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初めての戦争。(5)


「そ……んな…… 」




ラウル……

何で……


死んだのか?




何故ラウルは死んでしまったのか。



驚きから……疑問。




わき水の様に湧いて来る怒り……




そう……これは、殺意の衝動。




「……殺す!! 」



「お、おいカール! 」


カールはビンに残った僅かなポーションを口に含み、〈全身身体向上〉(オールマイティー)を発動させる。身体が僅かに発光した後、ビルを残し静かに走り出す。周辺の兵士達はまだ、呆然としたままだ。


激しい憎しみに満ちたカールの目には、最早巨大なゴブリンしか映っていない。だが本能的に視界の隅を走り、武器を持っていないゴブリンの向かって右側から素早く近付いて行く。


黒く塗りつぶされたカールの心に思考は無い。



……ただひとつ…… 殺意だけが、本能的に身体を動かしていた。



巨大ゴブリンはちょうどその頃、後ろに目をやり遺跡の入口から顔を出す仲間達に出てくる様、合図を出していた。

……しかしゴブリン達は何やら指を指し騒ぎ始める。


その様子を不審に感じた巨大ゴブリンが、再度振り返った時……



『キエェェェェェェ‼』



……⁉


カールのスキル〈雄叫び〉が、巨大ゴブリンの鼓膜を貫通する。

……と、それと同時に、左腕を切り飛ばした!



ブシャァァ!


驚愕の表情に変わる巨大ゴブリン。


激しく飛び出すゴブリンの血を浴びながら、カールが反す刀で胴を目掛けた時だった。



『バァンン!! 』


フルスイングされたゴブリンのハンマー!


その後には何も無く……

森の近くまで飛ばされ転がるカールの姿があった。



「カ、カール!」


ビルは全力で走り出す。

(カール!カール! 死ぬんじゃないぞ! )


ピクリとも動かないカールのもとに、ようやくたどり着いたビルは、手に持ったポーションをカールの全身に振り掛ける。

最早ゴブリンと、どちらの血か分からないくらい血まみれになった姿に涙がこぼれるが、必死に声を掛けた。



「カール! 」

「おい! カール! 」

「返事しろ! 」

「生きてんだろ⁉」


「カーーーール!! ……⁉ 」




「くそ……眠らせろ……よ……ビル…… 」


「カール! これを飲め、ポーションだ! 」


ビルは無理やり残りのポーションを飲ませ、再び意識を失ったカールを背負って急ぎ、歩き出した。


その頃巨大ゴブリンの方は、何事もなかったかの様に落ちた左腕を拾い、無理やり繋げようと奇妙な行動を取っていた。


連続する驚きの信じられない光景に、約200人余りの兵士は物音を立てる事も出来ず、グチョグチョと気持ち悪い音を立て、腕をくっ付けては離し、繋ぎ合わせ様とするゴブリンを固唾を飲んで凝視ししていたが……驚愕の光景はついに頂点へと達した。



確かに切り落とされた筈の腕が……なんと動き始めたのだ!



「あ、ああ……腕が! 」 「……なんでだ! 」


一人の兵士の言葉が伝染するよりも早く……



恐怖は一気に兵士達を支配する。


「わああああ!」 「にげ……逃げろ!」



武器を投げ捨て

荷物を捨て


カールとラウルの奮闘も忘れ去ったかの様に慌て、逃げ出す兵士達。

帰るべき方向も、あやふやなままに先を競って走り出す。



だが簡単に逃げられるほど、



……今回の相手は甘くなかった。



『グオォォォォォォ‼ 』



突如森全体にまで響き渡る様な〈咆哮〉が、巨大ゴブリンから発せられた!


逃げ出していた兵士達は、まるでドミノ倒しが如く地面に次々と倒れる。

その表情は苦痛に歪み、耳を塞ぎながら泡を吹いて失神する者達が続出した。



ある兵士は倒れ苦しみながらも、剣を握り何とか遺跡方向に目をやる。



「ひい! 」


そこには、狂喜乱舞しながら遺跡からゴブリン達が溢れ出し、次々に無抵抗な仲間の兵士を刺し殺していく……地獄が始まっていた。


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