初めての戦争。(3)
お待たせしました!
え?待ってない?(笑)
ボボボッ!
赤い火の粉を撒き散らして、火の玉が迫って来る。
俺は陽動の為、近付いていた壁を蹴り、逆方向へ回避する。
ドワァ!
ファイヤーボールが壁に炸裂するも、その熱量から逃げる様に更に加速し、前進を続け、〈刀〉を抜く。
〈ホブ〉が横並びに3!
その後ろに〈メイジ〉とザコ集団……
すでにゴブリン達との距離は近い。目の前のホブは、何かの武器を振りかぶってさえいる。
『キエェェ!』
俺は迷わず、スキル〈雄叫び〉を発する。ゴブリン達はその瞬間、一匹残らず〈硬直〉を引き起こした。
ズッ、ズッ、ズッ!
壁を蹴って飛び、ホブの肩を足場にしながら歩く様に、ホブ達の頭を刀で刺していく。
最後に、驚いた様な顔をしている〈メイジ〉を刺しながら着地し、ザコ達に向かってもう一度〈雄叫び〉を使用した。
「カール! 戻って下さい! 」
フェルナンドの声が聞こえる。
俺は目の前で突っ立った、ゴブリンの首を2匹まとめて切り飛ばし、遺跡入口まで戻った。
「フェルナンド!」
「お陰で魔道具の設置は終わりました。みんなも、〈硬直〉は解けた様です……」
フェルナンドは呆れた様な笑顔を見せながらも、大きく頷いた。
「カール、いい判断でした。それでは皆さん、今の内に出ますよ!」
外に出ると、既に遺跡の周辺は討伐隊が制圧している様だ。後方で待機していた本隊のラウルとビルの姿が見え、俺の名前を叫んでいる。
「カール!」
「無事か⁉」
俺は軽く手を振り応えてから、遺跡の入口を再度睨んだ。
すでに足の早いゴブリン達が入口から出始めているが、フェルナンドは落ち着いた様子で呪文を唱え始めている。
『我が契約せりし精霊よ。力を行使せよ』
『起動』
詠唱の終了と供に、遺跡の入口で大爆発が起こる。辺りは轟音と砂煙による現象で兵士の五感の一部を遮断しながらも、不安と期待の入り交じった感情を一瞬で広げた。
やがて砂煙が晴れると同時に、兵士達は作戦の終了を予感し、各々腕を高く突き上げる。
「「ワァァァ~!」」
歓声に包まれた遺跡の入口は崩落を起こしゴブリン達を巻き込んで、完全にその役目を果たす事は無くなった。
「ふぅ……やりましたね」
フェルナンド達は爆破の成功を確認しつつ、互いに労をねぎらっている。遺跡の入口は大小の瓦礫に覆われ、ゴブリンの気配も感じる事は出来ない。
……俺達は間違いなく勝ったんだ。
ラウルは他に遺跡からの出入口がないか、兵士に調べるよう指示を出し始めた。
「フェルナンド殿、グリフォスの皆さん、あなた方の助け無くしてはこの討伐はあり得なかったでしょう。改めて礼を述べたい、感謝致しております」
「ラウル殿。街を救ったのは貴方の迅速な判断によるものからです。グリフォスはその手伝いをしたに過ぎません。まず、称賛されるべきはラウル殿でしょう。……私はこれから、あの入口を土魔法で更に補強しますので……失礼」
……フフ。ラウルのオッサン、真っ赤になってるわ。
俺は一連の様子を眺めながら地面に腰を落とす。今回はスキル〈全身身体向上〉を使った為に少し反動がきていた。全身の筋肉が震え、体がだるい。
あ~! だりぃ!
もうヤル気出ねぇ……
パオロのオッサンはスキルもある程度、鍛えられるとか言ってたけど……
このだるさは、嫌になるぜ。
今日は俺頑張ったし……もう、休んでていいよな。
あ~……シャリーに会いたい。
俺は遂に寝転がった。
血生臭かった周囲の匂いも気にならない。今だけは草の匂いに包まれている。そして何処と無く部活が終わった時の様な充足感を、身体のだるさと供に感じていた。
「土魔法は終わりました。後はーー」
「これで奴らも餓死するかーー」
眠い……
「ここに一旦基地をーー」
グゥ……
「おい。カール……しょうがない奴だな。 ラウル隊長、どうします? 」
「かまわん、ビル。 ……寝かせてやれ。 街への報告は?」
「今、出る様です。 」
鳥のさえずりが聴こえそうな森の中……
静寂を揺るがす爆音が……
遺跡入口付近から聴こえた事しか
俺には何が起きたか分からなかった。




