初めての救出(4) とケビン。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくです。
なるほど……あの魔法のバッグが目的か。
しかし死刑確定で楽に殺してやるって……完全になめてるな。
「おい、ヒゲ! 耳あんのか? パオロは何処だって聞いてんだよ!」
ピクピクッ!
ボスらしき男の頬が引つりだした。
クク……変な顔になってきたな。
「面白い事を言う…… 小僧! 私は幻想騎士団の副団長、パベルだ。お前を処刑する前に、会わせてやろうじゃないかパオロに。 ……おい! 」
「ハッ!」
ヒゲの傍にいた、騎士が奥の部屋に向かう。
へっ! 安い挑発に乗りやがって。
プライド高いし嫌な奴だぜ。
だが、パオロの姿が見えればこっちのモンだ。スキル全開でカタをつけてやる。
ーーーー
ガヤの街から森の方向、その距離約5キロ。
街から偵察の為に出たベテラン冒険者一人を含む3名の兵士が丘の上にある岩陰に隠れ、周辺を偵察していた。
(まったくこんな時に、あの本国の兵は何をやっているんだ?助けに来たんじゃないのか⁉ )
パオロに兵士の訓練の為に雇われた10人の冒険者は、ガヤの街を出発出来ずにいた。
彼等は全員が引退間近の寄せ集め集団ではある。だが、その経験は豊富でミズリの冒険者ギルドで古くからの顔見知りであるBクラスの彼等は、久々に楽な仕事だとパオロの依頼を相談して受けた。
そして彼等の、一時的なまとめ役となっているのがケビン(46)である。なぜ彼がこの役を引き受けたか……それはただ彼が一番若かく、単に押し付けられただけである。
「ケビンさん……本当に奴ら来ますかね? 」
「さあな……俺達もこんな事は初めてだからな 」
あの飛空挺が来てからと言うもの、依頼人のパオロには全く取り次いでもらえない。そのくせ本国のアルティーナ兵にガヤの街から出るなと言われ、報酬を受け取る事もできないでいた所に討伐失敗の報だ。
もはや住民に協力し、情報を集めるくらいしか彼等に選択肢は無かった。
!?
丘の上の岩陰から覗く、眼下の景色に目を疑った。
夜の中、月の明かりに照らされて広大な地面が蠢いている。
遠目ではまだゴブリンと判断出来ないが、この期に及んではもはや間違いないだろう。
(なんだ……この数は!? 数千はくだらない…… )
その光景を一緒に見ていた兵士達も絶句している。
ダメだ……。 ゴブリンがいくら弱くとも、あの数は相手に出来ない。
「おい、とにかく街へ戻るぞ……!? 」
(ダイヤウルフ!? )
ここから200メートル程先の岩場にいるのがケビンに見えた。
(1匹だけだが、はぐれか? まだこっちに気が付いてない。早く向こうに行け! )
「ケビンさん。どうしたんですか? 」
「バカ、しゃがめ!」
慌てて身を隠し、息を殺す。
(気付かれたか!? )
……物音は聞こえない。
(何とかやり過ごしたか……)
だが、その時……風向きが変わった事をケビンは肌で感じる。
「ワオォォン!」
「気付かれた! ダイヤウルフだ、逃げろ! 」
ケビンは腰から剣を抜き、二人の兵士は馬を繋いだ場所まで逃げる。べつにケビンは自分が犠牲になろうとは思っていない。歳は取ったがBクラスの自分であれば充分勝算があると踏んでいる。
二人の兵士を先に逃がしたのは、いらない犠牲を減らし、もしもの時に街への報告を確実にする為だ。まさに経験豊富な冒険者らしい素早い判断である。
ケビンは岩陰からダイヤウルフを探す。
(いない、どこに!? )
……!?
ダイヤウルフはケビンの遥か頭上を飛び越え、逃げる兵士一人に覆い被さる。
「ギャ! 」
慌ててケビンが後を追うも、振り返ったダイヤウルフの口には血まみれの兵士の半身が……
人形の様に、プランと喰わえられていた。




