ケビンと、初めての救出(5)
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「くっ、やりやがったな。 おい! 犬ころ、こっちだ!」
ケビンは走りながら、剣を片手に横へ振りかぶる。身体の後ろで構えられた剣は大きく、バスターソードと言われる代物だ。若い時は数々の大物を仕留めた業物だが、最近では成りを潜めていた。
……理由は分かっている。
ダイヤウルフとは相性も悪いだろう。
「だがな! 」
ダイヤウルフは屍となった兵士を吐き捨て、ステップを踏みながらケビンに迫る。
「……っせい! 」
ケビンのバスターソードが横凪ぎに繰り出された。
ダイヤウルフはジャンプして難なく回避すると同時に、血に濡れた鋭い牙で上から噛み付こうとする。
だがケビンにはその牙は見えない。
剣を振った勢いを止めずに身体ごと回転し、今は背を向けた状態になっているからだ。
そして獰猛な牙がケビンに届く直前……
全身の回転により、二週目に入ったバスターソードがダイヤウルフに炸裂した。
ズバァァァァ!
ダイヤウルフの巨大な胴体が真っ二つに割れ、吹っ飛ぶ。
「ハァ……ハァ。 ざまぁ見やがれ! ……おっと、さっさと逃げるか 」
久しぶりの勝利の高揚感に興奮しつつ、ケビンは街へ馬を走らせた。
ーーーー
パオロ様を連れて来るのか!?
あのパベルとか言う奴、まんまとカールの挑発に乗ったな。
ボクも負けてられない……!?
カールが後手で、ハンドサインを出している。〈雄たけび〉を使うつもりか?
……よし。ここはまず、ボクが注意を引かなきゃ。
何だ!? 騎士だけが戻って来た。
パオロ様は?
……あの、脇に抱えた箱は何だ!?
「おい、パオロに会わせてくれるんじゃないのか!? 」
カールが怪訝な声を出している。
「う…… あ…… パオ……ロ 」
オリビア様!? ……いったい?
「ああ、今会わせてやるとも!」
パベルとか言う男が騎士の持っている箱に手を出すと、中から大きなビンを取り出した。
……ドクン!
……何だアレは?
「噂通り、なかなか強情な男でね。面倒だが王都の研究所に持って帰って直接頭に聞こうと思っていたんだ。」
……ドクン!
ビンの中に何か……
「クク……心配しなくても大丈夫だ。コレは保存液に入っているから腐りはしない。首から下は捨ててしまったがな!」
……パオロ
……様……の
あた……ま?
ビンに満たされた液体の中、頭部だけになったパオロは苦しみの表情をしている。
ドクン!
ドクン! ドクン! ドクン!
ふぅ…… ふぅ……
どうして、
この人達は、
ボクの大切な人達を……
いつも、
「いつまでぇぇえ!! 」
「エドガー!? 」
エドガーの身体がスキル発動によって発光する。それは長い付き合いのオリビアでさえも見た事の無い強い光だった。
エドガーが発動したスキルは〈全身身体 最強化〉。
〈全身身体 向上〉の最上位レベルスキルである。しかし制御しきれないのか片ひざを床に着けて、うつ向いてしまった。
そしてスキルは、もちろん狙って発動した訳では無い。
だが過去にエドガー……いや、エミーであった時に不完全ながら極限状態を切っ掛けに発動した事があった。
「なんだ!? 」
パベルが驚くと同時に強い魔力の光を警戒し、騎士の二人が前に出る。
『キエェェ!!』
その動きに釣られる様に、カールがスキル〈雄たけび〉を発動!
騎士達は突然の硬直に襲われ、身体の動きが止まった。カールは〈全身身体 向上〉を続けて発動し、二人の騎士の顔目掛けて2連突きを叩き込む。
スキルによって狙いを補正されたカールの突きは、寸分たがわぬ正確さで騎士達の着用しているミスリルヘルムから覗く無防備な目を、脳ごと貫いた。
「ラァ! 」
糸が切れた様に力無くしゃがみこむ騎士達の間に割って入り、続けてパベルの心臓に素早く打ち込む!
ギィィン!!
だがカール渾身の突きは、パベルの前に描かれた丸い魔法陣に、その勢いを完全に止められていた。
「くぉっ!? 障壁って奴か! 」
「こぞぉぉお!! 」
メキメキ!
硬直が解けたパベルは怒りの形相で、右足による蹴りをカールのわき腹にめり込ませた。カールは反動で部屋の壁に激突。
「終わりだ! 」
パベルが叫ぶと自らの腰に差していた剣がひとりでに抜け、フワフワとパベルの手に収まった。そしてその刃先はカールに向いている。
「そうは、させないよ。 ……ボクが相手だ 」
「む? フフ……アッハッハ! 傑作だ。 何か面白いスキルを発動しているようだが、この魔剣フラガラッハの前では無意味だ。 何故ならこの剣はミスリルの鎧を難なく貫く事ができ、さらに傷を負えば絶対に治癒は出来ないと言われているからな! 」
もはやお互い伝説の力とも言えるエドガーの最上位スキルと、パベルの魔剣が、突然に激突の時を迎える……




