初めての戦争。(4)
「ズドォォン!」
突然の大きな爆発音が遺跡周辺に響き渡り、兵士達は唖然と遺跡正面を凝視する。
「な、なんだ⁉ 」「グリフォスのメンバーが巻き込まれた! 」
遺跡正面の爆発と、視界を遮る瓦礫に巻き上がる砂埃。討伐は終わったものだと思っていた兵士達は、正確な状況を判断する事が出来ず、爆発に巻き込まれた者への救助を最優先に動き出す。
ただ一人、討伐隊長のラウルは、魔法のメイスを硬く握り締め、不安と警戒心に心を奪われていた。
(……まずい。 今の爆発がゴブリン達によるものだとすれば……)
ラウルは思考を巡らす。
フェルナンドを含むグリフォスのメンバーは、遺跡の入口近くに居た。生死までは分からないが、あの爆発では戦える状態であるとは到底、期待出来ないだろう。カールは無傷だが最初の作戦で、疲労しているのはあきらかだ。
「ビル。 わしが死んだら……カールを連れて街へ退却しろ。」
そう言ってラウルは遺跡に向かって走り出した。
やがて遺跡周辺に煙っていた濃厚な砂埃が落ち着き始め、ポッカリと空いた遺跡の入口に……見たこともない巨大な緑の人影が、その姿を現す!
「総員、戦闘準備! ゴブリン供を駆逐せよ! 」
ラウルはその得体の知れない巨大なゴブリンを目の前に、驚きながらもとっさに
声を張り上げる。その高さは4メートルを越え、全身を覆う筋肉は無駄が無く、むしろ惚れ惚れしてしまいそうだ。
反対に醜悪の顔と凶悪な表情を見せるゴブリンに、ラウルは睨まれただけで呼吸が荒くなるのが分かった。
また、右手には淡く光る巨大なハンマーが握られており、爆発の原因を容易に連想させ、本能的に勝ち目がない事を判断してしまう。
(魔法の武器…… )
それでも ……それでも、ここで奴を打ち倒す事ができたなら……
(ああ…… シャリー…… )
ゴブリンの動きに呼応するかの様に、ラウルはメイスを構え狙いを付けた。
ーー
「ラウルのオッサン!」
俺は止めるべく声を上げたが、ラウルが振り返る事はなかった……
勝手な事言いやがって!
くっ!やはり身体がだるい。確かポーションが腰のポーチに……
「ビル! ラウルを下がらせてくれ! 」
くそ! ビンにヒビが入って中身が……
「おい、ビル! 一体何を見て……⁉ 」
ヨロヨロと立ち上がりながら、俺が見た光景はポッカリと空いた遺跡の入口近くで、巨大なゴブリンがラウルと対峙しているところだった。
(あ……)
巨大なゴブリンは、まるでゴルファーの様にハンマーを振りかぶりだす。対してラウルも、魔法のメイスを構えた。
「だ、ダメだ! ……ラウルゥ!」
カールの叫び虚しく、両者の魔法武器〈ハンマー〉と〈メイス〉が交差する。
ブォン!
互いの武器は空を切り、両者は完全に無傷だ。
勝負は次に持ち越されたかに見えた……が、
ゴブリンはラウルに興味を無くしたかの様に、ハンマーを肩に担いだ。
(……⁉ )
(首が⁉ ……ラウルの首がない⁉ )
やや前傾姿勢をとっていた、ラウルの首は無く……代わりに血が噴水の如く流れ始める。
「……クク。 ……ウマ……ク、イッタ! 」
静まり帰った周辺の中、ゴブリンの声が……言葉が聴こえた。




