初めての救出。(3)
「やっと暗闇に目が慣れてきた」
「シャリー、気をつけろよ」
エドガーを先頭に、カールとシャリーは地下通路を進む。何の明かりも無い地下通路は大人二人が、やっとすれ違いできる程の広さしかなく、カールはシャリーの手をしっかりと握りながら進んでいた。
マッドは屋敷の周辺で騒ぎを起こす為に、別行動となっている。
「エドガー、この先はどうなってるんだ?」
「この先は行き止まりになっていて、ハシゴがある。それを登ると屋敷の中にある、一階の調理場に繋がっている。パオロ様達がどこに捕まっているかは分からない」
「屋敷には、奴らは何人くらいいるんだ?」
「ハッキリとは分からないけど……20人は居ると思う。まともに戦えば勝ち目は無いよ。」
「ああ……俺の〈雄叫び〉が何回できるか、そして通用するかだな……」
くそ! こんな事なら何回も使って検証しときゃ良かった……
なんせ作戦と言っても俺のスキル、〈雄叫び〉頼みだ。しょうがないよな……
はたして、Aクラスには通用しないのか、それとも耐性があると通用しないのか、ぶっつけで勝負するしかない。
〈幻想騎士団〉は間違いなくAクラス以上だろう。頼むから〈耐性〉がない奴らに通用するスキルであってほしい。
む、行き止まりか……
エドガーが無言でハシゴを指差す。もうしゃべるなって事か。
エドガーはハシゴを登り物音を確認した後、天井の壁を慎重に押した。
ズズ!
天井の隠し扉がゆっくりと開いていく。
エドガーは、わずかにできた扉の隙間から周囲を覗く。現在、調理場は真っ暗で誰も使っていないようだ。人の気配も感じられなかった。
エドガーに続いてカールとシャリーも慎重に調理場へと侵入する。ここで物音を出すわけにいかない。
……って、なんでシャリーがついて来てんだ⁉
(おい、戻れ! あぶねぇだろ! )
慌ててシャリーに身ぶり手振りで戻るように催促する。
当初の計画では、地下通路に隠れて待ってもらうハズだったが、今は俺を睨み付けたまま首を左右に振っているだけだ。
まったく。心配なのは分かるが……
俺はエドガーと目配せし、調理場にあるテーブルの下にシャリーをなんとか追いやり、隠れさせた。
ふう……頼むから見つからないでいてくれ。
エドガーは、すでに調理場にあるドアに耳を当て、しばらく様子を伺っていたが何も聞こえないのか、俺を見て頷いた。
(いいか、シャリー! ここに居ろよ!)
もう一度シャリーにゼスチャーをして伝えると、「コクコク!」と頷いている。本当に分かっているのかイマイチ不安だ。
エドガーが静かにドアを開き廊下に出る。魔道具の照明によって照らされた廊下は、照明の数が少ないのか薄暗く、近くにあるドアの無い広間の方から明るい光が射し込んでいた。
む、話し声が聴こえる……
「鬱陶しい住民だな……」
「まったくだ、ゴブリンごときにビビりやがって。なんなら今すぐ殺してやりてぇぜ」
屋敷の外が騒がしい。マッドが上手くやってるようだ。しかし、ここからでは広間の中までは伺えない。
「しかし、いつまで見張ってればいいんだ? この女。」
「さぁ……」
会話からして見張りは2人か……女と言うのはオリビアさんの事か?
「こんだけ殴られてんだ。そのうち死ぬぞ……」
「……だな 」
なに⁉ コイツら……!
(俺は左を、エドガーは右側の奴を殺れ! )
エドガーに分かる様にハンドサインを出し、タイミングを計る。
お互い武器に手を掛けた。
サン、 ニー、
イチ!
一気に広間へ飛び出す。
やはり2人…… 驚いた見張りの男達が、慌てて剣を取ろうするがもう遅い。
「シッ!」
俺の刀による〈突き〉が目標の喉に突き刺さる。首を抑え僅かに苦しんだ後、男は死んだ。
不意討ちとは言え、幻想騎士団ってこんなもんか?
エドガーもあっさり終わらした様だ。
「オリビアさん! 」
やはりここに捕まっていたのは、オリビアさんだ。
「うう……」
オリビアさんはうっすらと目を開け、何か話そうとしているがよく聞き取れない。
「ポーションを! 」
他に誰もいないのを確認しつつ、エドガーが処置を始める。
酷い……身体には至るところに殴られてできたアザがあり、顔も少し腫れていた。足首からは出血している。健を切られたのか⁉
くそ! ゆるさねぇ……
「あぅ…… ハァ、ハァ…… だ、ダメよ! 早く逃げて…… 」
「オリビアさん、しっかり! パオロはどこに⁉ 」
「あぁ…… パオロ…… 」
どうしたんだ⁉ 何があったって言うんだ?
……パチ、パチ、パチ!
なんだ?
しまった、罠か⁉
その男はわざとらしい拍手をしながら、2人の騎士と供に広間の陰から姿を現した。
赤いマントをひるがえしながら、笑みを浮かべる表情からは余裕を感じさせる。
「いやぁ~、素晴らしい! 必ずや誰か助けに来ると思っていたが、思ったより早くて良かった! 」
く、3人か……
赤マントに白いフルプレート、コイツらが幻想騎士団だな。まん中の奴は身なりが良く顔も出している、おそらくボスか……
「おい。ヒゲおやじ! パオロはどこだ? 」
……ピクッ
「おい貴様ら…… アルティーナ兵を殺したな。 全員反逆罪で死刑は確定した……
だがチャンスをやろう。 パオロのマジックバッグは何処だ? 素直に教えれば、楽に殺してやるぞ 」




