初めての救出。(2)
最近、面白い作品を見つけて読んでばかりでした。
また、ボチボチ頑張ります!
「!?」
全員に緊張が走る。
マッドは二人に待つ様に、手でゼスチャーした後で一人小屋に近づいて行く。その右手は腰に差したダガーを握っていた。カールも不測の事態に備えて、刀に手を掛けた。
(こちらに気が付いているのか? 気配の殺し方が上手い。……だが、相手が悪かったな)
マッドは小屋の裏に潜む何者かに気づかれぬ様、ダガーを抜く。かつて、暗殺の仕事をしていただけに自信はあった。小屋の壁づたいに進みながら、左手に握った小石を弾く準備をする。
次の角を曲がった先に〈奴〉はいる。
ピン!
小屋の屋根を越える様に空中に弾かれた小石は、落下による音を15メートル程先でわずかにさせた。
「!? 」
小屋の裏に潜む何者かが一瞬反応するが思うツボだ。その隙を狙ってすでにマッドはダガーを突き出している。
ギィィン!
何者かの横腹目掛けたダガーは、相手の剣の腹によって防がれていた。
「む……エドガーか?」
両手で剣を支えたまま、エドガーは笑顔で答えた。
「よかった! マッドさん、帰ってたのですね。 ……パオロ様とオリビア様が幻想騎士団に捕まってます! ボクだけ逃がしてくれて……二人を助けに…… 」
「分かっている。 落ち着いて状況を説明しろ。こちらも話す事がある…… 」
お互いに情報を交換した二人。だが、エドガーの顔は青ざめるばかりだ。
「そんな…… みんな死んだなんて…… 」
「いいか、この際ゴブリンの襲撃を利用するしか、あのお二方を助ける方法はない」
いつの間にか二人の話しを聞いていたカールが、マッドの肩を掴む。
「ちょっと待ってくれ! 街のみんなはどうなるんだ? ゴブリンとは戦わないのか⁉ 」
「カール…… ハッキリと言っておく。 ゴブリンに襲撃されれば街の全滅は避けられない。 奴らはダイヤウルフを味方に付けている。新種のゴブリンも他にいるんだ。 残された守備隊だけでは歯が立たない。
アルティーナの幻想騎士団は住民を見捨てるだろう。 パオロ様とオリビア様をなんとしても救わねば……今は言えんが更なる悲劇が世界を包むぞ」
「そんな…… 」
カールは遺跡を偵察した時の事を思い出す。何も出来ずに見捨ててしまったアンナという名前の女性を。
勇敢に立ち向かったラウルを。
命を散らしながら逃がしてくれたビルを。
……みんな、何のために戦って死んでいったのか……
全部無駄だったのか?
ジルー……
「マッド。 パオロは助ける。 だが、その後シャリーを連れて逃げてくれないか? 俺はガヤに残る…… 」
「カール! なんで⁉ そんなのイヤ!」
「シャリー…… ごめん。 俺はどうしても残って皆と戦いたいんだ。 無理だと分かっていても…… もう逃げたくない」
カールに抱き締められたシャリーは、抱き返す事も出来ずに空を眺め涙を流す。
「そんなの…… イヤ…… 」
「シャリー、最後まで聞いてくれ。 俺は必ず生きて帰る」
「……約束よ」
「ああ。 ……約束だ」
ーーーー
救出の為の作戦を話し合ったマッドは、ひとまず街の中心地に戻っていた。
「アルティーナの飛空挺に乗れ! もうすぐ出発するぞ! 」
「飛空挺で逃げろ! まだ間に合う! 」
マッドの役目は〈陽動〉だ。他の三人には騒ぎを起こすとしか説明していない。もちろんこんな方法で、住民を利用するのはひどい事だと分かっている。
だが、マッドはこれが一番効果的であると割り切っていた。
「そうだ! あの空飛ぶ船に! 」
「早くしろ! そこをどけ! 」
すぐに騒ぎは大きくなり、群集は飛空挺の下にある屋敷へと先を争う。警備していたアルティーナ兵は殺到する住民を止めるのに必死だ。その様子を確認したマッドはほくそ笑み、その場を去った。




