定番ゴブリンも甘くない。(その2)
前に出た5人によって放たれた光の矢が、緩やかなかな弧を描き、正面から馬車の僅か上を越えたかと思うと、爆発音と共にゴブリンの悲鳴と、絶叫が草原一帯に響き出した。
次々に放たれる光の矢は、ゴブリンライダーを貫くか、爆発の余波によって転倒させている。やがてゴブリンライダー達は、負傷した仲間を見捨て逃げ出していた。
「副団長、お疲れさん!」
ジョーが合流した5騎の騎馬の内、ひときわ体格の大きい男に声をかける。
「うるせぇ!……まだ終わっちゃいねぇ。上手くいくといいが……」
副団長と呼ばれた男、ロイは、ジョーと軽口を叩きながらも馬車にしがみついている老人から、なぜか目を離せないでいたが、やがてミズリへと馬を歩かせ始めた。
ゴブリンは、知能や戦闘力など能力的に低い生物である。
人間にとっては、さして脅威にならない存在だ。
だが繁殖力は、すさまじくその数の暴力で村を襲う事は、珍しくない話しだ。
そんなゴブリンが、魔獣を飼い慣らし、魔法を使い、常に集団で行動し1年前、遂に街を1つ蹂躙した。
もちろん、すぐにミズリから千人規模の討伐隊が編成されたが、到着した討伐隊を迎えたのは、廃墟と化したガヤの街だけだった。
討伐隊は、ゴブリンの群れを追撃すべく周辺をしばらく探索するも発見に至らず、帰還する。
その後もゴブリン達は、活発な行動を取り続けているが、軍隊の様に統率された動きによってミズリは、もとより周辺の村は、完全に後手に回っていた。
湾岸都市ミズリは、ゴブリン達を捜索するため、森や山岳に詳しい冒険者を長期に渡って探索に出すも発見出来ず、遂には、大金をはたいて王都のSクラス冒険者クラン【陽炎】に依頼を出すに至った。
その【陽炎】によるゴブリン追跡が、新たなる戦いのプロローグとなる。