初めての戦争。
〈AM4:30〉
「……い」
「おい……カール」
う…… そうか、あのまま眠っちまったか……。
いつの間にか、掛けられていた毛布を引き剥がし、当たりを見渡す。まだ暗い周辺の様子に、今が夜なのか朝なのか検討もつかずに軽く俺は混乱する。
「カール、朝だ。支度しろ……」
「わ、わかったよ、ビル。 ありがとう」
周りを見渡せば、みんなあまり匂いの出ない携帯食とお湯をすすっている。俺もどうやって沸かしたのか分からないお湯とパンをもらい朝飯にありつく。
「ビル……」
「ああ……飯を食ったら、いよいよだ。腕が鳴るぜ」
ビルは俺が兵士の訓練を始めた頃から、新人の教育係だった30過ぎのオッサンだ。ジルーが死んだ時は俺と一緒に泣いてくれた、面倒見のいい奴だ。
「今日の作戦ではビルはどこら辺にいるんだ?」
「ん? ……ああ、お前さんの後方でラウル隊長と待機してるよ」
昨日フェルナンドに聞いた作戦で俺の任務は遺跡中央の入り口に、ゴブリンを排除しつつ、魔道具を仕掛けるメンバーのサポートだ。基本フェルナンドにくっついて護衛すればいいらしいが、もしもの時はフェルナンドの合図でスキル〈雄叫び〉をする事になっている。
俺のスキルはパオロの調べによって2つ判明しており、〈雄叫び〉は声の聞こえる範囲の生物に〈硬直〉を引き起こさせる事が分かった。検証ではより近い対象に効果が高く見られたが、Aクラスのフェルナンドだけには効果は無かった。
その理由についてまではよく分からない。
もうひとつのスキルは弱い効果だが〈全身身体能力向上〉だ。通常、身体強化系のスキルや魔法は、体の1部分などだけに効果がある。
2ヵ所なら2つの魔法、2つのスキルが必要なのだが……こう言った〈レアスキル〉は誰にも話してはいけないとパオロのオッサンが言ってたな……
「じゃあ何かあった時は頼んだぜ…… 」
ラウルとビルがいる中央の部隊は、精鋭が集められた本隊だ。
遺跡入口の爆破にもしも失敗した場合、この本隊でもって遺跡内部に進入、ゴブリンをちから押しで討伐する事になっている。数は100、残りの100が包囲を縮めて本隊をサポートする。
まさに二重、三重の作戦なのだが……最初の爆破に失敗すれば、ただの殴り合いの戦争に近い……犠牲も大きくなるだろう。
俺は気合いを入れ直し、ゴブリンの殲滅を誓った。
〈AM5:00〉
ついに俺達は出発した。前を歩く兵士のオッサン、後ろを付いてくるニーチャンの兵士にしても、今は討伐の成功を信じて、みんな生きて帰るつもりなんだ……
俺も生きて帰りたい……
シャリー……
ジルー。
俺に力を貸してくれ……
〈AM6:30〉
「右回り包囲良し!」
「左回り、包囲完了しました!」
中央本隊のラウルとフェルナンドに包囲完了の報告が入る。
……いよいよだ。
くそ! 胸の高鳴りが止まらない。
ラウルが静かに右手を上げると遺跡爆破を担当する【グリフォス】メンバーと、俺を含む6人の兵士が前に出る。周辺の兵士は弓で、狙いをつけ始めた。
ゴクリ……
……そして、その合図の手は降ろされる!
新規読者獲得の為、タイトルの変更を考えています。
その時はご迷惑をお掛けします。




