護衛を続けるのは困難を極めるだろう。


食糧などもまるで足りないし、夜営も無理だ。

護衛の数も足りない。


そして途中、魔物の集団に襲われれば……



「フン! ……だがこのオレだけは生き残ってみせる 」


街を遠い目で眺めるノイアーの呟やきに、誰も気が付く事は無かった。




「ん……? 」


やがて少しばかり進んだ先で、先頭の馬車から急に停まり出す。


……魔物の気配は無い。


ノイアーは馬車から降り、腰の剣に手をやりながら前方から走って来る兵士に問い正した。


「ハッ、それが前にいる冒険者の方が、すぐにノイアー様を呼んで来る様にと……」


「分かった、すぐ行く 」


ノイアーは小走りで、先頭にいる仲間の元へ急ぐ。


(……何だ? )


先頭の馬車の近くで、仲間の冒険者達と兵士が輪になって話をしていた。


「どうした……!? 」


その輪の中心で、兵士だったと思われる損傷の激しい死体が横たわっていた。



「ノイアー……どう見る? 」


ノイアーは死体に近寄り、じっくりと観察する。


(マズイな…… )



「……死体には鋭利なもので切られたり、噛み千切られた様な後があるが、 ……致命傷は首に刺さっている、この矢だな。 ん? ……これは? 」


死体の腹の部分に……


「これは書簡、という事はミズリに向かった筈の伝令か? 馬はいないか……」


「つ~事はミズリからの応援は来ないって事か…… 」


誰かが呟いた。



「ああ…… とにかく先を急ごう、すまんが馬を借りる。 後ろからついてくる住民を見て来る…… 」



ノイアーは馬に跨がると、列の後ろ向けて駆け出し食糧を積んでいる馬車の兵士に話し掛けた。


「すまんが食糧を少し貰いたい。 徒歩で後ろを付いて来る人々に分けてあげたいのだ 」


「分かりました。 この位でいいですか? 」


「ありがとう」




……マズイ!



マズイマズイマズイ、マズイぞ!


奴らに完全に読まれている。


俺はまだ死にたくない。


だがまずは、これで食糧と馬が揃った。



……おれ達は敵に、完全に囲まれていると言っていいだろう。

ただの魔物が弓を使える筈がない。


アレはゴブリンの仕業だ。しかも傷跡から見るに、ダイヤウルフもいるのだろう。

数は分からないが……



どんな手を使ってでも……




生き残ってやる!







応援よろしくです!

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