初めての戦争。(2)
……ヒュヒュヒュン!
数十本にわたる矢が、やや放物線を描きながらゴブリン達に殺到する。だが俺達は、命中したのかを確かめる事もせず、遺跡に向かって全力で走り出した。
「ギャ!」
「……グァ!」
気持ち悪い悲鳴があちこちで聞こえるが、注意すべきは矢の当たっていないゴブリンだ。俺は目線を素早く動かし、こちらに向かって来そうな奴を探した。
俺達のフォーメーションは先頭を〈剣士〉のトールとネルソン。真ん中のフェルナンドを右の俺と、左のマッドが挟み、残りの兵士が後ろを付いてくる形だ。
……先頭を行くトールがゴブリンを斬り捨て、マッドがナイフを投擲しているのが感覚的に分かる。
……こっちには動けるゴブリンがいないのか?
残り100メートル……⁉
右前方の石作り柱からこちらを覗く、ゴブリンの顔と弓矢が見えた。
(来る! )
ビュン!
放たれた矢はフェルナンドに向けて、一直線に飛んで来る。ゴブリンの使う武器には毒が付いている事で有名だ。当てさせる訳にいかない!
俺は長く掴み直した槍を、矢の中央に当て弾き返す。
(オリャ!)
続けて矢をつがえるゴブリンに槍を投げ、見事腹に突き刺さった。
(あと50!)
「「グギャ! ガァ! 」」
……まずい!
いつの間に助けを呼ばれたのか、遺跡の入り口奥から大量のゴブリンが出て来るのが見えた。
「スクロール!」
(フェルナンド⁉ )
その声で弾かれた様に、トールとネルソンが左右に割れ、フェルナンドは腰から魔法のスクロールを取り出し、素早く真横に広げた。
『三十光矢解放!』
その瞬間、スクロールに描かれた魔方陣が光り、何本もの光の矢がゴブリン達を目掛け、猛烈な勢いで連続発射されていく。
もはや断末魔を上げる暇もなく、ゴブリン達は次々と光の矢に射ぬかれていった。
(すげえ!)
やがて誰も立つ事もない遺跡の入口に、ゴブリン供の死体を踏み越え、遂に俺達はたどり着いた。
「「うおお~!」」
後方で待機している本隊からも歓声が上がったが、俺達は壁際で作業に入ったフェルナンドの左右を、兵士達が持つ大盾で囲む様にし、続けて辺りを警戒する。
遺跡の通路は、壁に等間隔で松明が設置されているが、奧は暗くてよく見えない。 ……しかし重量のある足音が次第に近付いて来るのが分かった。
「奥から来るぞ! ……ホブゴブリンだ!」
全員の視線が通路の奥へ集まった時……通路奥から、真っ赤に燃える大きな炎の玉が、大盾を前で構えた兵士に直撃した。
「ドンッ!」 「ぐああ……! 」
「ファイヤーボール⁉ 」
着弾後の爆散で飛び散った炎の余波は、予想を超える熱量の波となって全員を襲う。直撃を受けた兵士は、衝撃によってひしゃげた盾を手放し、顔を抑え転がる様に苦しんでいた。
「なんだこの威力は⁉ 」 「ポーションをよこせ!」
「早く盾を!」 「シャーマン? メイジか⁉ 」
一気に混乱状態に陥った仲間達をよそに、暗がりの通路の奥で、先程と同じ赤い炎の玉が……2つ並んでいる様子が俺には見えた。
……やべえ!
俺の身体はすでに動いていた。
〈全身身体能力向上!〉
落ちていた仲間の槍を拾い、飛ぶように駆け、槍を全力で投げる!
「っしゃああ!」
「……グギャ! 」
汚ならしい悲鳴と供に赤い炎が1つ消えた。
しかし、もうひとつの炎が、今度は俺を目掛けて発射された……。




